巨大IT規制法とは? -公正な取引の実現に向けて

巨大IT規制法

ECサイトやアプリストアなどが普及したことで、消費者の生活は非常に便利なものとなりました。しかし一方で、不利な条件で取引をするなど、消費者や利用事業者が損失をこうむる場面も少なくありません。

そこで新たに、利用ユーザーが不利益を被らないための法律として「巨大IT規制法」が2021年2月より施行されています。

今回の記事では、巨大IT規制法の趣旨や対象事業者、規制内容などをわかりやすく解説します。

巨大IT規制法の概要

はじめに、巨大IT規制法がどのような法律であるかをご紹介します。

巨大IT規制法の趣旨

巨大IT規制法(特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律)とは、事業規模が巨大なIT企業に対して、いくつかの規制を設ける法律です。

近年一部のIT市場では、取引の場面で取引拒絶や規約変更の理由が示されなかったり、一方的に不利な条件を押し付けられたりするなど、取引の公正性や透明性が低いことが問題となっていました。

そこで、IT取引の公正性・透明性を高める目的で、国内で大規模に事業を展開するIT企業に対して、規制を設けることになったのです。

巨大IT規制法と諸外国の法律との比較

EUやアメリカのIT規制に関する法律と比べると、日本の巨大IT規制法は各事業者の自主性を重んじる内容となっています。

たとえばEUでは、2020年施行の規則で巨大IT企業が開示すべき情報の項目(サイトでの表示順位の決定方法など)を決定しました。また、20年12月に公表した新たな法案では、あらかじめ他社から得たデータを自社サービスに利用することを禁じるなど、より強力に規制する方針が示されています。

またアメリカでは、下院が2020年10月に作成した報告書でGAFAの事業分割に言及したり、当局が巨大IT企業を提訴するなど、規制の動きが加速しています。

一方で日本では、「過度な規制は民間企業の技術革新を阻害する」という理由から、高額な制裁金を科す仕組みや、あらかじめ禁止項目を設定する仕組みなどの導入が見送られた経緯があります。

今回の巨大IT規制法も、あくまで企業側の自主的な取り組みを重視する内容であり、慎重すぎるという批判もあります。

巨大IT規制法の指定事業者

次に、巨大IT規制法の規制対象となる条件、および2021年4月に規制対象として指定された企業を紹介します。

特定デジタルプラットフォーム提供者の条件

巨大IT規制法では、「特定デジタルプラットフォーム提供者」に指定された事業者を規制対象とします。具体的には、下記の条件に該当した場合に特定デジタルプラットフォーム提供者となります。

  • 物販総合オンラインモール:国内売上額が3,000億円以上
  • アプリストア:国内売上額が2,000億円以上

2021年4月に特定デジタルプラットフォーム提供者に指定された企業

2021年4月1日、経済産業省は上記の要件を満たす特定デジタルプラットフォーム提供者として以下の5社を指定しました。指定された事業者は、法律に規定された項目を守る必要があります。

物販総合オンラインモールの運営事業者

  • アマゾンジャパン合同会社(Amazon.co.jp)
  • 楽天グループ株式会社(楽天市場)
  • ヤフー株式会社(Yahoo!ショッピング)

アプリストアの運営事業者

  • Apple Inc.およびiTunes株式会社(App Store )
  • Google LLC(Google Playストア)

巨大IT規制法の規制内容

巨大IT規制法では、前述した指定事業者に対して下記の規制を設けます。

  • 取引条件などの情報開示の義務化
  • 規約変更前の通知の義務化
  • 苦情対応などの体制整備
  • 自己評価を付した報告書を経済産業省に提出することの義務化

また、違反した場合には改善命令を受けたり、罰金の支払い義務が発生する可能性もあります。

消費者の視点で見ると、Googleやアップル、楽天などのサービスを利用する際に、不利な条件で取引を行うリスクが減ることになります。

巨大IT規制法の実効的な運用を図るための取り組み

経済産業省は、巨大IT規制法の実行的な運用を図る目的で、デジタルプラットフォーム取引相談窓口を設置しました。

この窓口は、デジタルプラットフォームの利用事業者(出店事業者、デベロッパーなど)が対象となります。具体的な支援内容は以下のとおりです。

  • デジタルプラットフォーム利用者からの相談対応・アドバイス
  • 利用事業者に向けた説明会や法律相談会の開催
  • 弁護士の情報提供や費用の補助
  • デジタルプラットフォームの提供者との相互理解の促進支援
  • 相談者が持つ共通課題の抽出および解決策の検討

要するに、ECサイトなどの利用時に生じた不安や課題の解決に向けて支援してくれる機関です。

巨大IT規制法とは?:まとめ

巨大IT規制法は、アプリストアやECサイトなどを利用する消費者・事業者の保護につながる法律です。批判や課題はあるものの、以前よりも快適にデジタルプラットフォームを使えるようになるでしょう。

参考URL
「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」の規制対象となる事業者を指定しました 経済産業省
巨大IT規制法、売上高3000億円以上を重点監視 2月施行 日本経済新聞

関連記事

ページ上部へ戻る