テレワーク終了は違法!?強制出社は拒否できる?

9月30日に緊急事態宣言が解除されたとはいえ、まだまだ「with コロナ」の時代。

しかし11月8日、経団連は出勤者数7割削減について見直すべきだとする提言を発表しました。
経団連による提言についてはこちら(https://www.keidanren.or.jp/speech/kaiken/2021/1108.html)をご覧ください。

これにより、テレワークが終了し、出社を余儀なくされている方も増えてきたのではないでしょうか。

そこで今回は、テレワークが終了することは違法とならないか、強制出社は拒否できるのかについて解説していきます。

テレワークの意義・効果

 総務省によればテレワークの意義・効果には以下のようなものが存在します

少子高齢化対策の推進

  • 人口構造の急激な変化の中で、個々人の働く意欲に応え、その能力を遺憾なく発揮し活躍できる環境の実現に寄与
  • 女性・高齢者・障がい者等の就業機会の拡大
  • 「出産・育児・介護」と「仕事」の二者選択を迫る状況を緩和
  • 労働力人口の減少のカバーに寄与

ワーク・ライフ・バランスの実現

  • 家族と過ごす時間、自己啓発などの時間増加
  • 家族が安心して子どもを育てられる環境の実現

地域活性化の推進

  • UJIターン・二地域居住や地域での企業等を通じた地域活性化

環境負荷軽減

  • 交通代替によるCO2の削減等、地球温暖化防止への寄与

有能・多様な人材の確保生産性の向上

  • 柔軟な働き方の実現により、有能・多様な人材の確保と流出防止、能力の活用が可能に

営業効率の向上・顧客満足度の向上

  • 顧客訪問回数や顧客滞在時間の増加
  • 迅速、機敏な顧客対応の実現

コスト削減

  • スペースや紙などオフィスコストの削減と通勤・移動時間や交通費の削減等

非常災害時の事業継続

  • オフィスの分散化による、災害時等の迅速な対応
  • 新型インフルエンザ等への対応

出典:総務省ホームページ(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/18028_01.html)

「原則出社」に戻ってしまう背景

前述したように、様々な効果があるテレワークですが、テレワークに特化した労働法の規定というものは、現在存在していません。

そのため、緊急事態宣言解除とともにテレワーク終了となった会社も多くあるようです。

その背景としては、

・情報漏洩のリスクが高まる

・テレワーク社員の安全管理(労災等の認定)が困難

・部下の業務の様子が見えにくいため、マネジメントしづらく不便に感じる

・密に連絡を取り合うことが困難となるため、意思疎通に齟齬が生じたり、行き違いが発生しやすくなる

・そもそも対面のコミュニケーションが欠かせない業務でテレワークに馴染まない

といったことが挙げられます。

テレワーク終了は違法?

では、会社側がテレワークを終了することは違法なのでしょうか。

違法になるか否かは、労働契約を締結した時点でテレワークを予定していたか否かで異なります。

そこで、以下では2パターンに分けて解説していきます。

労働契約締結時にはテレワークが予定されていなかった場合

前述した通り、現在、テレワークに特化した労働法の規定は存在していません。

そのため、労働契約締結後にテレワークが導入された場合、①就業規則の変更がなされた、あるいは②業務命令で命じられた方が多いと思われます。

①就業規則の変更がなされてテレワークが導入された場合

この場合、その規則を会社側が廃止することも原則として可能です。ただし、廃止する合理的な理由がない場合には、労働者側から権利濫用を主張することができます。

⇒就業規則廃止が権利濫用にあたる場合、テレワーク終了は違法となります。

②業務命令等でテレワークを命じた場合

この場合、テレワーク終了も業務命令等でなされることとなります。

しかし、労働場所が自宅から会社施設となることは、労働者側から見れば、労働条件を不利益に変更することといえる可能性があります。

そして会社は、業務命令によって一方的に労働条件を不利益に変更することができません。

不利益変更に当たるか否かは、『労働者にどれだけの不利益が生じるか』と『変更する業務上の必要性があり、内容が相当か』を相対的に判断して決まります。

⇒この判断の結果、不利益変更に当たる場合、テレワーク終了は違法となります。

労働契約締結時にテレワークが予定されていた場合

労働契約締結時に就業場所を自宅とされていた場合、テレワークを終了するためには労働契約を変更することとなるため、原則として労働者の同意が必要となります。

さらに労働契約を変更する場合には、①変更内容が合理的であること、②労働者に周知させることの2つが必要となります。

よって、労働者の同意なく労働契約書の就業場所を自宅から会社施設に変更した場合や、就業場所を会社施設に変更することが合理的といえない場合には、テレワーク終了は違法となります。

以上から、テレワーク終了が違法であるといえるためには、テレワークを廃止するという変更内容が合理的であるといえるか、不利益変更にあたらないかがポイントとなりそうです。

そうは言っても、権利濫用の判断や、合理性の判断、不利益変更にあたるかの判断はなかなか自分ではできないもの。そんな時には、労働問題に強い弁護士に相談してみるのも有効な手段の一つです。

強制出社を拒むことはできる?

では、コロナに感染する危険を理由に、強制出社を拒むことはできるのでしょうか。

緊急事態宣言中とそれ以外の2つに分けてそれぞれ判例を紹介していきます。

緊急事態宣言中の強制出社拒否の違法性

似たような事例として、以下のような判例があります。

【NHK(フランス語担当者)事件(東京地方裁判所平成27年11月16日判決)】

〈事案の概要〉

これは、NHKと契約を締結していたラジオ放送のフランス語担当者が、東日本大震災により発生した原発事故やフランス大使館による避難勧告を受け、業務を行わなかったことを理由にNHKから不当に契約を解除されたと主張した事件です。

〈裁判所の判断〉

福島第一原発事故発生後の状況を考慮すれば、「受託していた業務より生命・身体の安全等を優先して国外へ避難したとしても,そのこと自体は強く責められるものではな」いとして、契約の解除は無効であると判断されました。

この判例から、緊急事態宣言中の強制出社は拒否することが可能であるといえるでしょう。

緊急事態宣言外の強制出社拒否について

状況は大きく異なりますが、参考になりそうな判例として以下のものがあります。

【名古屋セクハラ事件(名古屋地方裁判所平成16年4月27日判決)】

〈事案の概要〉

これは、ある従業員が上司・同僚からセクハラを受けたとして会社に苦情申立て等をしたところ、会社が当該従業員に対し配転命令をしたものの当該従業員がこれに応じず欠勤したため、無断欠勤を理由に解雇された事件です。

〈裁判所の判断〉

裁判所は、「従業員において,労働の提供を行なわないことは,労働契約上の基本的な債務の不履行」であり、「使用者が,当該セクハラ被害に相応する回復措置を取っていると評価できる場合には,特段の事情がない限り,労働者は,同被害を理由に,性的危険性の存在を主張することができないと解するのが相当である。」として、解雇は有効なものと判断しました。

この判例から、緊急事態宣言後は、会社側がコロナ感染対策に必要な配慮をした場合には、出社拒否を理由に解雇されたとしても、同解雇は有効なものと判断される可能性が高いといえそうです。

まずは、会社側がコロナ感染対策をしっかり行ったうえで出社を要求しているのか、確認してみましょう。

まとめ

今回は、テレワーク終了の違法性、出社拒否の可否について判例を交えながら解説してきました。

緊急事態宣言が明けたとはいえ、まだまだコロナ禍の時代。

テレワーク終了は違法では?と思われた方は、まず会社がコロナ感染対策をしっかりしているか、テレワーク終了が合理的といえるかを考えてみましょう。

悩んだら、一人で抱え込まず労働問題に強い弁護士に相談してみてくださいね。

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