M&Aにおける契約書の種類や注意点を解説

M&Aには様々な手続が存在し、多くの契約を締結する必要があります。そして、各契約につき契約書を作成することになります。

そのため、M&Aにおいてどのような契約が締結されるのか、どのように契約書を作成するのかについてあらかじめ知ることが重要です。

この記事では、M&Aを行うに当たり必要な契約の種類と内容、注意点などを解説します。

M&Aとは

M&A(Mergers and Acquisitions)とは、会社の合併や買収を意味し、その例として株式交換や吸収合併、新設分割などが挙げられます。

近年M&Aの件数は増加しており、2021年は4280件(前年比14.7%増)と過去最多になりました。

M&Aのおおまかな流れは、①M&A先の選定、②秘密保持契約の締結、③基本合意の締結、④デューデリジェンス、⑤クロージングとなります。

この記事では紹介するにとどめますが、デューデリジェンスは買収対象企業を分析し、あらかじめリスクや適正な価値を明らかにする重要な手続です。詳細な解説についてはこちらの記事を参照してください。

関連記事:『知財デューデリジェンスとは?』

M&Aにおいて必要な契約

M&Aの各段階において異なる契約が締結されます。

契約書の存在は契約成立の要件ではありませんが、契約締結の証拠として作成することが一般的です。

アドバイザリー契約書(提携仲介契約)

M&A相手の選定、デューデリジェンスなど様々な手続に関してサポートを受けるべく、当事会社とM&A仲介業者の間でアドバイザリー契約を締結します。

M&Aの手続は専門的知識や経験が必要であり、多くの作業が要されます。そのため、当事会社のみでM&Aを成功させることは難しく、豊富な専門的知識や経験を有するM&A仲介業者のサポートを受けることが一般的です。

アドバイザリー契約においては、業務の範囲や着手金、成功報酬、秘密保持などを定め、M&A仲介に関するトラブルを未然に防ぐ必要があります。

また、アドバイザリー契約には、専任条項・排他的条項(契約したM&A仲介業者が独占してM&Aの手続を行う規定)により一定の期間内他のM&A仲介業者に相談できない場合が多く、注意すべき点といえます。

秘密保持契約書

機密保持契約(Non-Disclosure Agreement)とは、自社が保有する機密情報を他者に開示することが有益であるとき、相手方にこの情報の機密保持を義務づける契約です。

M&Aにおいては、当事会社と仲介業者の間、また当事会社の間でそれぞれ締結されます。

秘密情報の範囲や、秘密保持義務違反の場合の損害賠償規定など、情報漏洩を抑止する具体的な規定を設けることが望ましいといわれます。

秘密保持契約の詳しい解説や作成方法についてはこちらの記事を参照してください。

参考記事:『機密保持契約書(NDA)とは?作り方のポイント』

基本合意契約書

交渉が進み、買い手・売り手が大筋で合意した時点で、基本合意契約を締結します。

基本合意契約は、M&Aの概要や譲渡価格、今後のスケジュール、デューデリジェンス、役員の処遇、独占交渉権の付与などを内容とします。

特に独占交渉権は、一定期間売り手が他の買い手と交渉することを禁ずるもので、売り手にとって注意すべき点です。独占交渉権の期間が長いと、M&Aの成立が長引いた場合に他の買い手を検討することができないためです。

基本合意契約は原則として法的拘束力を有しません。

参考記事:『合意書とは?合意書の書き方やテンプレートを紹介』

最終契約書

M&A成立後、当事会社間で最終契約書(DA=Definitive Agreement)を作成します。実際には、M&Aの方法に応じて「株式譲渡契約書」や「吸収合併契約書」を作成します。

最終契約書には、それまでの交渉により確定したすべての合意事項に加えて、クロージング(最終的な権利移転)前後の制約事項、表明保証、損害賠償などに関する規定が含まれます。

表明保証とは、売り手が会社の財務・法務などに関する事項が正確であることを保証するもので、紛争の原因になる場合が多いため注意する必要があります。

基本合意書と異なり、最終契約書は法的拘束力を有します。

M&Aは様々な法律の規制を受ける

後継者問題の解決や経営基盤の強化など様々な利点があるM&Aは、その実現までに多くの法律に注意する必要があります。一つでも法律の規定に違反すれば、合併の無効や損害賠償請求、罰則などのおそれがあるためです。

M&Aを行う際にいかなる法律が問題となるかといった概要の解説は、こちらの記事を参照してください。

参考記事:『M&Aで注意が必要な法律を解説』

まとめ

・M&Aを行うには様々な契約書を作成する必要があり、事前にどのような契約書を作成すべきかを理解することが重要です。

・アドバイザリー契約には専任条項・排他的条項により一定の期間内他のM&A仲介業者に相談できない場合が多く、注意する必要があります。

・基本合意書においては、特に独占交渉権の付与につき慎重に判断する必要があります。

・最終契約書は多くの事項を含み複雑になり、さらに法的拘束力を有するため、正確に作成する必要があります。

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