M&Aで注意が必要な法律を解説

後継者問題の解決や経営基盤の強化など様々な利点があるM&Aは、その実現までに多くの法律に注意する必要があります。一つでも法律の規定に違反すれば、合併の無効や損害賠償請求、罰則などのおそれがあるためです。

今回は、M&Aを行う際にいかなる法律が問題となるか、その概要を解説します。

M&Aとは?

M&A(Mergers and Acquisitions)とは、会社の合併や買収を意味し、その例として株式交換や吸収合併、新設分割などが挙げられます。

近年M&Aの件数は増加しており、2021年は4280件(前年比14.7%増)と過去最多になりました。

問題となる法律

以下では、M&Aに際して問題となる法律と、どのような規定が設けられているかを簡単に紹介します。

<会社法>
会社法は、会社の組織変更(合併、会社分割、株式交換など)に関する手続を定めています。

例えば会社法の規定によると、組織変更計画の作成、吸収合併契約の事前開示書類の備置、株主総会の承認などが必要となります。

会社法の重要な規定に違反して合併を行った場合、株主総会決議取消しの訴えや合併無効の訴えを提起されるおそれがあります。

<金融商品取引法>
金融商品取引法は、株式譲渡における市場買付けや公開買付け(TOB)についての規制を定めています。

例えば、多数の者から株式を買付けて買収を行う場合、株式の所有割合が5%を超えるときは公開買付けが義務付けられます。

公開買付けについては、投資者への情報開示や公平な売却機会の確保などの規制に従わなければなりません。

公開買付規制に違反した場合は、懲役や罰金といった刑事罰が科されます。

<独占禁止法>
競争を制限するおそれのある行為を禁止し、消費者の利益を保護する独占禁止法は、影響力の大きい合併や株式交換などの企業結合について、規制を設けています。

例えば、国内売上高の合計額が200億円を超える会社と、50億を超える会社が合併するときは、両方の会社が公正取引委員会に届け出なければなりません。

企業結合規制に違反した場合は、罰金が科されます。

<労働契約承継法>
労働契約承継法は、会社分割により労働者が不利益を受けないように、会社分割の際に従わなければならなない手続を規定しています。

例えば、会社分割に先立ち労働者との協議や労働者へに通知を義務付け、会社分割前と同様の雇用契約の条件の維持し、労働者の保護を図ります。

労働契約承継法に違反した場合は、労働契約の承継が無効となるおそれがあります。

<税法>
法人によるM&Aにおいて、法人税や消費税、法人住民税など様々な税金が課せられます。個人事業主の場合は、所得税や個人事業税なども課せられます。

例えば法人税法は、法人税の課税対象や計算方法などについて規制しています。

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まとめ

・M&Aには様々な手続が必要で、多くの法律の定めに従わなければなりません。

・法律違反があった場合は、刑事罰やM&Aが無効になるおそれがあります。

・そのため、M&Aを行う際は、あらかじめどのような法律が問題となるかを確認しておく必要があります。

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