弁護士さがしは「見つからない」から「選べない」時代へ

弁護士さがしは「見つからない」から「選べない」時代へ

わたしたちは、常に法的なトラブルを抱える可能性を抱えています。たとえば、相手方の過失によって交通事故に巻き込まれる、取引先が突如倒産してしまったようなケースでは、自分の落ち度とは無関係に、法的トラブルに突如巻き込まれてしまいます。

そんなときには、弁護士の力を借りるのが最もよい対応となりますが、いざ「弁護士をさがす」となると、「どうしてよいかわからない」という人も多いのではないでしょうか。

以前は、消費者が弁護士にアクセスする際には、「弁護士がどこにいるかわからない」ということが大きな問題となっていましたが、この20年ほどで環境は大きく変化しました。

そこで、今回は、「見つからない時代」から「選べない」時代に変わった背景などについて解説していきたいと思います。

弁護士はこの20年で急増

※日本弁護士連合会『弁護士白書2018年度版』45頁より引用

上は、わが国における弁護士数の推移を示したグラフですが、この15年で弁護士数は2倍、30年前との比較では3倍以上の人数となっています。弁護士の数が増えた一番の要因は、司法制度改革(法科大学院制度の創設)によって司法試験の合格者数が増えたことにあります。司法制度の合格者数は、1990年代までは年間500人程度とされていましたが、「弁護士が少なすぎる」という問題などに対処するため、政策的に合格者数を増加させる(当初の目標は年間合格者数2,000人)ことになり、弁護士数が一気に増えたというわけです。

この20年のわが国の人口がおよそ1億2000万人で推移しているとすれば、人口約1万人に1人しかいなかった弁護士が、いまでは人口3000人あたりに1人の存在となったということになります。

なお、日弁連ウェブサイトによれば、2019年12月現在の弁護士数は、41,020人とのことです。

弁護士の地域偏在問題の解消

とはいえ、人口3,000人に1人というのは、全国に弁護士が均等に存在した場合の数値なので、現実感がありませんし、弁護士は全国に均等にちらばっているわけでもありません。上で紹介した2018年ベースの数値でいえば、弁護士の最も多い東京(18,879人※)では、人口740人に1人の弁護士がいる計算になるのに対し、(地方裁判所の管轄区域に合わせて4つに弁護士会が別れている北海道を除いて)最も弁護士の少ない鳥取県(65人※)では、人口11,000人に1人の弁護士しかいないことになります。

※弁護士数は弁護士白書2018年度版の数値に基づく

「東京に弁護士が集まる」という傾向は、弁護士が増えるにつれさらに顕著になったといえるのですが、「地方の弁護士が少ない」、「弁護士のいない地域がある」という問題は、弁護士それ自体の母数が増えたことで、かなり解消されてきています。地方でも、この20年の間にほとんどの地域において弁護士数それ自体は1.5倍~2倍以上増えているからです。

※日本弁護士連合会ウェブサイトより引用

上は、いわゆる「弁護士ゼロワン地域」の数の推移を示したものです。「ゼロワン地域」というのは、地方裁判所の支部管轄を単位として、その地域に弁護士が0人もしくは1人しかいない地域のことです。「無医村」の弁護士版と考えるとイメージしやすいでしょう。

ちなみに、弁護士偏在を考えるときに「ゼロ地域」ではなく「ゼロワン地域」が基準となるのは、紛争の当事者双方が共に同じ地域の弁護士に依頼できるということを重要視しているからです(弁護士は双方代理が禁止されています)。

インターネット普及・弁護士広告解禁に伴うアクセス環境の改善

弁護士へのアクセスの問題は、「数が増えるだけ」で解消されるわけではありません。数が増えてもアクセスする方法が消費者に正しく伝達されなければ意味がないからです。しかし、この点については、インターネットの普及がほとんどの問題を解決してくれました。

いまでは検索エンジンで「弁護士」と入力するだけで、検索者の住まいから近い弁護士事務所の情報を入手できるようになりました。

また、日本弁護士連合会(すべての弁護士が加入している強制会)や、各都道府県の単位弁護士会のウェブサイトでも、すべての登録弁護士の基本情報(氏名・事務所所在地など)を検索できるようになっています。

【参照】弁護士をさがす(日本弁護士連合会ウェブサイト)

弁護士広告の解禁

弁護士へのアクセス環境の改善という意味では、2000年から弁護士の業務広告が解禁となったことも大きな役割を果たしています。

いまでは、テレビCMだけでなく、ウェブ、雑誌・新聞、さらには電車などの窓ガラスに至るまであらゆる媒体で弁護士事務所の広告を目にすることが当たり前になってきました。

とはいえ、実際には、弁護士のすべてが積極的に広告・宣伝を行っているわけではありません。わが国の弁護士事務所は、所属弁護士が1~5人程度のそれほど規模の大きくない事務所がほとんどですから、多額の広告費用を継続的に負担することは現実的ではありませんし、広告によって一気に多数の依頼人が押しかけてきても対応できなくなる可能性が高いからです。依頼人がたくさんいるからといって「1件1件の対応を雑にする」ということは弁護士の職務倫理にも反してしまいます。

また、広告によって「自由に自分の事務所の良さをアピールする」ことも業界内の内部ルールによって厳しく規制されています。たとえば、某大手牛丼チェーンのように「はやくて、やすくて、うまい」といった顧客の関心を引くようなフレーズを用いることも禁止されています。

不正確な情報の氾濫

インターネットが普及したことで、私たちはさまざまな情報にたやすくアクセスできるようになりました。しかし、ウェブ上には、正しい情報だけでなく、不正確な情報もあふれています。この点は、「弁護士」や「法」に関する情報についても同様です。Googleなどの検索エンジンは、それぞれの記事の「正確さ」それ自体を判定する仕組みを備えてないからです。

ウェブ上の記事の中には、明らかに非専門家が不正確な知識に基づいて提供された情報や、客観的な検証のない一方的な情報も少なくありません。いわわるHow to記事であれば、検索ランキングで上位に表示される記事でも、「内容の怪しい記事」を見かけることもあります。

また、「〇〇に強い弁護士」といった内容について書かれた記事でも、客観的な基準に基づいて弁護士の力量を調査しているものは皆無です。そもそも、日弁連が「事務所の実績を過度にアピールする広告」を禁止しているのも、「弁護士の力量は客観的に推し量ることが難しい」ということを前提にしています。

つまり、私たちは「よい弁護士を正しく選べる」とは言い切れない無数の情報にさらされている(情報提供者の主観・独断に基づく情報を信じるリスクを背負わされている)といえるわけです。

弁護士さがしは「見つからない」から「選べない」時代へ:まとめ

弁護士内の議論としては賛否両論があるようですが、筆者自身としては、「弁護士の数が増えた」「弁護士のバックボーンが豊かになった(今までは弁護士になることの難しかった人が弁護士になれるようになった)」ことは、社会全体にとってもよいことだと思っています。社会が高度・複雑化していくなかでは、弁護士にも「多様な役割」が求められることは必然であり、「絶対数の確保」、「バックボーンの多様化」は、その役割を果たしていくための必須条件といえるからです。

とはいえ、多様化が進むことは、「選択が難しくなる」というジレンマを引き起こしてしまいます。このジレンマを解消する役割を担うのが「情報」や「アクセスのためのインフラ」であるべきなのですが、そのいずれもが十分に整備されていないのが現状です。

「簡単に」「早く」よい弁護士を見つけたいという気持ちは、消費者としてとても素朴なニーズだといえますが、利便性ばかりに気を取られるとミスマッチな選択を強いられてしまう可能性が高いということに常に注意する必要があります。 

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