パワハラ防止法とは? 2020年6月に大企業2022年に 中小企業に対策を義務づけ

パワーハラスメント

「パワハラ防止法」とは、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(労働施策総合推進法)の改正で追加・更新された第30条の2から7、及びその関連条項を指しています。

その中でも特に重要なのは、企業(事業主)にパワーハラスメント防止措置を義務付けたことです。そこで、「パワハラ防止法」に定めるパワーハラスメントの要件や、企業の各種義務について詳しく説明します。

パワーハラスメントの実態

職場におけるイジメや嫌がらせに関する相談件数は、「解雇」や「労働条件の引き下げ」などの理由を大きく引き離し、この10年間で2倍以上に増加しています。

出典:厚生労働省 「平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況

パワーハラスメントは、被害者の心身の健康を害し、ときには自殺に追いやってしまうこともある行為ですが、教育・指導との線引きが難しく法整備が遅れていました。

企業にとってもパワーハラスメントの発生は、優秀な人材の流出・職場環境の悪化・生産性の低下・企業イメージの悪化などの原因にもなり、経済的損失は非常に大きな影響がありましたので、今回の「パワハラ防止法」によって現状の改善が期待されています。

パワハラ防止法の施行日

「パワハラ防止法」は既に施行されていますが、次の表に該当する中小事業主は2022年4月1日の施行となります。

業   種資本金又は出資総額常時使用の労働者数
小  売  業5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸  売  業1億円以下100人以下
その他の業種3億円以下300人以下

パワーハラスメントの要件

パワハラ防止法で規定する「職場におけるパワーハラスメントの要件」は、次の3要件全てを満たすものをいいます。

  1. 優先的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

優先的な関係を背景とした言動とは

パワハラを受ける者が行為者に対し抵抗・拒絶できない可能性が高い関係を背景に行われる行為を指し、次のものが含まれます。

  • 職務上の地位が上位の者による言動
  • 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者の協力を得なければ業務の円滑な遂行が困難であるもの
  • 同僚又は部下からの集団による行為で、抵抗・拒絶が困難であるもの

業務上必要かつ相当な範囲を超えたものとは

業務上の言動として明らかに必要性がなく、態様などが相当でないものを指し、次のものが含まれます。

  • 業務上明らかに必要性のない言動
  • 業務の目的を大きく逸脱した言動
  • 業務を遂行するための手段として不適当な言動
  • 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動

労働者の就業環境が害されるとは

行為者の言動によって身体的又は精神的に苦痛を与えられ、働く上で見過ごせない程度の支障が生じることを指します。

パワーハラスメントの代表的な類型

「職場におけるパワーハラスメントの代表的な言動」には、次の6つの類型が考えられます。

身体的な攻撃

身体的な攻撃には、暴行や傷害などの身体に危害を加える行為などが含まれます。

典型的な例除外例
1.殴打、足蹴りを行う
2.相手に物を投げつける
1.誤ってぶつかる

精神的な攻撃

相手に苦痛や恐怖を感じさせる、脅迫・名誉毀損・屈辱・ひどい暴言などの攻撃的な言動などを言います。

典型的な例除外例
1.人格を否定するような言動を行う
2.長時間の厳しい叱責を繰り返す
3.他の労働者の面前で大声での威圧的な叱責を繰り返す
4.相手の能力を否定し、罵倒する内容 の電子メール等を相手及び複数の労働者宛てに送信する
1.社会的ルールを欠いた言動があり、 再三注意しても改善しない労働者に一定程度強く注意する
2.会社に対し重大な問題行動を行った労働者に一定程度強く注意する

人間関係からの切り離し

隔離・仲間外し・無視など、組織から切り離された孤立感を強く感じさせる行為などを言います。

典型的な例除外例
1.意に沿わない労働者に対して、仕事を外す、別室に隔離する、自宅研修させる
2.同僚が集団で無視し、職場で孤立させる
1.新規採用の労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施する
2.処分を受けた労働者を通常業務に復帰させるために、一時的に別室で研修を受けさせる

過大な要求

業務とは無関係の不要な仕事を命じたり、実現不可能な仕事を強要したり、仕事を妨害するなどの行為を言います。

典型的な例除外例
1.長期間の肉体的苦痛を伴う過酷な環境下の勤務に直接関係のない作業を命ずる
2.新卒採用者に必要な教育をせず到底対応できないレベルの目標を課し、未達成を厳しく叱責する
3.業務と関係のない私的な雑用の処理 を強制的に行わせる
1.育成のために少し高いレベルの業務を任せる
2.繁忙期に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せる

過小な要求

当人の地位・能力・キャリアに対し非常に程度の低い仕事を指示し、あるいは仕事を与えない行為などを言います。

典型的な例除外例
1.管理職者を退職させるため、誰でもできる業務を行わせる
2.嫌がらせのために仕事を与えない。
能力に応じ、一定程度業務内容や業 務量を軽減する

個への侵害

個人の生活まで立ち入ったり、デリケートな個人情報を暴露したりする行為などを言います。

典型的な例除外例
1.職場外でも継続的に監視をし、又  は、私物の写真撮影をする
2.性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報を、当人の了解を得ず他の労働者に暴露する
1.労働者への配慮を目的に、家族の状況等についてヒアリングする
2.当人の了解を得て、性的指向・性自 認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報を必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝え、配慮を促す

パワーハラスメント防止に向けた企業の義務

「パワハラ防止法」の施行によって、企業(事業主)は職場におけるパワーハラスメントを防止するために次の4つの措置を講じなければなりません。

1.会社の方針等の明確化、及び周知・啓発

事業主はパワーハラスメントに対する方針を明確にし、労働者に周知・啓発するために次の事項を実行しなくてはなりません。

  • 会社の規則・規定に「パワーハラスメントの禁止規定」、及び「違反者に対する懲戒規定」等を盛り込み、これを労働者に周知する
  • パワーハラスメントが起きないように、社内報・パンフレットの配布、研修・講習会のなどを実施する

2.相談や苦情に適切に対応できる体制の整備

事業主は、相談や苦情に対する「相談窓口」を設け、労働者に周知しなければなりません。

また、相談窓口の担当者が適切に対応するために、人事部門との連携を図る仕組みの構築、相談対応マニュアルの作成、相談窓口の担当者の研修制度の導入などが求められています。

3.パワーハラスメント発生時の迅速・適切な対応

事業主は、パワーハラスメントに係る相談の申し出があった場合、次の措置を講じなければなりません。

  • 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認する
  • 事実確認ができた場合には、速やかに被害者に配慮する措置を行う
  • 事実確認ができた場合には、速やかに行為者に対する措置を行う
  • 会社の方針の周知・啓発、及び研修などの再発防止に向けた措置を講ずる

4.1-3の措置と合わせ講ずべき措置

事業主は、1-3の措置と合わせて次の措置を講じなければなりません。

  • 相談者・行為者等のプライバシーを保護する措置を講じ、その旨を周知する
  • 相談者・協力者に対し解雇等の不利益な扱いをしない旨定め、労働者に周知・啓発する

パワハラ防止法のまとめ

今回の法改正で「パワハラ防止法」では罰則規定は設けられませんでしたが、パワーハラスメントは、被害を受けた労働者の心身の健康を害するだけでなく企業にとっても大きなダメージを被る可能性のある行為ですから、企業自らが率先して防止に努めなければなりません。

また、職場におけるハラスメントはパワーハラスメントだけではなく、「セクシャルハラスメント」や「妊娠、出産等に関するハラスメント」などもあるので、総合的に防止対策を講じることが必要です。

※興味がある方は、厚生労働省の「職場におけるハラスメント関係指針」もご参照ください。

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