ChatGPTを裁判で使用、司法試験にも挑戦、法曹界での活用はどうなる?

2023年2月2日、南米コロンビアの裁判官が判決文の作成に当たりChatGPTを利用したことが報じられました。

さらに、アメリカ合衆国においてはChatGPTに米国医師国家試験や司法試験を解かせる実験も行われ、話題となりました。

今回は、世界で注目されるChatGPTと法律の関係について、海外における最新の事例を紹介しつつ、今後の日本での活用拡大について解説します。

ChatGPTとは?

2022年11月にサービスが開始したChatGPTは、オリジナルの文章を生成することができる対話型AIで、サンフランシスコに所在するベンチャー企業OpenAIが開発しました。

OpenAIは、マイクロソフト社から1兆円の投資を受けたことでも話題になりましたが、ChatGPTの話題性も高く、サービス開始からわずか5日で100万人のユーザーを獲得したChatGPTは、その後2か月あまりでユーザー数1億人に到達しました。

ChatGPTの特徴は、ユーザーが入力した質問や指示に対し、人間が作成したような自然な文章で返答することができる点にあります。そのため、まずはGoogleなどに代替する情報検索や相談などにおける利用が多く見られます。

また、ChatGPTは、利用規約の作成、表計算ソフトの関数やプログラム言語の記述、さらに小説や脚本の作成も可能だといわれています。

このように、ChatGPTは様々な場面で活用されはじめており、世界中が注目しているサービスといえます。

関連記事:『ChatGPTは特許出願や特許分析ができるか?対話型AIについて法的観点から考察』

裁判官が判決作成に当たりChatGPTを使用

ChatGPTが司法の領域で活用され話題となった事例が、冒頭で紹介したコロンビアの裁判です。

問題となった裁判は、保険医療サービス企業に対し、自閉症の子を持つ親が治療の自己負担金や手数料などの免除を要請するという内容でした。判決は、「子どもの両親に費用を支払う余裕がないため、子どもの医療費や交通費は全て医療保険で賄われるべきである」として親側の主張を認めるものとなりました。

裁判官は、ChatGPTに「自閉症の患者はセラピーに関する費用を免除されますか?」などの質問を入力し、それを肯定する回答を確認した上で、判決文を作成したといいます。

ChatGPTを利用して判決文を作成したJuan Manuel Padilla裁判官は、AIの使用を認めるコロンビアの2022年法律第2213号に従い、医療費免除についての情報確認のためChatGPTを使用したと発言しているとのことです。

ChatGPTが米国医師国家試験や司法試験を解く

米医療企業の研究チームがChatGPTに米国の医師国家試験を解かせ、結果は正解率52~75%と合格ラインの60%前後に達したことが共同通信で報じられました。

米国で行われたChatGPTに司法試験を解かせる実験では、7科目全体の平均合格率では人間に劣るものの、そのうち2科目の平均で人間を上回るという結果となりました。

このように、ChatGPTはそのデータ量や学習機能を活かして難関試験を解けることがわかり、この精度は今後さらに向上すると考えられます。

日本におけるChatGPTの活用

日本では、ChatGPTを用いた法律相談サービスを2023年春に開始する方針を明らかにした企業が現れています。このサービスを利用すれば、弁護士よりも迅速な回答が期待されるといわれます。

弁護士や弁護士法人以外が報酬目的で法律事務を扱うことは弁護士法72条で禁じられています。そのため、ChatGPTによる回答が法律事務と認定される可能性がある以上、無償で上記サービスを提供するとのことです。

なお、ChatGPTに日本の司法試験の民法択一問題37問を解かせた実験では、正答率が30%となり、足切りラインの40%を下回る結果となりました。

ChatGPTの今後は?

ChatGPTは迅速に自然な文章で質問・指示に回答できる点で優れていますが、まだ正確さの点で課題が残るといわれています。

上記コロンビアの裁判についても、人工知能規制の専門家であるロザリオ大学教授がChatGPTに裁判官と同じ質問をしたところ、判決とは異なる回答が返ってきたと述べています。

今後はChatGPTの精度向上が期待されますが、当面の間は、全面的に法的判断や法律文書の作成を任せることは問題点が多いと考えられます。あくまで作業効率を高めるツールとしてChatGPTを用いた上で、最終的には専門家が入念に確認する必要があるでしょう。 2023年2月現在、ChatGPTは無料トライアルとして利用が可能となっています。しかし、OpenAIのCEOであるSam Altman氏は、ChatGPTをいずれ有料化すると述べており、2月1日には優先的に利用できる月額課金制の有料プランChatGPT Plusが発表されました。

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