テレワークとリモートワーク、そして在宅勤務。何がどう違うの?
- 2020/11/16
- 法令コラム
近年、ブロードバンド通信サービスの普及とスマートフォンやタブレット端末などの情報通信機器の進歩・普及に伴い、働き方にも大きな影響を与えています。
IT業界ではパソコンとインターネット環境があればどこでも仕事ができるため、自宅や移動先で仕事をするスタイルがいち早く取り入れられていましたが、一般の企業の取組はそれほど積極的ではありませんでした。
ところが、今年に入り新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の中で、外出や通勤の自粛を実施した結果、テレビ会議などを活用した新しい働き方が注目を集めています。このような働き方に対しいくつかの呼び方があり、それぞれどのように違うのかよくわからないという方も多いと思います。
そこで今回は、新しい働き方「テレワーク」「リモートワーク」「在宅勤務」の違いについて詳しく解説します。
テレワークとは
テレワーク(Telework)は、Tel(離れて)とWork(仕事)を組み合わせた造語です。
2010年にTelework Enhancement Act(テレワーク推進法)を制定したテレワーク先進国の米国では、テレワークを「指定された勤務地以外の承認された場所から従業員が職務・責任を果たせるようにするための柔軟な勤労形態」と定義。 一方、我が国の総務省と厚労省が中心となって推進しているテレワークは「情報通信技術(ICT)を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と米国の定義に対しICTの活用をより強調したものになっています。
リモートワークとは
リモートワーク(Remotework)は、Remote(遠隔・遠い)とWork(働く)を組み合わせた造語で、遠隔地で働くというニュアンスが強い呼び名です。
基本的にはテレワークと同じと考えて良いのですが、米国では出社が困難な遠隔地に在住する従業員の働き方に対して使用することもあるようです。
優秀な人材の確保が難しいIT分野では、海外や遠隔地のエンジニアと契約し仕事をすることもあって「リモート=遠い」を使う傾向があります。
実際にネット検索をしても「リモートワーク エンジニア」の求人はありますが「テレワーク エンジニア」というのは見かけません。
在宅勤務とは
在宅勤務はテレワークやリモートワークの一つの類型で、出社せずにICT環境がある自宅で働くことを指しています。
出社することが必要ないので、育児や介護の時間が必要な人、通勤が困難な障害のある人には非常に有益な形態です。
結論としてIT分野などでは「リモートワーク」を使用する傾向がありますが基本的には「テレワーク」と同義であり、「在宅勤務」は「テレワーク/リモートワーク」に含まれる勤務形態ですので、次項からは政府が公式に認めた「テレワーク」に統一して説明してゆきます。
また、テレワークは企業に雇用されている従業員による「雇用型テレワーク」と、個人事業主による「自営型テレワーク」に分かれますが、本記事では「雇用型テレワーク」を対象としています。
テレワークのメリット
テレワークには企業サイドと従業員サイド双方に、以下のような多くのメリット*があります。
*厚生労働省の「テレワークモデル実証事業(2015年)」で実施した企業と従業員に対するアンケート調査結果に基づいたものです。
企業サイドのメリット
- 就業場所や勤務時間などの選択が自由になるので、優秀な人材が確保しやすくなる
- 資料の電子化が促進され、業務プロセスも革新される
- 通勤費や事務所経費などの運営コストが削減される
- 災害や感染症拡大などの非常時でも事業を継続でき、復旧も容易となる
- 取引先や従業員との連携が強化されることにより事業競争力が向上する
- 働き方の選択肢が増えることで人材の離職を抑制し、従業員の定着率が向上する
- 従業員の働きやすさ向上という企業姿勢は企業のブランドやイメージを向上させる
従業員サイドのメリット
- 家族と過ごす時間や趣味に使える時間が増え、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)が向上する
- 業務がしやすくなることで集中力が増し生産性が向上する
- 自律的に仕事を進める能力や自己管理能力が向上する
- 以前よりも積極的に職場とコミュニケーションを図り連携が強化される
- 仕事に対する満足度が高くなり、労働意欲も向上する
テレワークに適用される労働基準関係法令
テレワークを行う従業員にも出社する従業員と同様に以下の労働基準関係法令が適用されます。
- 労働基準法/労働時間、年次有給休暇、割増賃金(時間外労働、深夜手当)など
- 労働契約法/労働契約の内容の変更など
- 最低賃金法/最低賃金など
- 労働安全衛生法/健康診断など
- 働者災害補償保険法/労災保険の給付など
ちなみに、自営型テレワークは企業などから委託を受けて成果物の作成又は役務の提供を行うもので、企業などとの雇用関係がないため基本的には労働基準関係法令の適用はありません。
テレワークの形態
テレワークには職種や働く場所の違いなどによって大きく3つの形態に分けることができます。
在宅勤務型
在宅勤務は、ICT環境が整備されている自宅で仕事を行うため、遠隔地に住んでいる人、介護や育児で家を空けられない人、通勤が困難な障害のある人などにとっては非常に有効な勤務形態となります。
導入にあたってのポイント
- セキュリティ対策:本人認証、暗号通信など
- 労務管理:フレックスタイム制、採用労働制、事業場外みなし労働時間制、短時間勤務制度などの導入
- 円滑なコミュニケーション:Web会議システム、チャットなどの利用
サテライトオフィス型
サテライトオフィスは、企業の本社から離れ、より自宅に近い場所に設けられたオフィスで仕事を行う形態です。
地方の企業は都心部に、都市部の企業は郊外にサテライトオフィスを設けることで、従業員は自宅よりもセキュリティや高度なICT環境が整った場所で働くことができるとともに通勤時間を短縮することが可能となります。
導入にあたってのポイント
- コスト管理:開設費、設備費、家賃、運営費、従業員の通勤費など
- セキュリティ対策:本社と同様
- 労務管理:本社と同様
- 円滑なコミュニケーション:本社と間のWeb会議システム、チャットなどの利用
モバイルワーク型
モバイルワークとは、駅・空港・ホテル・喫茶店・各種乗り物などWi-Fi環境が整った施設や携帯用のWi-Fiルーターなどを利用して、移動中や外出先・出張先でも業務を行うもので、日常的に外出や出張の多い営業職などに向いています。
導入にあたってのポイント
- セキュリティ対策:本人認証、暗号通信、端末の紛失・盗難防止など
- 端末デバイス:PC、スマートフォン、タブレット端末
- 労務管理:フレックスタイム制、採用労働制、事業場外みなし労働時間制、短時間
- 勤務制度などの導入
- 円滑なコミュニケーション:Web会議システム、チャットなどの利用
テレワークとリモートワーク、そして在宅勤務。何がどう違うの?:まとめ
テレワーク/リモートワーク/在宅勤務は単なる働き方のバリエーションではなく、導入の仕方によっては企業活動のあり方を進化・発展させる可能性を秘めています。
IT分野の巨大企業GAFAも、2030年までに半数の従業員を永久的にテレワークとする可能性を明らかにしたFacebook社をはじめとして、各社とも当面は出社が必要な従業員以外はテレワークとする方針です。
現在直面しているコロナ禍に加え、デジタル化やグローバル化という大きな潮流の中で、いろいろな課題をクリアし本格的なテレワーク化に成功した企業が勝ち残るのかもしれません。