労働組合の作り方! 何を準備し、どう手続きを踏めばいいのか?

労働組合の作り方

労働組合は、憲法で保障されている基本的人権の一つです。

<憲法第28条で保障している労働三権>

1.労働者が労働組合を結成する権利(団結権)
2.労働者が使用者(会社)と団体交渉する権利(団体交渉権)
3.労働者が要求実現のために団体で行動する権利(団体行動権(争議権)

労使関係においては使用者の力が強く、労働者は使用者が提示する労働条件を受け入れざるを得ません。仮に、個人が使用者に対し長時間労働や賃金の改善を求めても、受け入れられるのは稀なことです。

そこで、労働組合を結成すると、団体として使用者に対し労働条件などの改善要求をこない、時にはストライキを行うことで、個人ではできなかった強い交渉が可能となるのです。

しかし、労働組合の作り方がわからないという方も多いと思いますので、これから詳しく説明して行きます。

労働組合の要件とは

労働組合の設立自体は難しいことではありません。複数の労働者が集まり自主的に結成し、民主的な組合規約を備えていれば、各種の届け出や、所属企業などの承認は必要ありません。

しかし、労働組合法で保護されるには、次の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 労働者が主体となって結成し、労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的としていること
  2. 労働組合の規約が、労働組合法第5条第2項の記載事項を含んでいること

労働組合法第5条第2項については「労働組合規約案の作成」のところで詳しく説明します。

いろいろある労働組合の形態

労働組合はいろいろなタイプがありますが、組合員の種類によって次の4つに分類されます。

労働組合の区分対象組員
企業別同一企業の労働者
産業別企業の枠を超えて同一産業に従事する労働者
職業別熟練した労働者等
合同企業の枠を超え、一定の地域における個人(原則)

労働組合を作るには事前準備が重要

労働組合を作るプロセスは、結成準備会を発足し事前準備を行なった上で結成大会を行いますが、結成大会で審議・決定する内容は事前準備の段階で全て用意しなければなりません。そこで、事前準備の内容を中心に組合の作り方を説明していきます。

<事前準備の内容>

1. 労働組合結成準備会の発足
2. 労働組合の結成趣意書作成
3. 労働者への組合加入の呼びかけ
4. 労働組合規約案、運動方針案、予算案の作成
5. 労働組合の内部機構

1.労働組合結成準備会の発足

労働組合設立の事前準備で最初にやらなければならないのは、「結成準備会」の発足です。結成準備会とは、労働組合の結成を推進するための組織で、この準備会が中心となり様々な準備を行います。

2.労働組合の結成趣意書作成

結成趣意書は必ず作成しなければならないものではありませんが、現状の労働条件などを踏まえ、組合結成の必要性、及び活動目的を労働者全員に伝え組合への参加を促す役割を担っています。

3.労働者への組合加入の呼びかけ

一部の従業員だけで労働組合を作ってしまうと、労働条件の改善案のなどについて労働者全員の意見が反映されず、会社との団体交渉にも影響してきます。

ですから、会社サイドに属する管理職者などは除き、出来る限り多くの労働者に参加してもらうことが重要で、労働組合の成否を決める鍵と言っても良いでしょう。

4.労働組合規約案の作成

組合規約は、多くの労働者からなる組合の運営ルールであり、憲法のような存在です。結成大会において正式決定されますが、他の準備と並行し準備会で組合規約案を作成しておきましょう。

法人登記や不当労働行為の救済申立などの際には、先に説明した「労働組合の要件」を満たさなければなりませんから、組合規約には次に記載する労働組合法第5条第2項を盛りこむ必要があります。

<連合団体ではない単位労働組合の場合の記載事項>

1労働組合の名称
2労働組合の主たる事務所の所在地
3組合員があらゆる問題に参加する権利、及び均等の取り扱いを受ける権利を持つこと
4人種、宗教、性別、門地※、又は身分により、組合員の資格を奪われないこと
5役員は、組合員の直接無記名投票により選出すること
6総会は、少なくとも年1回は開催すること
7会計報告は、①すべての財源と支出内容、②おもな寄付者の氏名、③現在の経理の状況を記載し、組合員が委嘱した職業として会計監査を行う会計監査人によって正確であるとの証明を受け、その証明書とともに、少なくとも毎年1回は組合員に公表すること
8ストライキを行うには、組合員の直接無記名投票か、又は組合員の直接無記名投票によって選挙された代議員の直接無記名投票を行い、過半数の賛成を得ることが必要であること
9規約の改正は、組合員の直接無記名投票を行い、全組合員の過半数の賛成を得ることが必要であること

4.運動方針案の作成

結成大会では単に組合を結成するだけではなく、労働条件の改善などを目的とした組合の運動方針、つまり最初の「使用者への要求案」を用意し承認を得ます。

運動方針案の作成のためには、職場における労働条件についての実態を調査・分析し、問題点を明らかにする必要があります。この資料は「使用者への要求案」の正当性を裏づける重要な資料になります。

4.予算案の作成

収入(組合費、寄付金など)、及び支出(事務費、交通費、通信費、図書購入費、備品費等)を見積った予算案を作成し、結成大会で承認を得ます。

ここで重要なのは組合費をいくらに設定するかです。全員同一額、賃金比例などいろいろな方法が考えられますが、組合員の負担が重くならないように配慮する必要があります。

5.組合の内部機構

労働組合の内部機構は、大きく「議決機関」と「執行機関」に分かれますが、企業の規模、事業形態、事業所の数、そして組合員数などを考慮し、決議機関であれば必要に応じて中間的な決議機関を設け、執行機関であれば支部や分会の設置などを決めて行きます。

労働組合の結成をスムーズにするには

労働組合の結成は労働者だけで進める必要がありますので、使用者の関与や妨害は避けなければなりません。ですから、結成の準備段階から結成大会を経て公知化するまでは使用者に知られないように活動することが必要です。

万が一、組合結成前に使用者に気づかれたときには、次のような対応が考えられます。

  • 使用者と十分話し合い、組合の結成について理解を求める
  • 結成スケジュールなどを再検討する
  • 結成スケジュールなどを再検討する
  • 地域の労働団体、全国組織の主要労働組合等へ相談する

結成大会ですること

労働組合は結成大会によって正式に結成され、終了後から活動が開始されます。

<結成大会の基本的な流れ>

1. 議長などの大会役員の選出
2. 結成までの経過報告
3. 組合規約案、運動方針案、予算案の審議・決定
4. 組合役員選挙
5. 結成宣言

結成大会の開催にあたり、開催時期と開催場所の選定がポイントになります。組合員が参加しやすい時期で、場所は費用負担が軽い公共施設など利用するのが良いでしょう。又、使用者の許可が必要な会社の施設は、避けた方が良いかもしれません。

労働組合は公知化して初めて一人前

労働組合を結成しても、その存在が関係者に知られなければ意味がありませんので、労働組合の誕生を職場全体に通知するとともに、使用者に対し今後は労働条件などの交渉は個人ではなく、労働組合として行う旨を宣言する必要があります。

労働組合法で禁止する不当労働行為

組合活動を行うには、労働組合法で禁止している使用者の行為について知っておく必要がありますので、以下の内容について勉強会などで周知に努めましょう。

  1. 労働組合への加入や正当な労働組合活動などを理由に、解雇、降格、給料の引下げ、嫌がらせ等の不利益取扱いをすること
  2. 団体交渉を正当な理由無く拒否すること
  3. 労働組合の結成や運営に対して支配・介入したり、組合運営の経費について経理上の援助をすること(ただし、労働者が労働時間中に、時間や賃金を失わず使用者と協議・交渉することや、使用者が福利その他の基金に対する寄付をすること、使用者が労働組合に最小限の広さの事務所を供与することは除きます)
  4. 労働者が労働委員会に救済を申し立てたり、労働委員会に関する手続において行った発言や証拠提出を理由に、不利益取扱いをすること

おわりに

労働相談は東京都だけでも、平成18年以降は年間5万件を超えています。しかし、労働組合組織率は低下傾向にあります。個人で悩んでいる問題でも、労働組合があれば深刻化を防いだり、問題を解決したりできるかもしれません。

労働組合の結成を考えている方は、まず同じ考えの仲間を増やすとともに、各都道府県の労政主管部局や、労働組合の連合団体などへ相談しながらすすめると良いでしょう。

参考文献リスト

厚生労働省ホームページ 労働組合/労働委員会
東京都労働相談センターの「組合づくりのハンドブック」

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