レオパレス21の施工不備問題に関する第三者委員会報告書の概要

レオパレス21の施工不備問題

今回は、レオパレス21の施工不備問題を事例に、第三者委員会の活動内容を解説します。

問題の背景

本件は、2018年〜2019年の間に相次いで発覚した、同社の物件について施工に不備が見つかった問題です。具体的には、設計図に記載された断熱材とは異なる素材を用いていた点や、国土交通大臣認定の仕様に適合していない外壁を施工していた点などが問題となっています。

本件における第三者委員会の役割と委員選定のポイント

本件の第三者委員会の役割と委員選定

本件における第三者委員会は、度重なった施工不備の問題について、事実確認と原因究明を行い、関係者の責任を検討するとともに、再発防止策を検討する役割を担いました。

なお本件における第三者委員会は、同社との利害関係がない西村あさひ法律事務所の弁護士が中心となって発足されました。第三者委員会は下記の3名で構成されました。

  • 委員長:伊藤 鉄男 (西村あさひ法律事務所)
  • 委員 :木目田 裕 (西村あさひ法律事務所)
  • 委員 :山本 憲光 (西村あさひ法律事務所)

また調査にあたっては、レオパレス21との利害関係がなく、かつ建築分野に関して専門的な知識を持つ数名の人物からの助言も得ています。

第三者委員会の活動スケジュール

施行不備問題は、2018年4月27日及び同年5月29日及び、2019年2月7日に相次いで発覚しました。

これら一連の施行不備問題の調査を行う目的で、2019年2月27日の取締役会において第三者委員会が設置されました。最終報告書は同年7月31日に提出されたため、第三者委員会の調査期間はおよそ5ヶ月となりました。つまり、問題発覚から最終報告書の提出までの活動スケジュールは、以下のようになります。

【経緯】

  • 2018年4月27日 問題発覚
  • 2018年5月29日 再び問題発覚
  • 2019年2月7日 3度目の問題発覚
  • 2019年2月27日 取締役会にて第三者委員会が発足
  • 2019年7月31日 最終報告書の提出(調査完了)

本件の調査のポイント

本件調査のポイントは、さまざまな検証方法を用いて施工不備問題の概要や原因を精査した点にあります。

通常行われる図面や取締役会議事録などの関係資料はもちろん、施工で実際に用いられた図面についても、専門家へ委託することにより詳細に調査しました。

また施工業者へのヒアリングや社員アンケートなども行う事により、多面的な視点から原因究明にあたりました。

第三者委員会の調査によって何がわかったのか

 第三者委員会の調査により判明した事項

第三者委員会による詳細な調査では、各問題が生じた原因が判明しました。今回はいくつかある問題の中でも、「設計図に記載された断熱材とは異なる素材(発泡パネル)を用いていた問題(界壁発泡ウレタン問題)」と「国土交通大臣認定の仕様に適合していない外壁を施工していた問題(外壁仕様問題)」の発生原因をお伝えします。

第三者委員会によると、商品開発担当部署が物件を開発する段階で、適切な発泡パネルを界壁に使用することが準拠すべき大臣認定や告示の使用に適合しないことを認識していたにもかかわらず、発泡パネルをそのまま使用した点が直接な原因となっています。つまり「違法である」ことを知っておきながら、物件を施工した点が原因というわけです。

当該問題の背景には、商品開発担当部署の中で法令遵守の意識が薄かったことや、役員兼発泡パネルの開発者である深山祐助氏がスケジュールに厳しい人物であり、同氏の指示を実行するためにスケジュールの進行を最優先にした結果、法令遵守の側面が軽視された点がありました。

第三者委員会の調査とその影響で生じた費用

第三者委員会の調査により同社は、「補修工事に要する見積もり費用」及び「付帯費用(調査費も含むと予想される)」として、平成31年3月第三四半期にて特別損失を約430億円計上することになりました。

同社の事例からわかるように、調査費に加えて問題解決に必要な費用も多額にのぼる場合があります。

格付けの評価

レオパレス21の問題を調査した第三者委員会の報告内容について、第三者委員会報告書格付け委員会は、委員構成の独立性や事実認定の正確性などの観点から、同委員会の格付けを評価しました。なお格付けの評価は、A(良い)〜F(悪い)までの5段階で行われます。

同問題に関する第三者委員会の報告内容については、8人の委員が格付けを行いました。8人のうち2名がC評価、他6名はD評価と総じて低い評価結果となりました。

第三者委員会報告書格付け委員会は、総じて低い評価結果となった理由として次の3点を挙げています。

1点目は、第三者委員会の中に建築関係の専門家がいない点です。専門家がメンバーに含まれていないために、建築の施工不備という専門的な問題を正当に調査・評価できているのか不透明となった点が低評価につながりました。

2点目は、原因分析が不足している点です。役員が不正を認定していたかどうかの認定に偏りすぎて、内部統制の不備が生じた原因分析や技術者の倫理面からの原因分析などがほとんど行われていなかった点が低評価の要因となりました。

3点目は、再発防止策の説得力や実効性に疑問が残った点です。本件の第三者委員会は再発防止策として、「経営陣がコンプライアンスファーストの姿勢を社内外に示すこと」や「役職員に対して顧客から感謝される価値を提供することの重要性を自覚させること」などが提言されています。しかし提言には具体性がなく、精神論に過ぎないとの批判もありました。

原因分析や再発防止策への提言については総じて低評価ですが、施工不備問題の事実認定については各委員から高い評価を得ました。施工不備の内容を多面的な調査を行い、詳しく精査した点が高評価につながったと考えられます。

根本的な原因

第三者委員会は、本件が生じた根本的な原因を3つ挙げています。

1つ目の原因は、設計図どおりの施工や法令遵守よりも、経営危機からの脱却や事業の拡大を優先した点です。バブル崩壊後の不動産不況の影響により、経営状況が苦境に立たされていたことが背景にあります。

2つ目の原因は、経営陣の意向を絶対とするワンマン体制に陥っていた点です。同社は創業者である深山氏のリーダーシップやアイデアにより成長したという側面が強いため、社内では経営陣の意向が絶対という風潮が蔓延していました。これにより、周囲の役職員が深山氏に進言しにくい状況に陥っていた点が根本的な要因だと考えられます。

3つ目の原因は、法令遵守の意識やリスク感度、品質問題に対する当事者意識が欠如していた点です。第三者委員会の調査書では、深山氏が法令遵守を軽視するイメージが定着していたことが、従業員が法令を軽視する際の正当化の要因となっていたことが指摘されています。

まとめ

今回は、レオパレス21の施工不備問題を調査した第三者委員会について取り上げました。

第三者委員会の報告書では、本件の根底には「経営陣を絶対とする社風」や「業績の改善や向上を重視する社風」などがあると指摘されています。
問題が生じやすい体質は、社内の人間からは判明しにくい部分です。

第三者委員会には、こうした問題を生み出す体質について、外部の第三者として原因を追究、指摘する役割も求められているのです。

参考文献

・ 第三者委員会報告書格付け委員会 第21回格付け結果を公表しました
http://bit.ly/2lLDKyC

・外部調査委員会による調査状況の最終報告に関するお知らせ
http://www.daisanshaiinkai.com/cms/wp-content/uploads/2019/03/190529_chousa8848.pdf

・外部調査委員会設置のお知らせ
https://www.leopalace21.co.jp/news/2019/0227_2758.html

・特別損失の計上による業績予想の修正及び配当予想の修正に関するお知らせ
https://www.leopalace21.co.jp/ir/news/2019/0207_2744.html

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