ジャパンディスプレイの不正会計問題に関する第三者委員会報告書の概要

ジャパンディスプレイの不正会計問題

今回の記事では、株式会社ジャパンディスプレイの不正会計の問題を事例に、第三者委員会の調査概要や、調査結果に対する格付け委員会の評価に関してご説明します。

本件は、株式会社ジャパンディスプレイにて、複数の不正会計が見つかった問題です。複数の会計不正を経営陣の指示により行った疑いから、多くのマスコミやニュースメディアで取り上げられるほどの問題に発展しました。

本件における第三者委員会の役割と委員選定のポイント

本件の第三者委員会の役割と委員選定

本件の調査を行った第三者委員会は、下記4つの役割を担いました。

  • 本件不正疑義に係る事実関係の調査
  • 本件に類似する問題の有無の調査
  • 不適切な会計による影響額の算定
  • 原因究明および再発防止策の提言

なお本件を調査した第三者委員会は、同社と利害関係を持たない下記3名で構成されました。

  • 委員長:国谷 史朗 (弁護士 弁護士法人大江橋法律事務所)
  • 委員:荒張 健 (公認会計士 EYフォレンジック・アンド・インテグリティ合同会社)
  • 委員:関口 智弘 (弁護士 弁護士法人大江橋法律事務所)

第三者委員会の活動スケジュール

では次に、本件が発覚した経緯から調査が完了するまでの流れを確認してみましょう。

本件の発端となったのは、2019年11月26日に同社の元経理・管理統括部長であったA氏が同社宛に行った通知です。この通知では、過去に経営陣から指示を受けて過年度の決算に関して、不適切な会計処理を行ったことを表すものでした。

そこで同社は、詳しく調査を行う目的で、2019年12月2日に役員と外部の専門家で構成される特別調査委員会を設置しました。その調査の結果、不正会計が行われた疑いが強くなりました。

事態を重くみた同社は、透明性の高い調査により事実を解明するために、2019年12月24日に理解関係のない専門家のみで構成される第三者委員会の設置を取締役会で決定しました。調査はおよそ4ヶ月弱にわたって行われ、2020年4月13日に調査報告書が公表されました。

本件の発端から第三者委員会による調査が完了するまでのスケジュールは下記の通りです。

  • 2019年11月26日:元社員から、過年度決算の不正会計に関する通知が届く
  • 2019年12月2日:特別調査委員会を設置
  • 2019年12月24日:第三者委員会を設置
  • 2020年4月13日:調査報告書が公表される

本件の調査のポイント

本件調査で特筆すべきポイントは、調査が4ヶ月弱という長期にわたって行われた点です。長期にわたって行われた調査では、関係資料の精査や関係者へのインタビュー、デジタル・フォレンジック調査など、あらゆる調査が行われました。

長い間にわたってあらゆる方法で調査が行われたため、一見すると質の高い調査結果が出てきたように見えるでしょう。ですが、本件の調査報告書の内容には各方面から疑問や批判の声が上がる結果となりました。

低い評価が報告書に下された理由については、格付け委員会による評価の章で詳しく説明します。

第三者委員会によって何がわかったのか

第三者委員会の調査により判明した事項

第三者委員会の調査では、なんと合計で11もの不正会計の事実が認められました。不正と認められなかった項目に関しても、誤って行われたものも含めると疑わしい会計処理はさらに多くなるとのことです。

具体的に不正会計と認められた項目は下記の通りです。

  1. 100億円規模の架空在庫の計上
  2. 滞留在庫や過剰在庫に関して、実態と異なる販売見込みを用いることで評価損の計上を回避したこと
  3. 本来は費用として計上すべき消耗品を、貯蔵品に振り替えることで利益を操作したこと
  4. 本来計上すべき費用や損失を先送りしたり資産化することで利益を操作したこと
  5. 海外向け販売代理店への買戻条件付販売による売上の計上
  6. 製品保証で生じた費用の先送り
  7. 海外受託製造会社および海外製造子会社における、損失に関連した引当金の未計上と先送り
  8. 固定資産の減損損失の回避
  9. 本来は費用として処理すべき項目を固定資産の取得価額に算入することで利益を確保したこと
  10. 関係会社に対して四半期ごとに支出した研究開発委託費に関して、出資に振り替えて損失を回避したこと
  11. 営業利益の過大計上

一つ一つ取り上げると長くなるので割愛しますが、これだけ多くの不正会計が行われた事例は中々ありません。それだけ今回の事例は、特殊かつ悪質な事例であったと言えます。

第三者委員会の調査とその影響で生じた費用

ジャパンディスプレイ社は、第三者委員会の調査で生じた費用は明らかにしておりません。ただし、不正会計による過年度決算への影響額は明らかにしています。具体的な影響額は16億円とのことです。たくさんの不正を行っている割に影響額が少ないのは、大半の不正が費用の先送りに過ぎないことが理由となっています。

本件の不正会計は悪質度が高かったため、社会的信用の低下が株価に表れています。調査報告書が公表された2020年4月13日時点の株価は48円でしたが、翌日には45円まで下落しています。その後も株価は下落しており、同社が信頼を回復するまでには時間を要すると考えられます。

格付けの評価

本件の調査報告書は、格付け委員会によりA(高い)〜F評価(低い)の5段階で評価されました。今回は8名の委員が評価に携わり、1名がD評価、残りの7名がF評価と非常に低い評価に終わりました。

非常に低い評価結果となった要因として、格付けを行った委員は下記の点を指摘しています。

  • 歴代経営陣や筆頭株主の関与や責任に踏み込んでいない
  • 細かい会計不正にばかりフォーカスした結果、根本的な原因やガバナンス面の問題点を分析できていない
  • 再発防止策に実効性がない

特に、不正を行ったA氏の責任ばかり論じ、経営陣や筆頭株主の関与や責任について言及されていない点が、ほとんどの委員から問題視されています。

根本的な原因

本件を調査した第三者委員会は、本件の根本的な原因として下記を挙げています。

  • A氏に経理の権限が集中していた
  • 上層部による牽制が行われていなかった
  • 業績を回復させたいというA氏個人の感情があった
  • 業績達成へのプレッシャーがあった
  • 内部統制システムに不備があった

見て分かる通り、調査報告書で述べられているのはA氏個人や業績面での原因ばかりです。経営陣やガバナンス面での問題点など、根本的な部分までには言及されていないと言わざるを得ません。

ジャパンディスプレイの不正会計問題:まとめ

本件の調査報告書は、調査範囲がA氏個人や不正の手法などに偏っている点から、格付け委員会から低い評価を受けました。

実際に報告書を読み解くと、経営陣やガバナンス面にはあまり触れられていないことが分かります。不正を調査する第三者委員会には、問題の根本要因を徹底追及し、実効性の高い再発防止策を打ち出すことが求められるのです。

参考文献

第三者委員会報告書格付け委員会 第23回格付け結果を公表しました
第三者調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ 株式会社ジャパンディスプレイ
不適切会計に係る第三者委員会による調査結果及び過年度決算修正について 株式会社ジャパンディスプレイ
(株)ジャパンディスプレイ– Yahoo!ファイナンス

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