大和ハウスの基準不適合問題における第三者委員会報告書の概要

大和ハウスの基準不適合問題における第三者委員会報告書の概要

この記事では、大和ハウスの基準不適合問題を事例に、本件問題の概要や第三者委員会による調査結果をくわしくご説明します。

問題の背景

本件問題は、大和ハウスが手がけた建築に関して、いくつかの基準不適合が見つかった問題です。具体的には、「独立基礎不適合」と「L字型受柱不適合」、「防火基準」の三つに関して不適合が見つかり問題となりました。

本件における第三者委員会の役割と委員選定のポイント

本件の第三者委員会の役割と委員選定

本件を調査した第三者委員会は、問題となった各不適合に関して、事実関係の調査や原因分析、再発防止策の提言などの役割を担いました。

なお本件を調査した第三者委員会は、下記3名の委員で構成されました。

  • 委員長:桑野 幸徳 (大和ハウス 社外監査役)
  • 委員 :長谷川 健 (弁護士 加藤・西田・長谷川法律事務所)
  • 委員 :渡辺 徹 (弁護士 北浜法律事務所)

第三者委員会の活動スケジュール

では次に、本件問題が発覚してから第三者委員会が調査を終えるまでの経緯を見てみましょう。

問題の発端となったのは、内部通報により、同社が携わっている建築において、仕様の不適合が指摘されたことです。これを受けて同社は、2016年12月20日から本件問題の社内調査を開始しました。

この社内調査により同社は、過去に建築した住宅の独立基礎に用いられたL字型受柱に関して、あらかじめ認定を受けた仕様に合致していない可能性があることを認識しました。そこで同社は、2019年2月18日に国土交通省に対してこの問題を報告しました。

これで事態は一件落着・・・・と思いきや、国交相から再度調査を行うように指示を受け、その結果防火基準に関しても基準に適合しないおそれがあると判明しました。この問題については同年3月26日に報告されました。そして同社は、一連の問題に関して、4月12日に公表しました。

以上の経緯を受けて同社は、同年4月26日に第三者委員会を設置し、本格的に問題の調査を開始しました。

調査は約2ヶ月弱に渡って行われ、同年6月17日に第三者委員会から調査報告書が提出されるに至りました。

事件発覚から最終報告書が提出されるまでの経緯は下記の通りです。

  • 2016年12月20日 本件問題の社内調査が開始される
  • 2019年2月18日 大和ハウスが国土交通省に対して問題を報告
  • 2019年3月26日 再度同社が国交省に対して問題を報告
  • 2019年4月12日 同社が不適合問題を公表する
  • 2019年4月26日 第三者委員会が設置される
  • 2019年6月17日 第三者委員会により調査報告書が提出される

本件の調査のポイント

本件調査のポイントは、強制的な権限を以ってして行われた訳ではないという点です。第三者委員会はヒアリングや資料の確認などを行いましたが、すべての重要情報が同社側から提供されたことや、提供された情報がすべて事実であるとは断定できないとのことです。
したがって本件の調査報告書を読む際には、情報が100%正確ではないという前提に立つ必要があるでしょう。

第三者委員会によって何がわかったのか

第三者委員会の調査により判明した事項

第三者委員会の調査では、各問題の具体的な概要や不適合が生じた棟数が判明しています。

まず独立基礎不適合問題については、「施工時の利便性」や「型式認定を得ていると誤信していたこと」が原因で行われていたとのことです。問題が生じた棟数については、戸建住宅は2,153棟、賃貸共同住宅は1,610棟だったとのことです。

次に、L字型受柱不適合問題については、こちらも型式適合認定を受けたものだと誤信したまま建築を進めていたことが直接的な原因となっていました。なお問題が生じた棟数は192棟とのことです。 そして防火基準不適合問題についても、他の2つの問題と同様に、型式適合を取得していることを前提に建築が進められていたことが直接の原因となっています。また、防火に関する審査やチェックを経なかったことも一因となっています。なお不適合が生じている棟数については、73棟に上ります。

第三者委員会の調査によって生じた費用・影響

現時点で同社は、第三者委員会の調査によって生じた費用や影響を公表していないため、正確な影響は測ることが困難です。しかし建物の基準不適合という、一歩間違えると人の生命を脅かす問題であるため、今後業績面に悪影響が及ぶ可能性は少なからずあるでしょう。

現時点で業績面に影響は出てないとはいえ、株価にはネガティブな影響が及びました。

同社が本件問題を公表する前日(2019年4月11日)の終値は3,458円でした。しかし当日に問題を公表した結果、終値が3,266円まで下落しました。ただし、その後数日間にわたって下落したものの、現在は本件不祥事が公表された以前まで株価が回復しています。 問題を公表したことで、同社は一時的には社会的な信用を失ったものの、第三者委員会の調査などのおかげもあり、現時点では信用を回復したといえます。

根本的な原因

この章では、第三者委員会が調査報告書で述べた内容から、本件問題生じた根本的原因を2つご説明します。

1つ目の原因は「法令遵守の体制が十分ではなかったこと」です。同社では、平成12年の改正建築基準法の施行に伴い、型式適合認定制度を法律に則って運用するように体制を構築していました。しかし体制を整えた一方で、勉強会などにより設計者に同制度を理解させることを義務としていなかったため、前述した誤信につながったと考えられます。

2つ目の原因は、「各事業所と本社とのコミュニケーション不足」です。第三者委員会の調査では、本社の商品開発部門が各事業所の関与なしに重要事項を決定していたり、事業所の実情を技術本部が認識していなかったために、型式適合認定のチェックリストに不備が生じたことが判明しました。こうしたコミュニケーション不足も、本件の誤信につながったと考えられます。

大和ハウスの基準不適合問題のまとめ

本件問題は、大企業によく見られる自己保身が原因の不祥事とは違い、現場の誤信によって生じました。今回のケースに見られる問題の原因には、本社と支部のコミュニケーション不足や管理体制の不備があります。

こうした問題を調査する第三者委員会には、今後にわたって本社と各事業所が円滑に意思疎通を図ることができるような再発防止策の提言が求められます。

参考文献

関連記事

ページ上部へ戻る