コロプラのセールスランキング不正操作問題における第三者委員会報告書の概要

コロプラのセールスランキング不正操作問題における第三者委員会報告書の概要

この記事では、株式会社コロプラのセールスランキング不正操作問題を事例に、第三者委員会の活動内容や本件問題の問題点を解説します。

問題の背景

本件は、ゲームアプリの配信事業を行なっている株式会社コロプラにおいて、セールスランキングの操作を目的に、取引先に自社のゲームに課金することを依頼し、実際に課金が行われた問題です。

本件における第三者委員会の役割と委員選定のポイント

本件の第三者委員会の役割と委員選定

本件を調査した第三者委員会は、本件問題の事実や経緯の確認、過年度を含めた類似取引の有無の確認、そして原因究明と再発防止策の提言という3つの役割を担いました。 本件の第三者委員会は、以下の3名で構成されました。

  • 委員長:長谷川 哲造(株式会社コロプラ 社外取締役常勤監査等委員)
  • 委員:白井 真(弁護士 光和総合法律事務所パートナー)
  • 委員:高岡 俊文(公認会計士 株式会社KPMG)

第三者委員会の活動スケジュール

では次に、本件の問題が発覚した発端から第三者委員会による調査が完了するまでの経緯をお伝えします。

そもそも本件発覚の発端となったのは、2019年6月18日に匿名で寄せられた情報提供でした。この情報提供により、従業員2名が自社ゲーム「最果てのバベル」のセールスランキングの操作を目的に、自社の費用を使って同ゲームに課金することを取引先に依頼したことが発覚しました。

消費者を欺く点から、ゲームの利用者やその他関係者の間で本件は大きな話題となりました。事の重大性を受けて同社は、同年6月26日に取締役会決議を行い、特別調査委員会(第三者委員会)を設置しました。

調査はおよそ2ヶ月間行われ、同年8月13日に同社は調査結果をまとめた報告書を公表しました。

事件の発覚から調査書が提出されるまでの経緯をまとめると、下記のようになります。

  • 2019年6月18日 匿名の情報提供により、本事象の疑いが判明
  • 2019年6月26日 取締役会により特別調査委員会(第三者委員会)を設置
  • 2019年8月13日 調査の結果をまとめた報告書を公表

本件の調査のポイント

本件調査では、課金データを含む取引データの閲覧やインタビュー、デジタル・フォレジック(電子データの分析)、アンケートの実施など、あらゆる方法で事実究明が行われた点がポイントとなりました。

単純に取引データを確認するにとどまらず、900名を超える従業員からアンケートをとったり、PCやメールのデータまでも分析を行うことで、より正確な調査を実現できたと考えられます。

第三者委員会によって何がわかったのか

第三者委員会の調査により判明した事項

第三者委員会の調査により、本件の具体的な経緯や関与者、効果などが明らかとなりました。第三者委員会によると、本件の不正取引を依頼したのはマーケティング本部の本部長出会ったA氏、プロモーショングループのグループマネージャーであるB氏とのことです。本件は多数の端末を使って課金額を分散させる方法で行われており、また端末ごとの課金額については証拠が残らないように書面によってやりとりされていました。以上のことを踏まえると、本件の不正な取引は計画的に行われたと断定できます。

また不正な課金の効果については、同社が第三者委員会の調査報告書の一部を黒塗りしているため、具体的には明らかとなっていません。ですが、一定程度セールスランキングが押し上げられたことが示唆されています。

第三者委員会の調査によって生じた費用・影響

第三者委員会の調査に要した費用は明らかになっていませんが、財務諸表に与える影響額は明らかにされています。

コロプラによると、2019年9月期第3四半期決算において、本件問題で生じた不正な課金額800万円と広告宣伝費800万円を相殺、関連して生じたプラットフォーム使用量200万円を連結損益計算書に計上するとのことです。本件は消費者を欺く行為に他ならないため、今後同社のゲームを利用するユーザー数や課金額に何かしらの悪影響が及ぶ可能性も考えられます。

また本件の問題は、株式市場における同社の信用力の低下も招きました。第三者委員会の調査報告書が公表された2019年8月13日、年初来安値となる582円を記録しました。つまり第三者委員会の調査により問題の実態が明らかとなったことで、市場からの信頼が低下し、株価が急激に下落したわけです。 繰り返しになりますが、本件問題は消費者の信頼を毀損する行為に他なりません。そのため、同社は信頼回復のために多大な努力を要すると考えられます。

根本的な原因

第三者委員会の調査報告書を読み解くと、本件問題につながる根本的な2つの原因がわかります。

まず一つ目の原因は、新作タイトルがヒットしていない状況が続いていたことです。当時同社のリリースしたゲームは、ヒットしない状態が続いていました。そんな中で、海外で頻繁に使われている自社負担での課金を知った同社は、この方法を使えばセールスランキング上位を獲得し、ダウンロード数の増加を見込めると考えて、本件問題に手を染めました。

二つ目の原因は、役職員間における牽制機能の不十分さです。同社の規定では、広告宣伝費を使う際には、上長1名の承認さえ得られれば気軽に外注を行える仕組みでした。また、予算会議で審議の対象となる予算項目については、「Web運用」などといった大まかで曖昧な文言が使われていました。以上2つの理由から、役職員間で本件不正を指摘するに至らなかったと考えられます。

コロプラのセールスランキング不正操作問題まとめ

本問題は、自社でゲームに課金することで不正にセールスランキングを押し上げるという、比較的私たち一般人でも理解しやすい不正でした。

本件は偶然などではなく、お伝えしたとおり用意周到に行われた不正です。その背景には、業績不振や牽制機能の不十分さなど、他の不正にも当てはまる原因がありました。 こうした案件を調査する第三者委員会には、業績不振に陥ってもこのような問題が生じないように再発防止策を提言することが求められます。また、不正に気づく・不正を見逃さないような組織体制の構築も必要となるでしょう。

参考文献

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