株式会社アドベンチャーの子会社社員による着服問題に関する第三者委員会報告書の概要

株式会社ギャラ リーレアの第三者委員会報告書

今回の記事では、株式会社アドベンチャーの子会社社員による着服問題を事例に、第三者委員会の調査結果や活動スケジュールをご説明します。

問題の背景

本件は、格安航空券の販売事業を行う株式会社アドベンチャーの子会社「ギャラリーレア(GR社)」にて、社員が会社のお金を着服していた問題です。

本件における第三者委員会の役割と委員選定のポイント

本件の第三者委員会の役割と委員選定

本件を調査した第三者委員会は、調査にあたって下記の役割を担いました。

  • 本件に関する事実関係の調査
  • 本件による当社連結財務諸表等への影響額の調査
  • 本件が⽣じた原因分析と再発防⽌策の提⾔
  • 類似事案の確認調査

具体的なメンバーは下記の通りです。なお今回は、名目上「調査委員会」が調査したことになっています。ただし外部の専門家の比率が多い点から、この記事では第三者委員会として説明を進めます。

  • 委員長:今井 基喜(公認会計⼠ OAG監査法⼈)
  • 委員:藤⼾ 久寿(弁護⼠ ⽇⽐⾕ Ave.法律事務所)
  • 委員:藤⼾ 久寿(弁護⼠ ⽇⽐⾕ Ave.法律事務所)

第三者委員会の活動スケジュール

次に、本件が発覚した経緯から第三者委員会の調査が完了するまでの経緯を確認しましょう。

事の発端は2020年1月14日、GR社の社員が経費精算で使っている銀⾏⼝座の⽀払履歴を確認していたときにさかのぼります。この確認作業にて、 GR社の経理を担当するA氏への振り込み履歴が見つかりました。そこで同社では、同年16日にこの件についてA氏に尋ねたところ、着服していたことや、経理資料を改竄することで問題の隠蔽を図ったことを認めました。

この件について報告を受けたアドベンチャー社は、より詳しい調査を行う目的で、同年1月23日に外部の専門家を中心とした調査委員会(第三者委員会)を設置しました。調査はおよそ2ヶ月弱に渡って行われ、同年3月13日に調査報告書が公表されました。

問題の発覚から調査報告書が提出されるまでの流れは以下の通りです。

  • 2020年1月14日 経理課の社員による着服を疑う支払い履歴が見つかる
  • 2020年1月16日 経理課社員が着服の件を認める
  • 2020年1月23日 調査委員会(第三者委員会)を設置
  • 2020年3月13日 調査報告書が公表される

本件の調査のポイント

本件で行われた調査について、特筆すべき点は公認会計士や弁護士などの専門家が中心となって、ヒアリングや関係資料の精査を行ったことです。

着服という会計的な問題について、専門家が中心に調査を行うことで、単なる事実確認に留まらず、問題の根本的な要因や再発防止策を的確に導き出せたと考えられます。

第三者委員会によって何がわかったのか

第三者委員会の調査により判明した事項

第三者委員会の調査では、着服の具体的な方法と金額が明らかとなりました。

A氏は、主に業務で用いているインターネット決済システムを用いて着服を行ったとのことです。A氏以外に決済システムの仕組みを理解している社員がいなかったことから、着服を行うに至ったことも明らかとなりました。着服の合計金額は、およそ2億5,132万円に上るとのことです。

なおA氏は本件の発覚を防ぐために、店舗の現⾦残⾼等を増加させる架空仕訳や、架空の広告宣伝費の計上なども行ったとのことです。

第三者委員会の調査によって生じた費用・影響

2020年5月時点では、アドベンチャー社は第三者委員会の調査によって生じた費用は明らかとしていません。

一方で同社は、調査報告書にて本件の着服問題による、過年度決算への影響額を明らかとしています。2019年6月期だけで、営業利益と税引前利益は1億4,400万円、資本合計と資産合計は1億7000万円の減額になるとのことです。

なおアドベンチャー社の株価については、調査報告書が公表される前後で特筆すべき動きは見られませんでした。子会社の社員が個人的に行った問題であることから、社会的な信用低下には至らなかったと考えられます。

根本的な原因

本件を調査した第三者委員会は、この問題の根本的な原因として下記の5点を指摘しています。

  • 不正をチェックする体制の不備
  • 不正のリスクに対する意識が組織全体で不十分であった
  • コンプライアンス意識が社員全体に浸透していなかった
  • 社員同士を信頼し合うという組織風土が強すぎた
  • アドベンチャー社の子会社に対する管理が不十分だった

総合的に見て、本社と子会社であるGR社ともに、業務プロセスを管理する姿勢が不十分であったことが問題の根本的な原因であったことが見て取れます。社員や子会社を信頼することは良いものの、あまりにも管理が甘すぎると、本件のような問題に発展することが教訓となります。

株式会社アドベンチャーの子会社社員による着服問題:まとめ

本件では、子会社の社員による会社のお金の着服が問題となりました。組織ぐるみで行われた問題ではなかったため、他の第三者委員会による案件と比べると悪質度は低いです。 しかし一歩間違えると取引先や株主などの利害関係者に損失を与えるため、今後は的確な再発防止策を講じる必要があるでしょう。

参考文献

調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ 株式会社アドベンチャー
(株)アドベンチャー – Yahoo!ファイナンス

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