みずほフィナンシャルグループのシステム障害問題における第三者委員会の解説

みずほフィナンシャルグループ

今回の記事では、みずほフィナンシャルグループ(MHFG)のシステム障害問題を事例に、第三者委員会(特別調査委員会)の調査内容や調査結果をご説明します。

問題の背景

本件は、MHFGの子会社であるみずほ銀行において、システム障害により顧客に多大な影響を与えた問題です。

本件における第三者委員会の役割と委員選定のポイント

本件の第三者委員会の役割と委員選定

本件において第三者委員会(特別調査委員会)は、システム障害の原因究明、および再発防止策の提言を行う役割を担いました。

本件の特別調査委員会は、同社と利害関係を有しない下記4名により構成されました。4名とも日弁連ガイド欄に準拠して選任された上に、同社との間に利害関係を有していないため、実質的に第三者委員会と同等の調査体制であると言えます。

したがって以降は、第三者委員会という呼称を用いて解説を進めます。

  • 委員長:岩村 修二(弁護士 T&K法律事務所)
  • 委員:鵜瀞 惠子(学校法人東洋学園 元公正取引委員会経済取引局長)
  • 委員:西川 清二(元株式会社NTTドコモ常務執行役員CIO情報システム部長)
  • 委員:角谷 直紀(弁護士 T&K法律事務所)

第三者委員会の活動スケジュール

本件問題の発端となったのは、2021年2月28日から同年3月12日にかけて、ATMが利用不能になったり、顧客の通帳・カードがATM内部にとどまったまま長時間返還がされなかったり、などのシステム障害が発生したことです。

2002年、2011年にも大規模な障害が発生したこと、顧客に大きな迷惑をかけたことを考慮し、MHFGは2021年3月17日に外部調査委員会の委員長を、同月22日に委員を選任し、第三者委員会の調査を開始しました。

第三者委員会の調査は2021年6月15日まで行われました。調査期間は3ヶ月におよび、同日中に調査の結果をまとめた報告書が公表されました。 本件問題における第三者委員会の動向は以下のとおりです。

経緯

  • 2021年2月28日〜同年3月12日:大規模なシステム障害が発生する
  • 2021年3月17日:第三者委員会の委員長が選任される
  • 2021年3月22日:第三者委員会の各委員が選任され、調査が開始する
  • 2021年6月15日:調査が完了し、報告書が公表される

本件の調査のポイント

本件調査のポイントは、多種多様な手法を用いて調査が行われた点です。

第三者委員会は、システム障害の原因究明などを目的に、「ヒアリング・現地調査」、「関係資料の精査」、「デジタルフォレンジック調査」、「アンケート調査」、「ホットラインの設置」、「顧客対応部門の役職員への文書報告の要請」という複数の調査を行いました。

複数の調査方法を併用することで、多面的な視点で原因の究明を行えたと考えられます。

第三者委員会によって何がわかったのか

第三者委員会の調査により判明した事項

第三者委員会の調査では、各障害が発生した原因が明らかとなりました。

まず、一連の障害について、ITシステムのメカニズム面には共通する原因はなかったとのことです。ただし、「危機事象に対応する組織力の弱さ」や「ITシステム統制力の弱さ」、「顧客目線の弱さ」という人為的問題が一連の障害に共通していたとのことです。

たとえば、システム障害によって通帳・カードがATMに取り込まれた際には、障害復旧対応における訓練が不足していたことが原因で、長時間顧客に不便を強いる結果となりました。 日頃から経営陣を中心にITシステム障害に対するリスク管理意識が欠如していたこと、万が一障害が発生した際の対応力が不足していたことが、一連の障害につながったということです。

第三者委員会の調査とその影響で生じた費用

2021年6月15日に報告書が公開されたばかりであるため、第三者委員会の調査で発生した費用は明らかにされていません。また、同社の株価にも本件問題の影響は生じていません。

ただし、連日報道等で明らかにされている通り、本件の障害により顧客は多大な迷惑を被りました。そのため、今後ユーザー離れや社会的評価の下落などの悪影響が生じる可能性は否定できないでしょう。 評判の回復に向けて、MHFGにはITシステム障害への対応力向上はもちろん、顧客目線や組織力の向上といった根本的な問題の解決が求められます。

根本的な原因

第三者委員会の調査報告書では、本件問題の根本的な問題として「前述した問題点が容易に改善されない組織体質・企業風土があること」を挙げています。

調査委員会は、各社員のあいだに「積極的・自発的な行動を起こすことで、問題を抑止・解決する姿勢」が弱い場面がしばしば見受けられたと指摘しています。

実際、過去に何度もシステム障害が発生していたにもかかわらず、繰り返し同じ問題が生じていることからも、上記の指摘は真っ当であると言えます。

再発防止のためには、第三者委員会の提言にあるように、経営陣が具体的な防止案を全役職員に対して周知させ、全社的に目的意識を持って策の実行にあたってもらうことが重要となるでしょう。

まとめ

本件で第三者委員会は、報道等で話題となっているMHFGのシステム障害を調査しました。単なるITシステムの問題に踏みとどまらず、組織的な問題点に踏み込んで調査した点は評価に値するでしょう。

表面的な問題ではなく、根底にある原因を究明することが第三者委員会には求められるのです。

参考文献
調査報告書(要旨) みずほFG
調査報告書 みずほFG
(株)みずほフィナンシャルグループ【8411】 Yahoo!ファイナンス

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