年末調整ってなぜ必要?

年末調整ってなぜ必要

サラリーマンであれば毎年11月下旬から12月初旬にかけて、会社から扶養控除等(異動)申告書・配偶者特別控除申告書・保険料控除証明書・住宅借入金等特別控除証明書などの提出を求められた経験はあると思いますが、これらのは「年末調整」を行うために必要な書類です。

昭和15年から実施されている給与所得の「源泉徴収制度」によって毎年行なわれている「年末調整」ですが、なぜこのような手続きが必要なのでしょうか。

年末調整についてあまり理解していないが申告書類等は提出しているという方に、源泉徴収制度とそれに基づく年末調整の必要性、さらには本年度分の年末調整から適用される改正点などについて分かりやすく解説します。

源泉徴収制度とは

源泉徴収制度は、⑴給与、利子、配当、税理士報酬などの所得を支払う者が、⑵その所得を支払う際に所定の方法により所得税額を計算し、⑶支払金額からその所得税額を差し引いて国に納付するという制度です。

つまり、所得税は所得者自身が自主的に納付するのが前提ですが、サラリーマンの場合は会社が給与から所得税を天引きし本人に代わって国に納付しているのです。

また、「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」の施行により、平成25年1月1日から平成49年12月31日までの期間は所得税に加え「復興特別所得税」も一緒に徴収されます

源泉徴収の対象となる所得

国内に住所を有する人又は1年以上居所を有する人が、源泉徴収の対象とされる所得は次の13種類です。

  1. 利子等
  2. 配当等
  3. 給与等
  4. 退職手当等
  5. 公的年金等
  6. 報酬・料金等(※給与・退職手当等を除く報酬・料金・契約金・賞金等)
  7. 生命保険会社、損害保険会社等との保険契約等に基づく年金
  8. 定期積金の給付補塡金等
  9. 匿名組合契約等に基づく利益の分配
  10. 特定口座内保管上場株式等の譲渡による所得等
  11. 懸賞金付預貯金等の懸賞金等
  12. 割引債の償還差益
  13. 割引債の償還金に係る差益金額

年末調整は何のためにするのか

源泉徴収は国税庁の「源泉徴収税額表」に基づいて行われますが、1年間給与額などの変動がないものとして給与から差し引かれています。

しかし、給与・賞与額の変動や扶養親族の増減などに加え、生命保険料や地震保険料などは年末調整の際に控除することとされているため、実際に支払わなければならない納税額と源泉徴収税額には「差額」が生じてしまいます。

この1年間に生じた「実際の納税額と源泉徴収額の差額分」を精算するために行うのが年末調整で、余分に源泉徴収されていた場合には差額分が還付され、逆に少ない場合には差額分を追加で徴収されることになります。

年末調整の対象となる人、ならない人

年末調整の対象は会社に「扶養控除等(異動)申告書」を提出した人全員が原則ですが、中には対象とならない人もいます。

<年末調整の対象となる人>

(1) 1年を通じて勤務している人
(2) 年の中途で就職し、年末まで勤務している人
(3) 年の中途で退職した人のうち、次に該当する人
①死亡により退職した人
  ②著しい心身の障害のため退職した人で、その退職の時期からみて、本年中に再就職ができないと見込まれる人
  ③12月中に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人
  ④いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人 (退職後本年中に他の勤務先等から給与の支払を受けると見込まれる場合を除きます。)
(4) 年の中途で、海外の支店へ転勤したことなどの理由により非居住者となった人

<年末調整の対象とならない人>

(1)<年末調整の対象となる人>の中で、本年中の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人
(2)<年末調整の対象となる人>の中で、災害により被害を受けて「災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律」の規定により、本年分の給与に対する源泉所得税及び復興特別所得税の徴収猶予又は還付を受けた人
(3) 2か所以上から給与の支払を受けている人で、他の給与の支払者に扶養控除等(異動) 申告書を提出している人や、年末調整を行うときまでに扶養控除等(異動)申告書を提出していない人
(4) 年の中途で退職した人で、<年末調整の対象となる人 (3)> に該当しない人
(5) 非居住者
(6) 継続して同一の雇用主に雇用されないいわゆる日雇労働者など

給与所得控除に関する改正

ここで、2020年の年末調整から適用される新しいルールでは、給与所得控除額が改正されたことにより次の点が変更となりました。

給与所得控除

給与所得控除額が改正により従来に比べ若干減額されています。

給与所得控除額改正

この改正に伴い、「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」も改正されています。

基礎控除及び所得金額調整控除

基礎控除額は従来全て同額でしたが、改正により合計所得金額に応じて金額が設定され2,500万円を超える所得者については、基礎控除の適用が無くなりました。

基礎控除額の変更

基礎控除額の変更の他に「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」が新たに設けられたことで、提出書類に「給与所得者の基礎控除申告書」と「所得金額調整控除申告書」が追加されました。

各種所得控除等を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件等

同一生計配偶者、扶養親族、源泉控除対象配偶者、配偶者特別控除の対象となる配偶者及び勤労学生の合計所得金額要件がそれぞれ10万円引き上げられました。

ひとり親控除及び寡婦(寡夫)控除

(1)一定の条件を満たす未婚のひとり親の1年間の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から35万円を控除することになりました。

(2)寡婦の要件見直しを行い、寡婦(寡夫)控除がひとり親に該当しない寡婦に係る寡婦控除に改組されました。

年末調整ってなぜ必要?:まとめ

年末調整について説明してきましたが、1年間の納税額の過不足分を精算するために必要であることは理解できたでしょうか。

そして、過不足分は「源泉徴収税額」から「実際の納税額」を差し引いて計算しますが、その際に源泉徴収税額には反映されていない「生命保険料」や「地震保険料」などを控除できるのでこれらの保険加入者にとっては重要な手続きとなります。

また、今年の年末調整はいくつかの改正によって提出書類も増え、電子化の取組も始まっているので、以下の国税庁のサイトで確認しておくことをおすすめします。

<国税庁ホームページ>
・給与所得控除に関する改正
・年末調整の電子化に向けた取組について

関連記事

ページ上部へ戻る