ネット通販でのトラブルにおける新法を制定

ネット通販でのトラブル

私達がインターネットを利用して商品を購入するのは、もはや日常の行為となりました。しかし一方で、利用者の増加と比例するかのように、消費者トラブルが増加しているという現実を軽視することはできません。

そんな中、プラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業が運営するネット通販を対象にした新法が2021年2月1日に施行されました。特定DPF取引透明化法と称されるこの法律が、消費者保護の観点から、どのような役割を果たすのか解説をしていきましょう。

特定DPF取引透明化法が誕生した背景

プラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業を対象にした「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(特定DPF取引透明化法)」が、2021年2月1日に施行されました。

新法では、国民生活や経済への影響が大きく、売上高などが一定規模ある企業を「特定デジタルプラットフォーム」と規定して、モール型ネット通販やアプリストア運営会社を規制の対象としています。米アマゾンやグーグル、アップル、国内では楽天やヤフーが対象となる見通しです。

近年、プラットフォーマーによる市場の寡占化が進んでおり、利用者の権利をどのように守るかが大きな課題とされていました。まずは、この新法が、どのような背景から誕生したのかを見ていきましょう。

新法制定以前の課題

モール型ネット通販を利用してきた利用者の多くは、送られてきた商品に問題があれば、モール側に責任を追及すればいいと思い込んでいました。

ところが実際に問題に直面して、苦情を申し入れても、間接的に商品提供者に連絡をいれるだけで、モール側が自ら解決や保証をしてくれることは、ほとんどなかったのです。

たとえば、3万円でパソコン用のバッテリーを購入したのに、まったく機能しない不良品が送られてきたようなケースで、注文主が責任を追及しても、単に商売をする「場」の提供者であるとの位置づけから、モール側が法的責任を負うことは基本的にありませんでした。そればかりか、販売者も特段問題視されることなく商品提供を続けられていたのです。

このようなモール型ネット通販の図式は、市街地のテナントビルの一室で商売をする電気部品販売店と家主との関係と似ています。しかし、店舗で直接購入した消費者が、販売店に直接クレームを入れることはあっても、テナントビルの家主に苦情を入れることは、まずあり得ません。

モール型ネット通販が市街地の販売店と根本的に異なるのは、消費者は販売店を信用して商品を購入するのではなく、モール運営者のブランドを信頼して購入していることです。この点が、ショッピング中に店舗の家主をわざわざ意識することがない、市街地の販売店との決定的な違いです。

つまり、商売の思想が根底から異なるモール型ネット通販に対して、既存の法律を適用してきた点に大きな問題があったのです。

他にもモール型ネット通販に対しては、「販売会社の情報を開示してくれない」「規約の一方的な変更で手数料を引き上げられた」「新しい決済システムを導入された」といったことや「大規模モールの運営者が自社や関連会社を検索表示や手数料で優遇している」といった不満が、消費者の間で膨らんでいました。

特定DPF取引透明化法の施行で何が変わるのか

上述した経緯を鑑み、国は、大規模モールの運営者に対して新たな定義づけをして、一定の規制をする新法を制定するに至りました。新法が達成すべき目標として、次のような項目が掲げられています。

  1. 違法な製品や事故のおそれのある商品等に関わる取引による重大な消費者被害の防止
  2. 緊急時における生活必需品等の流通の確保
  3. 一定の事案における取引の相手方の連絡先の開示を通じた紛争解決
  4. 被害回復のための基盤の確保
  5. デジタルプラットフォーム企業の自主的な取組の促進と取組状況の開示を促すようなインセンティブ設計

経済産業省は、これらの目標を達成するために、今後、特定デジタルプラットフォーム提供者を指定していきます。

一方で、指定された特定デジタルプラットフォーム提供者は、取引条件などの開示と、自主的な手続体制の整備状況を経産省に報告をすることになります。この報告は、取引先事業者や消費者、学識者などが関与して評価が行われ、その結果が公表されます。 事業者は、経営母体が国の内外にあるかにかかわらず、指定対象になります。特定DPF取引透明化法の施行によって、指定された事業者にどのような改善が期待できるのか、項目ごとに追っていきましょう。

運営者の開示義務

プラットフォームを利用した取引では、取引条件が難解であったり、一方的に取引条件の変更が行われたのに、その理由が開示されなかったりした事例が多く発生しました。

このため、特定DPF取引透明化法においては、契約条件の開示や変更時の事前通知が義務付けられました。販売等の目的でプラットフォームを利用して事業をする者は、次のことを説明、開示することになります。

  • プラットフォーム利用にあたり他の商品の購入などを要請する場合の内容・理由
  • プラットフォーマーが売上額等の取得・使用する場合、その内容・理由・条件
  • 契約変更や契約にない取引を行う場合における内容理由
  • 継続取引を拒否する場合、その内容理由
  • プラットフォーマーに対する苦情・協議申し入れ方法
  • 商品掲載順位の決定に使われる主な基準
  • プラットフォーマーが売上額等の取得・使用する場合、その内容・理由・条件

商品の販売停止措置

内閣総理大臣(消費者庁)は、取引デジタルプラットフォームにおける商品等の販売条件等の表示が次の①及び②のいずれにも該当する場合、取引デジタルプラットフォーム提供者に対し、販売の停止その他の必要な措置をとることを要請することができます。

  1. 次のイまたはロに掲げる事項について、著しい虚偽表示または著しい優良・有利誤認表示が認められること。
    イ) 消費者が当該商品を使用する際の安全性に重大な影響を及ぼす事項
    ロ) イのほか、商品等の性能又は内容に関する重要事項として内閣府令で定めるもの
  2. 当該表示をした販売業者等が特定できないまたはその所在が明らかでないことにより当該販売業者等が当該表示を是正することが期待できないこと。

売主の身元に関する情報開示

デジタルプラットフォームを利用する消費者は、一定の金額以上の金銭債権を行使するため確認の必要がある場合に限り、デジタルプラットフォーム提供者に対し、通信販売取引の相手方である販売業者等に関する情報の開示を請求することができます。

ただし、消費者が販売業者等の信用棄損等の目的等を有する場合には、開示請求の対象外となります。このため消費者は、確認を必要とする情報及びその理由を明らかにする必要があります。 また開示をしようとする事業者は、販売業者等と連絡することができない場合を除き、当該販売業者等の意見を聴かなければならないとされています。

申出制度

消費者は、デジタルプラットフォームの利用により利益が害されるおそれがあると認めるときは、消費者庁に対して適当な措置をとるようを申し出ることができます。

これに対して消費者庁は、必要な調査を行い、申出の内容が事実であると認めるときは、適当な措置を講じることになります。

まとめ

不良品や注文と異なる商品が届けられても、これまでモール型ネット通販の利用者は、根本的な解決を図ることなく、半ば諦める事例が多く見られました。これは、対面型販売が直接消費者のクレームを受けて対応をしている実情と大きく異なる点です。

施行して間もない特定DPF取引透明化法が、実際に消費者保護にどのような役割を果たすのかは、未知数ですが、従前の問題点を洗い出した点において、新法の制定には大きな意義があります。

新法施行を受けて、モール型ネット通販運営者も同業者による独自の協議会を発足させており、事業の改善に努めるとしています。

モール型ネット通販の消費者への対応は、新法施行により確実に変化をしており、今後さらに快適に利用できる環境が整うことが期待できます。

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