結局どうなったの?森友学園で起こった公文書改ざん問題をやさしく解説

森友学園で起こった公文書改ざん問題をやさしく解説

この事件は、国が国有地を大幅な値引価格で森友学園に払い下げたことから始まりました。当時、安倍元首相夫妻が関与したのではないかという疑惑が浮上し、国会審議が行われている中で国有地払い下げに関する決裁文書の改ざんが行われていたのです。しかし、朝日新聞のスクープで公文書の書き換え疑惑が発覚し大きな社会問題に発展しました。

2020年の3月、近畿財務局の幹部職員だった赤木俊夫さんの自死は公文書の改ざんを強要されたためとして、妻の赤城雅子さんが国と佐川前理財局長に対し計約1億1,200万円の損害賠償を求め大阪地裁に提訴したことで、この問題が改めて関心を集め始めています。

最終的に改ざんの事実を認めた財務省が、内部調査をもとに作成した調査報告書の公表と関係者の処分で幕引きを図りましたが、果たして事実は明らかになったのでしょうか。

今回は、未だに疑問が残る行政機関による公文書の改ざんというあってはならない事件が、どのような経緯で起こったのか詳しく解説します。

国有財産に関わる財務省の組織

本題に入る前に、本件の対象となった「国有財産」の取り扱いに関わる財務省の組織機構について説明します。

国有財産には、「行政財産」と「普通財産」があります。行政財産は、庁舎などの「公用財産」、道路・河川などの「公共用財産」、皇居や御所などの「皇室用財産」、国有林野事業のための「森林経営用財産」の4種類です。

普通財産は、行政財産以外の財産で庁舎などの跡地、物納された土地、政府保有株式などで、原則として財務大臣が管理・処分します。実際の業務に関しては財務省の本省にある「理財局」と全国にある9つの「財務局」が担当部局です。

森友学園との交渉や契約は、国有財産行政を所管する理財局から委託を受けた近畿財務局が行いましたが、下の機構図のように、理財局と近畿財務局には上下関係はなくそれぞれが独立した機関となっています。

総務省本省の組織図

公文書改ざん事件の経緯

2013年の国有地の売却先公募から始まり、2018年の財務省の調査広告書の公表及び関係者の処分までの主な経緯は次のようになります。

2013年6月近畿財務局が大阪府豊中市の国有地の売却先を公募。森友学園は小学校用地として借り受けた後、経営が安定した時点での買取りを要望。
2015年6月国は森友学園と買取条件付きの借地契約を締結。その際、貸付期間が原則3年のところ10年とする「特例申請」「特例承認」を行う。
2016年6月森友学園に貸付けた土地から大量の地下埋設物が発見されたため、国は不動産鑑定士の査定価格9億5,600万円から8億2,200万円を値引きし1億3,400万円で森友学園に早期売却
2017年2月森友学園に対する国有地払い下げに安倍元首相夫妻が関与し、大幅な値引きが行われたのではないかという疑惑が浮上。
国会審議で安倍元首相が「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と発言。
2018年3月朝日新聞のスクープで財務省の決裁文書の書き換え疑惑が発覚。
佐川前理財局長は国会承認喚問で、改ざんの詳細につては証言を拒否し、政治家・官邸の関与や安倍元首相夫妻の影響を否定。
財務省は決裁文書の改ざんについて調査を行い、理財局による合計14件の決裁文章の改ざんを認め公表。
2018年5月財務省は当時の佐川理財局長が破棄したと答弁していた、森友学園と近畿財務局の交渉記録を国会に提出。
2018年6月財務省が、「森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書」と幹部ら20名の処分について公表。

決裁文書はどのようにして改ざんされたのか

森友学園への国有地売却に関し、改ざんされた決裁文書は次の14件になります。

⒈ 貸付決議書①(平成27年4月28日)
⒉ 貸付決議書②(平成27年5月28日)
⒊ 売払決議書(平成28年6月14日)
⒋ 貸付に係る「特例申請」の決裁文書「(平成27年2月4日)
⒌ 貸付に係る「特例承認」の決裁文書(平成27年4月30日)
6〜14. 上記5件の決裁文書に関連して改ざんされた決裁文書

理財局で行われた改ざん

理財局が作成した決裁文書は「貸付に係る特例承認の決裁文書」の1件で、「一元的な文書管理システム」上に決裁文書及び添付書類の電子ファイルをアップロードし、システム上で決裁されたものです。

その後決裁文書の公開が求められた場合、政治家関係者からの照会状況等の記載が問題となり得るとして、本省理財局の国有財産審理室長らはシステムにアクセス権限を持つ職員にログインさせそのコンピュータを借りて政治家関係者からの照会状況等の記載を削除。しかし、当該職員は改ざん作業が行われたことに関し全く関知していませんでした。

近畿財務局で行われた改ざん

近畿財務局が作成した13件の決裁文書は、紙の書類で決裁が行われ保存されていました。これらの決裁文書の中には各種経緯を詳しく記載しているものがあったため、理財局から近畿財務局に対し必要箇所の削除・書き換えなどの指示があり、近畿財務局側は強い抵抗感が有ったものの最終的には実行しました。

改ざんの具体的な内容

改ざんの内容は主に籠池理事長と安倍元首相夫妻の関係や政治家の関与を疑わせる文言、そして佐川前理財局長の国会答弁と食い違う部分を削除することでした。 ここで公開されている資料から、削除された具体的な文言をいくつか紹介します。

貸付に係る「特例申請」及び「特例承認」の決裁文書から削除された文言の抜粋

1. 事案の概要(末尾)
※本件は、平成25年8月、鴻池祥肇議員(参・自・兵庫)から近畿局への陳情案件。
これまでの経緯
H25.8.13 鴻池祥肇議員●●秘書から近畿局へ照会・・・・
H27.1.8 産経新聞社のインターネット記事で、安倍首相夫人が森友学園の教育方針に感涙したと記載される。
H27.1.29 平沼赳夫衆議院議員秘書から財務省に「近畿財務局から森友学園に示された 概算貸付料が高額であり、何とかならないか」と相談。

添付資料「学校法人森友学園の概要等」から削除された文言の抜粋

理事長 籠池康博氏、日本会議大阪(注)代表・運営議員
(注)日本会議大阪は、全国的な国民運動団体である「日本会議」と呼応する形で大阪に設立された任意団体。なお、国会においては日本会議と連携する組織として「日本会議国会議員懇談会」が設立され、特別顧問に麻生財務大臣、会長に平沼議員、副会長に安倍首相らが就任。

※以上は原文をもとに要約したものです。

「予定価格の決定及び相手方への価格通知について」から削除された文言の抜粋

5. 本件売払いについて
(2) 学園から(地下埋設物が発見されたので)即座のゴミ撤去を要請されたが、(所管の)大阪航空局は予算がないので即座の対応は困難と回答。
(3) 学園から本来は国に対して損害賠償請求を行うべきものであるが、現実的な解決策として早期の土地買受を提案された。具体的には土地の現状(ゴミ撤去が必要)を踏まえた売払価格を示し、学園が納得できれば損害賠償等を行わない条件で売買契約を締結する。
(4) 当局と大阪航空局で検討した結果、学園の提案に応じなかった場合、損害賠償に発展すると共に小学校建設中止による社会問題になる可能性もあるため、売払いによる問題解決を目指すこととした。

7. 価格提示について
公共随意契約を行う場合、近畿財務局では価格を相手方に通知せず見積もり合わせを行なっているが、本件は通常の売払いではないので口頭で相手方に価格を通知する。

※以上は原文をもとに要約したもので( )内は文章の補足です。

森友学園で起こった公文書改ざん問題をやさしく解説:まとめ

公文書改ざん事件で未だ明らかになっていないのは、①公文書の改ざんは誰の指示で行われたのか、②その目的は何か、③国有地売却に関し安倍元首相夫妻の関与はあったのかの3点です。

流行語にもなった「忖度」が官僚を動かし、大量の公文書を改ざんしたと考えるのはなかなか難しいものがありますが、判断するには情報が不足しています。 今回ご紹介した改ざんの具体例は財務省が自ら作成した報告書からの抜粋ですが、もし疑惑が浮上した時点で早急に「デジタルフォレンジック」を行なっていれば、理財局のコンピュータシステムに保存されているデータを分析し、改ざんに関する法的証拠をより多く洗い出し真相に近づけたかもしれません。

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