経営者が気を付けるべきお金のトラブル!万一の法律もご紹介
- 2020/12/10
- 法令コラム
経営者にとって資金繰りは事業の根幹と言って過言ではありません。資金繰りは経営における血液と同じで、常に循環しておく必要があります。この記事では資金繰りの基礎と、万一の際に知っておくべき法律を紹介します。法務担当のたしなみとして把握しておきましょう。
資金繰りは永遠のテーマ
経営は売上さえ上れば良いというものではありません。売上のタイミングと入金のタイミングに時間差があれば、入金までの間に資金が底をつく場合があります。たくさん売上が上がっても、資金繰りに失敗してしまうと倒産する可能性があるのです。まずは、資金繰りの基礎を見て行きましょう。
資金繰りはしっかり管理が必要
資金繰りはしっかり管理しなければなりません。たとえば、事務所費用や光熱費、通信費などの固定費のほか、仕入原価や人件費など固定費に近い金額の把握が必要です。また、広告費用やシステム開発費、一時的な人件費など、別に考えなければならない費用もあります。
これらは書き入れ時、閑散期などのメリハリをつけて、資金効率を考えた戦略が必要です。資金繰りがしっかり管理できていなければ、突然お金が足りなくなる可能性があります。家計管理も同様ですが、事業での資金繰りは後述の売掛や買掛、手形などより複雑ですので、入念に管理しなければならないのです。
黒字でも倒産する
事業は黒字でも倒産する可能性があります。「黒字ということは利益が出ているのだから、倒産するはずがないじゃないか」と思う人もいらっしゃるでしょう。しかし、黒字なのに倒産する会社は多いです。
東京商工リサーチが公開している2018年の「倒産企業の財務データ分析」調査(https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190215_02.html)では、倒産企業のうち47.7%が黒字とのことです。黒字倒産は、決算書上では利益が出ているけれども、実際のお金が足りないケースです。分かりやすく個人の収支で例えると、あなたが今月働いた分の給料40万円が来月15日に入って来るとしましょう。
しかし、今月末までに20万円の支払いが必要であるものの、手元のお金が15万円しかありません。数字的には20万円の黒字のはずが、資金繰りのタイミングによって5万円不足します。カンタンな例でいうと、これが黒字倒産のカラクリです。
資金繰り管理表は必須
個人が家計簿をつけた方が良いのと同じように、事業運営においては資金繰り表を作る必要があります。資金繰り表には、現金収入、現金支出、財務収支、翌月繰越金などを作成し、お金の流れが一目瞭然となる表にしましょう。重要なことは、金額を発生時点ではなく、実際の入出金額で入れましょう。それにより、お金の過不足が理解しやすくなります。
資金繰りに影響する掛取引と万一の法律をご紹介
資金繰りにまつわるトラブルを回避するためには、掛け取引の仕組みと、法的側面を把握しておく必要があります。それぞれ具体的に解説いたします。
売掛金
売掛金とは、先に納品が行われ、あとから代金の回収が行われる取引金額を指します。ひと言でいうと後払いです。たとえば納品から半年後に入金される場合、半年間は現金が手元に入りません。その間に支払いが多いと現金が不足してしまいます。企業間取引では、月末締めの翌月末払いが多いのですが、中にはもっと長いケースもあります。
顧客からの支払いまでが長ければ長いほど資金繰りは不利となるため、支払い条件の確認や交渉は重要です。また、支払いまでの間に顧客が倒産してしまえば、仕入金額だけ残り、回収はできない場合があります。このため、黒字倒産は連鎖するケースも珍しくありません。
買掛金
買掛金とは売掛金の反対です。仕入先などから先に納品してもらい、後から支払うという方法です。売掛金は少しでも早く回収したいものですが、買掛金は少しでも遅く支払いたいものです。資金繰りを有利にするためには、自社の支払いは遅く、顧客からの回収は早くが原則です。
約束手形
約束手形とは、一定期日に一定金額の支払いを約束する有価証券です。カンタンにいうと、現金をもらうための証明書のようなものです。約束手形の期日は、1カ月~120日以内のものが多いです。この期間が長くなるほど入金が遅くなり、資金繰りで不利となります。
下請け会社が不利にならないよう、120日以内と下請代金支払遅延等防止法で定められています。
トラブル時は民事訴訟
万が一トラブルとなった場合には、簡易裁判所や地方裁判所に民事裁判を起こすこととなります。争う余地が無い裁判の場合は、弁護士を立てず、一般書籍などを参考に自分で訴訟する人もいらっしゃいます。逆に、相手と言い分が異なったり、複雑な事案の場合には、弁護士を立てる必要があります。とはいえ、訴訟で勝ったとしてもお金が戻ってくるとは限りませんので、労力などを踏まえて訴訟すべきかどうかの判断が必要です。
また、請求金額が少額の場合には、「少額訴訟」という方法があります。請求金額が60万円以下であれば、簡易裁判所に少額訴訟をしましょう。少額訴訟は時間がかかる証拠調査が行われず、原則1日の審理で終了します。
経営者が気を付けるべきお金のトラブル:まとめ
資金繰りは経営の根幹です。資金繰りに失敗すると事業が軌道にのっていても倒産する可能性があります。売掛金や買掛金、手形などの仕組みを知った上で、しっかりと管理しなければなりません。顧客とのトラブルが資金繰りを悪化させることも珍しくありませんので、仕組みの把握とトラブルの対処法を把握しておきましょう。