リーガルテックと弁護士法72条の関係

近年、法律の世界にもテクノロジーの導入が進んでおり、いわゆるリーガルテック業界(ここでは法律と技術の融合という意味)の発展が著しくなっております。

テクノロジー化は法律業界に利便性をもたらしていますが、一方で、テクノロジー化に伴う問題点も多く見つかっています。そして、技術革新のスピードが非常に速いために、これに対する法律の整備は追いついていません。

そこで、リーガルテック業界と、NHKに関する政党でも問題となった弁護士法72条の関係についていくつかの事例をご紹介します。

弁護士法72条とは

第七十二条「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」

弁護士法72条は、弁護士でない者が弁護士の業務をする行為、いわゆる非弁行為を禁止しています。そして、これに違反した場合には、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金という刑罰が課されます(弁護士法 77 条 3 号)。

リーガルテックとの問題

ここで、リーガルテック業界との関係では、AIなどが法律業務に携わることが上述の非弁行為に該当するのではないかという問題が生じます。

弁護士に代わって、AIが法律事務をするということは、国民の権利や義務、そして生命や身体がAIに委ねられることになるので、これに対する規制が必要です。しかし、あまりに規制をしてしまうと、テクノロジーの進歩の点で他国から後れを取ることにもつながります。

そこで、現在の判例や法整備の状況から、いかなるリーガルテックのサービスがあり、法的にどのような問題点が潜んでいるのかを確認していきます。

契約書の作成について

契約書は、企業においては特に欠かせない法的な文書で、簡単なものから複雑なものまで様々です。たくさんの種類の契約書が抱えるリスクをすべて把握することは弁護士でない者には困難です。しかし、毎回弁護士に相談することも時間とお金がかかります。

雛形の提供サービス

そこで、求める契約書に対応したひな形の作成・販売をするサービスが存在しますが、これは弁護士法72条に違反するのでしょうか。

結論からいうと、原則として問題はないということになります。

2016年の法務省見解によると、「子会社の通常の業務に伴う契約について,法的問題点を調査検討の上,契約書や約款のひな形を提供し,子会社が作成したものをチェックし,契約条項や約款の一般的な解釈等,一般的な法的意見を述べること」は非弁行為に当たらないとされています。これは、あくまで親子会社関係の下での解釈になりますが、弁護士法77条の「法律事務」に当たるかを判断する際に重要となります。

(出典元:https://www.moj.go.jp/content/001185737.pdf

なお、契約書のひな形の作成と類似する事案として、解約通知書のひな形作成及びその送付をしていたことが非弁行為にあたりうるとした判例(東京地判平成 28 年 7 月 25 日)があります。もっとも、この事案では、契約書ではなく解約通知書であることと送付の代行までも行っていたこと、そして判例も違法とは明言していないことに注意が必要です。

AIレビューサービス

また、最近は契約書のAIレビューサービスなども増えてきていますが、これについては契約書のAIチェックサービスを提供するリーガルテック企業の弁護士から以下のような見解が出ています。

5 検討の結果、弁護士法72条に違反しないと判断した理由は何ですか?
その理由は多岐にわたりますが、第1の理由は、「他人性」が存在しないことです。弁護士法72条は他人の法律事件に関する法律事務の取り扱いを禁じております。したがって、自分の債権を自分で回収するような場合、すなわち自分自身の法律事務の取り扱いを規制するものではありません。
本サービスは、利用者の入力のみに基づいて、あらかじめ定められた結果を返すものです。したがって、独自に判断や鑑定などを提供しておりません。利用者が利用者自身の法律事務を行なうにあたり、その補助を行なっているだけとなります。したがって、本サービスは、自己の法律事務を取り扱うだけであるので、弁護士法72条に違反しないものと考えます。

引用元:GVA NDAチェック

特許チェックツール

弁護士法72条と似たような問題を抱える法律として、弁理士法75条があげられます。

弁理士法75条は、特許等の出願代理手続きやそれにかかわる鑑定等を弁理士以外の者がすることができない旨を定めています。

そうすると、その特許について、他の発明内容と類似性を判断するサービス等は同条に違反するのでしょうか。

実はこれは、ケースバイケースになります。

経済産業省の「グレーゾーン解消制度」に係る事業者からの紹介に対する回答では、「発明内容と類似文献の類似度を算出し、その結果である類似度を類似度が高い順にA~Dの4段階でランク付けするにとどま」ることから「法律的技術的な専門知識に基づいて具体的な事案につき判断を下したものとはいえず」、「鑑定」には該当しないとされました。

つまり、この場合は具体的な判断であったかということが重要になってくることになります。

(出典元:https://www.meti.go.jp/press/2018/03/20190329015/20190329015-1.pdf

まとめ

このように、リーガルテックは便利な反面、これまでの法律が想定していなかった問題点を抱えている可能性もあります。

この点、ユーザーとなる企業側もきちんと法的な問題がないかという点を確認し、利用を検討すべきでしょう。そのためには立法やガイドラインなどリーガルテックに関する情報を素早く入手し、いち早く対応できるように心がけるとともに、具体的な法的問題については弁護士にきちんと相談することが安全といえるでしょう。

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