損益計算書と貸借対照表の読み方

損益計算書と貸借対照表

投資家や経営者でなくても勤務している会社の経営状況や課題を知ることはとても重要なことです。

そのためには、決算報告書の内容を正しく理解することが必要ですが、自分には財務や会計の専門知識がないからと諦めている人も多いのではないでしょうか。

しかし、決算書は読み方のコツさえ理解すれば専門知識のない人でも容易に理解することができます。

決算書には、主に業績を把握できる「損益計算書」、財産を把握できる「貸借対照表」、お金の動きを把握できる「キャッシュ・フロー計算書」の3種類の書類がありますが、今回は特に重要な「損益計算書(PL)」と「貸借対照表(BS)」の読み方についてわかりやすく解説します。

損益計算書とは

損益計算書(PL:Profit and Loss Statement)とは、会社が1年間を通じてどれくらい儲けたのか、または損をしたのかをわかりやすく整理した表で、基本的な形式は次のようになります。

売上高1,000,000
売上原価500,000
売上総利益500,000
販売費及び一般管理費200,000
営業利益300,000
営業外収益20,000
営業外費用10,000
経常利益310,000
特別利益20,000
特別損失10,000
税引前当期純利益310,000
法人税等120,000
当期純利益190,000

実際の決算書の各項目はより細分化されていますが、基本的には「収益」「費用」「利益」の3つで構成され、一番上の「売上高」から順に費用や収益を足したり引いたりしています。

また、利益を5段階に分類することで、商品から得られる利益、事業から得られる利益、それ以外の利益、各種コストなどがクリアになるので、事業の強みや経営レベルの課題を読み取ることが容易になります。

損益計算書の「5段階の利益」

前項の表でわかるように、損益計算書には5段階の「利益」があります。それぞれの利益をわかりやすく図にすると次のようになります。

5段階の利益

第1段階:「売上総利益」= 売上高 – 売上原価

「売上原価」は、小売業であれば商品の仕入コスト、製造業であれば製造コストなどが主となります。

第2段階:「営業利益」= 売上総利益 -( 販売費及 + 一般管理費 )

「販売費及び一般管理費」は、販売に必要な営業経費、本社経費、租税公課、減価償却費などが含まれます。

第3段階:「経常利益」= 営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用

「営業外収益」には受取利息・受取配当金・有価証券利息・有価証券売却益など、「営業外費用」には支払利息・社債利息・有価証券売却損などが含まれます。

第4段階:「税引前当期純利益」= 経常利益 + 特別利益 – 特別損失

法人税等の課税対象となる利益。「特別利益」「特別損失」は臨時に発生した利益や損失で、土地や有価証券の売却益または売却損などを含みます。

第5段階:「当期純利益」= 税引前当期純利益 – 法人税等

会社の最終利益。「法人税等」には法人税・住民税・事業税が含まれます。

損益計算書のチェックポイント

損益計算書は1年間の会社の活動の成果を簡潔に表しており、チェックポイントがわかれば5段階に分類された「利益」から各段階の強みや弱みなどを容易に知ることができます。

「売上総利益で分かる、商品自体が生み出す利益

売上高に占める売上総利益の割合(売上総利益率)が大きいほど商品の付加価値が大きいことを意味し、逆に小さければ商品力が弱い、あるいは商品のコストが大きすぎることを示唆しています。

「営業利益」で分かる、事業活動が生み出す利益

売上高に占める営業利益の割合(営業利益率)が大きいほど収益力の高い事業であることを意味し、逆に小さければ販売力が弱い、あるいは販売経費や本社経費などが大きすぎることを示唆しています。

「経常利益」で分かる、会社の総合的な利益

売上高に占める経常利益の割合(経常利益率)が大きいほど会社の運営が順調であることを意味し、逆に小さければ事業の収益力が弱い、あるいは本業以外の経営に問題がある可能性を示唆しています。

「当期純利益」のマイナスは経営的に要注意!

当期純利益がプラスであれば経営上問題はありませんが、マイナス状態が続くと会社の経営悪化を意味し、何らかの改善策が必要となります。

貸借対照表とは

貸借対照表(BS:Balance Sheet)とは、決算日における会社の資産や負債などの財務状況を明らかにする表で、基本的な構造は次のようになります。

貸借対照表

損益計算書では会社の業績が順調に見えても、実際には多額の借金で運営しているかもしれません。貸借対照表は会社の経営が健全に行われているかどうかを知ることができる重要な資料です。

資産の部

資産の部は、会社が保有する資産を記載するところで、「流動資産」と「固定資産」に分かれています。

【流動資産】

流動資産は、現金化しやすい資産のことで、具体的には会社が保有する資産の中で1年以内に現金化できる現金・預金・売掛金・有価証券・棚卸資産・貸倒引当金などが含まれます。

【固定資産】

固定資産は事業にとって長期間に渡り必要とする資産で、現金化には1年以上の期間が必要です。「有形固定資産」としては土地・建物・機械装置・車両など、「無形固定資産」としては投資有価証券や長期貸付金などの他に特許権・のれん・ソフトウエアなどが含まれます。

負債の部

会社が保有する資産を入手した元手が自己資金なのか借入金なのかを表しているのが図の右側にある「負債の部」と「純資産の部」です。負債の部は返済が必要な借入金などが記載してあり「流動負債」「固定負債」に分かれます。

【流動負債】

流動負債とは、原則として決算から1年以内に返済の義務がある債務のことで、支払手形・買掛金・短期借入金・未払金などを含みます。

【固定負債】

固定負債は、支払期限が1年を超える債務のことで、長期借入金、社債、長期前受収益などが含まれます。

純資産の部

純資産は、資産から負債を差し引いた額、つまり会社が保有する資金で「自己資本」とも呼ばれ、株主からの出資等や会社の利益の蓄積が含まれています。純資産の中心は「株主資本」で、事業の元手となる「資本金」と「資本余剰金」、そして会社設立から蓄積してきた利益である「利益余剰金」から構成されています

貸借対照表のチェックポイント

貸借対照表は資産や負債といった会社の財政状態を簡潔に表している表で、事業とは別の財務面から会社の経営状況を知ることができます。

一見難しそうに見えますが、チェックポイントがわかれば会社の健全度や経営上のリスクなどを容易に読み取ることができます。

「自己資本比率」で分かる、会社の倒産リスク

総資産に占める純資産の割合(自己資本比率)が高いほど会社の財務状況は健全といえますが、逆に10%以下の場合には負債(借金)で運営していると考えられるので危険な状態にあります。

また、仮に自己資本比率が50%以上だとしても純資産のうち株主が出資した「資本金」や「資本余剰金」が大半で、会社が稼いだ「利益余剰金」の割合が少ない場合には財務状況が健全とは言えません

「流動比率」で分かる、会社の資金繰りの余裕

「流動比率」は「流動資産」÷「流動負債」×100で算出した比率で、「流動資産」が「流動負債」よりも多ければ「流動比率」は100%以上となります。

一般に「流動比率」の理想は200%、150%以上であれば短期的な支払い能力が高く、逆に100%を下回る場合には資金ショートのリスクが大きいといえます。

また、「流動資産」から実際には売れない可能性のある商品在庫「棚卸資産」を差し引いて計算した「当座比率」はさらに厳しく支払い能力を評価したものです。

「負債」が「資産」を超えると債務超過!

貸借対照表で「負債」が「資産」を超える状態を「債務超過」と言い、金融機関などからの融資が困難になり、上場企業の場合には上場廃止となる可能性が高まりますので要注意です。

損益計算書と貸借対照表の読み方:まとめ

会社の事業の業績をまとめた「損益計算書」と、財務状況をまとめた「貸借対照表」について基本的な構造や各用語の説明、そしてチェックポイントについて説明してきました。

「事業」と「財務」は会社の経営の両輪となるもので、どちらかが弱ければ継続的な健全経営や成長は難しいものとなるでしょう。

本記事を参考に「損益計算書」「貸借対照表」から自社の弱み・強み・リスクなどを読み取り、今後の成長へ向けた課題を洗い出してみてはいかがでしょうか。今まで気づかなかった改善点などが発見できるかも知れません。

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