注目のデジタル経理、今後の展望

デジタル経理

行政や企業のデジタル化が進む中、経理、会計、総務、人事などのバックオフィス部門では現在でも6割以上の企業が週の大半を出社して業務を行っているようです。

特に経理部門については、デジタル化の障害となっていた紙の経理書類の電子保存を認める電子帳簿保存法を1998年に施行し、経理部門のデジタル化を積極的に推進してきたはずなのですが、実際に実行しているのは15%弱にとどまっています。

その原因は電子帳簿保存法で規定するいくつかの条件にありましたが、2022年1月に施行される電子帳簿保存法の改正によって条件が大幅に緩和され、経理デジタル化のハードルが一気に低くなりました。

そこで、今回は急速な拡大が予想されるデジタル経理について、さまざまな視点で詳しく解説します。

電帳法の改正で経理のデジタル化が加速!?

電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)は、紙での保存が義務付けられていた国税関係の帳簿書類を一定の要件を満たせば電子データで保存することを認めた法律です。

ところが、電子データとして保存するための要件が厳しいために大手企業以外の実施は難しいという問題がありました。クラウド型経費精算システムを開発・販売するラクスが2021年6月に全国の経理担当者にオンラインで実施した調査(有効回答数911件)でも電子帳簿保存法に対応できていない企業は85.2%でした。

この問題を解決するために、帳簿書類を電子データで保存する際の要件を大幅に緩和する電子帳簿保存法の改正が行われ2022年4月1日に施行されると、経理のデジタルトランスフォーメイション(DX)が一気に加速するのではと期待されています。

リモートワークから見える経理デジタル化の現状

経理部門のデジタル化はリモートワークの実施状況からも見えてきます。 クラウド型決算プラットフォームを提供するブラックラインが、2021年5月に日本CFO協会の会員を対象として実施した「経理部門のDX推進にむけた実態と課題」に関する調査では、直近の決算で監査も含めてリモートワークでほぼ完了できた企業は20%に過ぎず、80%の企業において経理のデジタル化が遅れていることが見えて来ます。

経理部門のDX推進にむけた実態と課題」に関する調査
(出典:ブラックライン株式会社 「経理部門のDX推進にむけた実態と課題」に関する調査 2021.5)

デジタル経理実現を推進するクラウド会計ソフト

デジタル経理を実現するためには、「紙」の帳簿を廃止し全て電子化するとともに、経理業務システムの構築が必須となりますが、資金や人材が少ない中小企業にとっては簡単に実施できることではありません。

そこで注目されているのが「会計ソフト」ですが、特に電子帳簿保存法に対応しているクラウド型の会計ソフトはインターネット環境が整備されていれば簡単にデジタル経理が実現できます。

株式会社MM総研(東京都・港区)が2020年4月に個人事業主を対象に行った調査では、会計ソフトを利用しているのは33.9%で、その内21.3%がクラウド会計ソフトを利用しているのですが、2016年3月の9.2%と比べるとシェアは2.3倍に拡大しています。

クラウド会計ソフトの利用状況調査
(データの出典:MM総研 クラウド会計ソフトの利用状況調査 2020年4月末)

この傾向は世界的にも同様で、2021年7月7日にPrudourPrivate Limitedが発表した調査レポートによると、クラウド会計ソフトの世界市場は、2020年の2,682.9百万ドル(約2,924億円)から2030年には5,653.5百万ドル(約6,162億円)と年々拡大すると予測しています。

※1ドル=109円で計算)

会計ソフト市場はまだまだ拡大の余地があるので、電子帳簿保存法の改正を一つのキッカケとして、成長領域であり主戦場となっているクラウドベースの会計ソフトを中心に中小企業にもデジタル経理が広がると予想されています。

デジタル化による経理部門の新しい役割とは?

RPA(Robotic Process Automation)とは定型作業を自動化する機能のことですが、デジタル化とAI・RPAを組み合わせることによって経理業務の自動化が可能になります。

ロンドンを本拠とする世界4大会計事務所の一つで、世界最大級のコンサルティングファームであるPwCは、経理業務の自動化によって時間の短縮が可能な業務として、管理報告(短縮時間は最大40%)、財務会計(同27%)、与信管理(同23%)、一般会計(同23%)、請求(同23%)などをあげています。

30〜49% ファイナンスの自動化と行動変化により短縮できる時間の割合
(出典:The PwC Finance Benchmarking Report 2019-20)

そして、PwCは「デジタル時代における財務経理の新しい形」というレポートの中で、デジタル時代の経理部門がこれから進むべき道について次のように予測しています。

変化の著しいビジネス環境で、デジタル化の価値を実現するにあたり「アドバイザー」、「エネイブラー(後方支援)」、「オペレーター」として複数の役割を果たすことで、CFO(最高財務責任)は従来よりも戦略的な影響力を発揮するチャンスを迎えています。逆に、経営層や事業部門が要求する分析力、洞察力、牽引力を発揮できなければ、その存在価値は大きく失墜することでしょう。

予算やフォーキャストの策定、管理に長いリードタイムをかけたり、不毛な微調整に悩む時代は過去のものとなりました。ビジネスモデル全体をどのように変えるかを考えられるようなクリエイティブな将来予測力を身に着ける必要があります。今後、財務経理の領域の専門家たる財務経理部門による見通しやアプローチは、今日のアナリストやビジネスパートナーのそれよりも、むしろベンチャーキャピタリストに近いものになるでしょう。

(出典:PwC 「デジタル時代における財務経理の新しい形」)

デジタル化の課題は「レガシーシステム」

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」の中で、国内企業のデジタル化が遅れた場合、国際競争力が低下し2025年から年間で最大12兆円もの経済損失が発生する可能性があると指摘。これを「2025年の崖」という言葉で表現しています。

その原因は、複雑化し、老朽化した既存の基幹システム「レガシーシステム」が2025年まで残存すると、爆発的に増加するデータを活用しきれず、デジタル競争の敗者となる恐れがあると指摘。

具体的な懸念は、既存システムの知識があるIT人材の引退やサポート終了によって、システムの維持・継承が困難になることや、サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルやデータ滅失・流出等のリスクの高まりなどがあげられています。

しかし、同レポートでは2025年には21年以上稼働している「レガシーシステム」が全体の6割を占めると予測しており、各企業の基幹システム刷新への取り組みが大きなカギを握っていることが分かります。

まとめ/注目のデジタル経理、今後の展望

ここまで、注目を集めているデジタル経理について、次の5つの視点で解説してきました。

  1. 電帳簿法の改正で経理のデジタル化が加速!?
  2. リモートワークから見える経理デジタル化の現状
  3. デジタル経理実現を推進するクラウド会計ソフト
  4. デジタル化による経理部門の新しい役割とは?
  5. デジタル化の課題は「レガシーシステム」

経理のデジタル化は、関係法令の改正、AIやAPRの活用、クラウド会計ソフトなどの利用などによって着実に浸透しているように見えますが、大企業にとっては経産省が「2025年の崖」で指摘したレガシーシステムをどのように刷新できるのかが、大きなカギを握っています。

さらに、デジタル化に伴い経理部門の役割も定型作業中心から、今後は経営層をさまざまな角度からサポートする新しい役割を求められるという。

今、デジタル経理は大きなターニングポイントに立っていると言えるでしょう。

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