【会社設立関係者必見】絶対に知らなきゃいけない資本金10のルール

資本金10のルール

※本記事は「株式会社」を前提として作成したものです。

資本金とは、商売の元手になる財産で、会社設立時においては発起人が出資した財産のことを言います。

会社法 第445条(資本金の額及び準備金の額)

1.株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。

2.前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。

3.前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。

会社設立に際し、一番重要で悩ましいのは「資本金の額」ではないでしょうか。資本金は、事業の元手であり運転資金でもあり、また資本金の額によって各種法令での取り扱いが変わってきます。

そこで、資本金だけにフォーカスし「絶対に知らなきゃいけない資本金10のルール」をまとめましたので、会社設立関係者にはぜひ読んでいただきたいと思います。

資本三原則

会社法 第104条  株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする。

会社法では、株主の責任は出資金が限度とされているため、会社債権者が債権を回収する唯一の引き当ては会社の財産となります。そこで、商法の時代から資本制度を設け会社の財産を保護しています。

この「会社財産の保護」を実現するために資本三原則と言うものがあります。

資本充実の原則

資本金の額に相当する財産が実際に会社に拠出されなければならないという原則。

資本維持の原則

資本金の額に相当する財産が実際に会社に維持されなければならないという原則。

資本不変の原則

資本金の額は勝手に減少してはならないという原則。

しかし、2005年に成立した会社法は、起業の妨げになるとの理由などから最低資本制度を廃止し小額でも会社設立ができるようになったため、この資本三原則の実効性が揺らいでいるようです。

資本金は1円でも会社は設立できる

1991年の改正商法の施行で「最低資本金制度」が導入され、有限会社は300万円、株式会社は1000万円の資本金がないと設立できなくなりました。既存の会社も猶予期間内に最低資本金に満たない場合は、他の会社形態に変更するか解散の道を選ばなくてはなりませんでした。

ところが、ITをはじめとする新しい技術の普及で様々なビジネスチャンスが生まれ、資本金のハードルを下げ起業を促進しようと、2006年に施行された「会社法」では、最低資本金制度が廃止され、現在は資本金が1円でも会社が設立できるようになりました。

資本金1円の隠れたメリット

会社の設立には、定款の認証手数料、定款の謄本手数料、登録免許税などの法定費用だけでも20万円以上必要です。そのほかに、会社の実印や司法書士費用なども必要になってきますから、25〜30万円くらいの支出を見込んでおかなくてはなりませんし、当然事業の運資金も必要です。

資本金1円で会社を設立した場合は、銀行からの借入れは無理ですから社長や他の取締役などの個人からの借金で不足分を補うことになりますが、それなら資本金を増額する方が合理的ではないでしょうか。

しかし、次項で述べますが「出資したお金」は戻ってきませんが、「貸したお金」は戻ってきます。これは、あまり指摘されていませんが、小額の資本金で会社を設立するメリットの一つかも知れません。

資本金は返さなくて良い

例えば、株主の一人が会社の事業に興味が無くなったので出資金の返還を要求しても返す必要はありません。会社は株主に対し出資金返還の義務はありませんから、株主は譲渡制限がなければ、保有の株式を第三者に譲渡して換金するしかありません。

ただし、会社の合併、M&A、譲渡資産額が20%を超える事業譲渡などに対し株主総会の決議で反対した株主の「反対株主の株式買取請求権」や、単元未満株式を有する株主の「単元未満株式の買取請求権」は認められています。

資本金の適正金額はない

資本金の適正金額と言うものはありませんが、資本金の本来の目的は事業の元手ですから、理想は利益が出るまでの期間に必要とされる運転資金相当額です 。少なくとも、会社設立後に金融機関やベンチャーキャピタルなどから資金調達できるだけの「判断材料」が揃うまでは持ちこたえられる資本金、または取締役などからの借入金は必要でしょう。

少なくとも、会社設立後に金融機関やベンチャーキャピタルなどから資金調達できるだけの「判断材料」が揃うまでは持ちこたえられる資本金、または取締役などからの借入金は必要でしょう。

資本金は使い切って良い

資本金は銀行に預けて手をつけずに保有しなければならない・・と思っている方は以外と多くいます。しかし、資本金は事業の元手ですから必要であれば全部使ってしまっても良いのです。

ただし、資本金を使うことによって会社の資産が増えていなければ、何の意味もありませんが、事業の成功に必要な、不動産や有価証券、技術・ノウハウ、知的財産などに置き換わっているのであれば無駄な出費ではありません。

資本金の額は減らない

前項で資本金は使い切って良いと書きましたが、それでも「資本金の額」は減らないのです。不思議に思うかも知れませんが、お金を意味する「資本金」が無くなっても株主が会社に出資した財産の額、つまり「資本金の額」は変わることはありません。

もう一度、会社法第445条第1項を見てみましょう。

第445条(資本金の額及び準備金の額)

1.株式会社の資本金の額は、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。

つまり、資本金の額は会社設立などで株主から集めた財産の額であり、現時点で持っているお金の額ではないのです。

資本金が0でも倒産はしない

いくら会社の資産が増えても、資本金が0になってしまったら会社は倒産する考える方もいるかも知れませんが、資金繰りができていれば巨大赤字を抱える会社でも倒産はしません。

逆に、いくら業績が良くても資金が枯渇すると、会社は社員の給与や取引先への支払いができなくなり倒産してしまいます。 ですから、経営者は資金繰り計画を作成し資金が無くなる前に、
①金融機関などから融資を受ける
②新たな出資を募る
などして資金調達を行わなければなりません。

資本金1000万円未満で会社を設立すると利点が多い

資本金を1,000万円未満で設立された会社には、最長2年間の消費税が免除されます。

それに加えて、青色申告していれば資本金3,000万以下の法人に適用される対象資産の購入金額やリース金額の7%の税金免除、資本金1億円以下の法人に適用される軽減税率や、交際費の経費計上などの利点があります。

資本金の額で優遇制度の適用が決まる

税法上は資本金の額によって会社を分類し、中小企業に該当する会社に対し優遇制度を設けているので、売上が100億円を越える会社でも資本金が1億円以下であれば様々な優遇制度が適用され、逆に売上が1000万円に満たない会社でも資本金が1億円を超える場合は、そのような優遇制度は適用されません。

中小企業基本法、会社法、法人税法、租税特別措置法における資本金による企業の分類は次のようになっています。

適用法律大企業中小企業
中小企業基本法   3億円以下
※卸売業:1億円以下
※サービス業:5千万円以下
※小売業:5千万円以下
会社法5億円以上  
法人税法  1億円以下※①
租税特別措置法  1億円以下※②

※① 中小法人等:資本金5億円以上の大法人の100%子会社は除く
※② 中小企業者:同一の大規模法人(資本金1億円超など)から2分の1以上を出資されている法人、2社以上の大規模法人からあわせて3分の2以上を出資されている法人は除く

知らなきゃいけない資本金10のルール:まとめ

資本金は多ければ多い方が安心と感じる方もいると思いますが、必ずしもそうではありません。本記事を参考に、事業の元手になる「資本金」と、各種優遇制度の適用の可否を決める「資本金の額」について良く理解することで、設立後の会社経営にプラスになる選択をしてください。

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