アプラスフィナンシャルの投資用マンションローンに関する第三者委員会報告書の概要

アプラスフィナンシャル

この記事では、株式会社アプラスフィナンシャルの投資用マンションローンに関する不正問題を事例に、第三者委員会の活動スケジュールや問題究明に向けた取り組みを解説します。

問題の背景

本件は、信販会社であるアプラスフィナンシャルが、住宅ローン仲介会社のアルヒ株式会社と提携して行った投資用マンションローンの審査において、書類の改ざんや不適切な不動産評価を行った問題です。

本件における第三者委員会の役割と委員選定のポイント

本件の第三者委員会の役割と委員選定

本件を調査した第三者委員会は、本件の事実調査や原因究明、コンプライアンス体制及び内部管理体制の調査、再発防止策の提言といった役割を担いました。

なお実際には「特別調査委員会」という名称で調査が進められましたが、5名の委員のうち3名が同社と利害関係を有しない委員で構成されていることから、今回は「第三者委員会」という名称で解説を進めます。本件の第三者委員会は、下記5名で構成されました。

  • 委員長:武井 洋一 (弁護士 明哲綜合法律事務所)
  •  委員:内川 治哉 (弁護士 アプラスフィナンシャル独立社外取締役)
  •  委員:保木野 秀明 (弁護士 アプラスフィナンシャル独立社外監査役)
  •  委員:笠原 二郎 (アプラスフィナンシャル常勤社外監査役)
  •  委員:安川 明彦 (アプラス監査役)

第三者委員会の活動スケジュール

次に、本件問題の発覚から第三者委員会による調査が完了するまでの経緯を見ていきましょう。

同社は、従来より投資用マンションローンの販売を行っていた会社です。2020年1月14日以降、その投資用マンションローンについて、審査書類の改ざんや不自然な不動産評価があるという報道が行われました。

この報道を受けて同社では、2020年1月31日に特別調査委員会の設置を決定し、同社の代表取締役である清水氏を委員長として調査活動を進めました。その後同社は、より透明性の高い調査を行う目的で、同年2月6日より利害関係を有しない社外の弁護士等にメンバーを変更し、調査を行いました。

調査はおよそ2ヶ月間行われ、同年4月1日に調査報告書が公表されるに至りました。事件の発覚から調査書が提出されるまでの経緯は下記になります。

  • 2020年1月14日 本件の不正が報道され始める
  • 2020年1月31日 社内の取締役等で構成された特別調査委員会(第三者委員会)が発足
  • 2020年2月6日 利害関係を有しない弁護士等がメンバーに参画
  • 2020年4月1日 調査報告書が公表される

本件の調査のポイント

第三者委員会による調査は、役職員へのインタビューや資料の分析、デジタルフォレジック、社内アンケートなどの方法で行われました。また、顧客に対しても収入証明書の改ざんの有無等に関する情報提供を呼びかけて、詳しい調査分析に取り組んだとのことです。

第三者委員会によって何がわかったのか

第三者委員会の調査により判明した事項

第三者委員会の調査により、「収入証明書の改ざん」と「不動産の評価問題」に関する詳しい実態が明らかとなりました。

まず収入証明書の改ざんについては、顧客が提出した収入証明書の金額が不正に増額されていた案件が、合計で24件も見つかったとのことです。次に不動産の評価については、価格審査の過程で評価が複数存在し、初回の評価よりも2回目の評価の方が値段が高くなっていたことが判明しました。

つまり、購入者の収入を実際よりも高くしつつ不動産の評価も高くする方法で、購入者は本来の相場よりも高い値段でマンションを買わされて、過剰な融資を受けていたわけです。マンションの購入者は、一定の家賃を保証してもらえるサブリース契約を交わしていました。

ですが、不正な方法で行われた投資用マンションローンであるため、途中で家賃を減額されるなどして、ローンの返済に苦しんでいるとのことです。

第三者委員会の調査によって生じた費用・影響

2020年4月時点では、同社の調査によって生じた費用は明らかとなっていません。また同社は、本件およびその調査の影響で、業績が悪化することはないとしています。しかし顧客に著しく不利益を被らせた問題であった点を考慮すると、今後業績に悪影響が及ぶ可能性は十分考えられます。

なお株価については、本件問題が報道され始めた2020年1月14日の終値が97円、その次の日が94円だったことを踏まえると、若干なりとも社会的な信用という面では悪影響が生じたと言えます。

根本的な原因

調査を行った第三者委員会は、本件の根本的な原因として下記を挙げています。

  • 予算達成のプレッシャーがあったこと
  • 内部監査が十分に行われていなかったこと
  • 顧客保護の観点が不足していたこと

第三者委員会による調査書では、同社の直接的な関与は認められなかったとしています。しかし内部監査や顧客保護の観点が不足してために、意図せずに今回の悪質な問題に発展したと考えられます。

アプラスフィナンシャルの投資用マンションローンに関する第三者委員会報告書:まとめ

本件は顧客が著しい不利益を被っている点で、とても悪質な不祥事であったといえます。しかし調査書では、不正を行った人物やタイミングは特定されていません。顧客の利害に直接関係する問題だからこそ、第三者委員会には原因究明を徹底的に行うことが求められるでしょう。

参考文献

特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ 株式会社 アプラスフィナンシャル
(株)アプラスフィナンシャル 株式/株価 – Yahoo!ファイナンス
アプラス・アルヒ不正融資か 投資不動産 業者「書類改ざん」証言 東京新聞

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