タマホーム株式会社の優れた第三者委員会報告書

タマホーム株式会社の優れた第三者委員会報告書

第三者委員会が作成した調査報告書の中でも、特に優れたものは「優れた調査報告書」として格付け委員会から表彰されています。今回の記事では、表彰されたものの中から、タマホーム株式会社の調査報告書をくわしく解説します。

事件の概要

今回表彰された調査報告書は、タマホーム株式会社の連結子会社における、不適切な取引に関するものです。

具体的には、連結子会社のジャパンウッドにおいて、売り上げの計上や代金の回収に関して不適切な会計処理が発覚し問題となりました。

本件における第三者委員会の役割と委員選定のポイント

本件の第三者委員会の役割と委員選定

本件を調査した第三者委員会は、「本件取引の事実認定」、「問題の背景及び原因の特定」、「内部管理体制の調査」、「再発防止に関する提言」という役割を担いました。

第三者委員会は、以下4名の弁護士で構成されました。

  • 委員長:中村 直人(弁護士:中村・角田・松本法律事務所)
  • 委員:松本 真輔(弁護士:中村・角田・松本法律事務所)
  • 委員:山田 和彦(弁護士:中村・角田・松本法律事務所)
  • 委員:後藤 晃輔(弁護士:中村・角田・松本法律事務所)

第三者委員会の活動スケジュール

第三者委員会は、本件の説明責任をステークホルダーや取引先に果たす目的で、2013年11月15日に発足しました。

調査はおよそ3ヶ月間に渡って行われ、2014年2月7日に調査報告書が提出されました。タマホームは、その3日後の2月10日に調査報告書を公表しました。

第三者委員会の発足から調査報告書が公表されるまでのスケジュールは、下記になります。

  • 2013年11月15日 第三者委員会の発足
  • 2014年2月7日 第三者委員会による調査報告書の提出
  • 2014年2月10日 調査報告書の公表

本件の調査方法

本件で第三者委員会は、ジャパンウッドおよび親会社であるタマホームの役職員からのヒアリングや、パソコン・電子メールのデータ調査、取引に関する書類の調査により、事実の解明に努めました。

調査報告書で判明した事項

第三者委員会の調査で何が分かったのか

調査報告書では、本件における具体的な問題点が明らかにされています。

もっとも大きな問題点は、本来工事が終わっていないにもかかわらず、帳簿上に売り上げを計上していたことです。柔軟な対応が認められるため一概には言えないものの、日本の会計ルールに反する可能性が高いです。

他にも調査報告書では、主に下記の事実が問題点として指摘されています。

  • ジャパンウッドの社員でない人物が、同社名義で契約書を作成していたこと
  • 工事の遅延案件が多数存在していたこと
  • 従業員の二重在籍
  • 営業担当者が顧客を訪問して集金を行なっていたこと
  • 業務上の資金のやり取りで従業員の個人口座を利用していたこと
  • 完工のタイミングについてジャパンウッド社が確認を怠っていたこと

第三者委員会の調査とその影響で生じた費用

第三者委員会の調査で生じた費用は明らかになっていないものの、本件によって生じた四半期連結財務諸表(平成26年5月期)の影響額を公表しています。

タマホーム株式会社が公表しているデータによると、訂正前と比べて売上高は1億9,600万円のマイナスになったとのことです。また、営業利益や経常利益、四半期純利益、純資産についてはそれぞれ1,400万円のマイナスとなりました。

また、本件による影響はタマホームの株価にも影響を与えました。第三者委員会の調査報告書が公表された当日(2月10日)の終値は895円でしたが、数日後の2月17日には終値が840円まで下落しました。

大幅な下落でないため、一概に本件問題が原因となっているとは言えません。ですが、タイミングを考えると、子会社の不正会計は多少なりとも同社の業績に悪影響を与えたと考えられます。

単なる会計不正ではなく、工事の遅延をはじめとして複数の問題が浮き彫りとなったため、社会的な信頼が落ちたのだと推測されます。

本件問題の根本的な原因

第三者委員会の公表している調査報告書を読み解くと、本件の根本的な原因は「タマホームと子会社であるジャパンウッドの管理体制の不備」であると言えます。

タマホームの玉木社長については、本件取引が行われた事業について、運転資金の使途が不明である点や事業に必要な能力を持った人材がいないにもかかわらず、事業計画に疑問を持たなかったことが問題として指摘されています。

一方でジャパンウッドの前代表取締役については、当該事業に関して内部管理体制を構築しないまま実際の業務を現場に任せていたことや、取締役会の事前の承認を経ずに業務を執行していたことが指摘されています。

いずれにせよ、経営陣を中心とした全社的な管理体制の不備・甘さが本件問題を招いたと言えるでしょう。

優れた調査報告書に選ばれた理由

本件に関する調査報告書は、第三者委員会報告書格付け委員会により高い評価を受けました。その具体的な理由として、当報告書を実際に評価した委員は以下の点を述べています。

  • タマホームおよび子会社の取締役の責任を明確に述べている点
  • 現場のみならず内部管理体制にまで深く踏み込んだ分析を行っている点
  • グループ全体のコンプライアンス体制から、抜本的に改革する防止策を提言している点
  • 当事者である同社から十分な協力を得られない中で事実の解明に努めようとした点

まとめると、同社・子会社の取締役の責任に関して明確にしつつ、内部管理体制にまで深く踏み込んだ上で、原因の究明や再発防止策の提言を行っている点が高く評価されたと言えます。

タマホーム株式会社の優れた第三者委員会報告書 :まとめ

本来第三者委員会には、第三者の立場から公平な調査・意見を行うことが求められています。ですが実際には、経営陣の責任や内部体制にまで深く切り込んだ調査が行われないケースも少なくありません。

そんな中でタマホームの事例に関する調査報告書では、公平な立場から経営陣や内部管理体制にまで深く切り込んだことが伺えます。公平性や具体性に富んでいたことが、今回の高評価につながったと考えられます。

【参考文献】
優れた第三者委員会報告書の表彰について 優れた第三者委員会報告書表彰委員会
第三者委員会からの調査報告書の受領に関するお知らせ タマホーム株式会社
四半期報告書の訂正報告書の提出及び四半期決算短信(訂正版)の公表に関するお知らせ タマホーム株式会社
タマホーム(株)【1419】:株式/株価 – Yahoo!ファイナンス

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