改正著作権法の変わったポイントとは?
- 2021/3/29
- 法令コラム
2020年10月および2021年1月より改正著作権法が施行されています。今回の改正著作権法では、特に海賊版サイト対策に焦点を合わせた変更が大規模に行われました。
具体的には、海賊版サイト対策として「リーチサイト対策」と「ダウンロード違法化」という2つの改正が行われました。今回の記事では、そんな2つの改正に関する具体的な概要や、改正著作権法に残された課題をご説明します。
リーチサイトの運営や違法コンテンツへのリンク掲載が処罰の対象に
まず2020年10月に先行して施行された改正案では、リーチサイトの運営や違法コンテンツへのリンク掲載が処罰の対象となりました。リーチサイトとは、著作権を侵害するコンテンツへの誘導を図っているウェブサイトやアプリを指します。
かねてよりリーチサイトは、アクセス数の多さから著作権の侵害を助長していると指摘されていました。そこで今回の改正著作権法にて、リーチサイトの運営および違法コンテンツへのリンクによる誘導が違法となったわけです。
改正著作権法では、リンクの提供者やサイトの運営者に対して、以下の刑事罰が定められました。
- リンク提供者:3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科も可能)
- サイト運営者:5年以下の懲役または500万円以下の罰金(併科も可能)
またリンクの提供者に対しては、民事措置として差止請求や損害賠償請求が可能となっています。
多くの人にとって、著作権法に反するコンテンツを利用するきっかけとなっていたリーチサイト。そんなリーチサイトが取り締まりの対象となったことで、海賊版サイトの被害を大きく減らす効果が期待できます。
著作権を侵害しているコンテンツのダウンロードが違法化
2021年1月からは、違法コンテンツをダウンロードする行為について、たとえ私的利用が目的でも違法となりました。従来は音楽と映像のみが対象だったのが、今回の改正著作権法によって漫画を含む著作物全般に範囲が拡大されました。
ただし、国民の情報収集等を過度に萎縮させないという目的で、以下のダウンロードに該当する場合には処罰の対象外となっています。
- 違法にアップロードされたことを知らなかった
- 漫画の1コマ~数コマなど「軽微なもの」
- 二次創作やパロディ
- 著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある
また、刑事罰(2年以下の懲役または200万円以下の罰金)に関しては、正規版が有償で提供されている著作物であり、かつ反復・継続してダウンロードを行っているケースのみ適用となります。
上記のとおり、1月から施行されている著作権法の改正内容は「海賊版サイトを利用する側を取り締まる」という側面が強いです。ただし、自宅でのダウンロードをすべて取り締まることは現実的に厳しいため、あくまで違法な著作物の利用に対する抑止効果を狙った改正と言われています。
以前に映像および音楽の違法ダウンロードが規制された際には、多くの人が違法ダウンロードをやめたという調査データがあります。そのため、今回の改正著作権法が施行されたことで、漫画などの違法ダウンロード件数も大きく減少すると期待できます。
改正著作権法に残された課題と対策
最後に、改正著作権法に残されている課題と、民間企業が取り組んでいる対策をご紹介します。
改正著作権法の課題
今回施行された改正著作権法には、「サイトのサーバーが海外に置かれている場合に対処・処罰しにくい」という課題が残っています。
日本における法律の効力は、基本的に国内でしか通じません。そのため、サーバーが外国にある場合は直接取り締まることができません。また、サーバー運営者が開示に応じない場合が多いため、海賊版サイトやリーチサイトの運営者を特定することも難しいです。
海賊版サイトの被害を根本的に食い止めるには、海外にサーバーを置く運営者の特定や処罰が求められます。そのためには、著作権法の改正だけでなく外国政府の協力なども必要となってくるでしょう。
民間企業が取り組んでいる対策
外国政府との協力は、実現すれば効果絶大ですが容易ではありません。そこで民間企業では海賊版サイトの被害を減らすために、ホワイトハッカーとの連携を進める形で対策し始めています。
具体的には、高度な技術力や国際的な情報網を持つハッカーを起用し、通常では見つけにくい運営者の情報や犯罪の証拠を集めるとのことです。ハッカーによって運営者の情報や証拠が集まれば、告訴による摘発や損害賠償請求といった措置が可能となります。
改正著作権法だけでは海賊版サイトの被害を食い止めるのは困難ですが、民間企業やホワイトハッカーが積極的に連携すれば、根本的な部分から問題を解決できるかもしれません。
改正著作権法の変わったポイントとは?:まとめ
改正著作権法の変わったポイントは、「リーチサイトの取り締まり」と「利用者への抑止効果」という2点に要約できます。
リーチサイトの減少や利用者の減少により、海賊版サイトの被害はある程度減少すると考えられます。ただし海外にサーバーを置くサイト運営者は取り締まることが困難なので、民間企業やハッカーが連携する方向性で対処する必要があるでしょう。
※参考
著作権法が改正された…何が変わったの? 日本経済新聞
海賊版対策でホワイトハッカーと連携 日本経済新聞
著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律の概要 文部科学省