過労死の基準は、残業が月80時間!36協定の上限時間も月45時間
- 2020/2/28
- 法令コラム
近年問題となっている過労死ですが、過労死であると判定される基準があることをご存知でしょうか?今回の記事では、過労死の基準についてくわしく解説します。
過労死とは
まず最初に、過労死の定義について確認しましょう。
厚生労働省の定義によると、過労死とは「業務における過重な負荷による脳・心臓疾患や業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする死亡」を意味します。
過労死の最たる要因と言われているのが、「長時間にわたる過重な労働」です。医学的な観点でも、長時間の過重労働と脳・心臓疾患との関係性が証明されています。また長時間労働が精神障害を引き起こし、正常な判断力や認識能力を失うことで自殺に至ることも分かっています。
以上のように、長時間労働は身体的・精神的に大きなダメージを与える要因となります。そのため厚生労働省や36協定では、過労死の基準や時間外労働の上限を設定し、過度な長時間労働の防止に努めています。
参考:過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ 厚生労働省
厚生労働省が定義する過労死の基準(過労死ライン)
まず初めに、厚生労働省が定義する過労死の基準(いわゆる「過労死ライン」)を確認しましょう。厚生労働省によると、過労死の基準は下記の2つです。
1ヶ月間の残業時間が100時間超え
1つ目の過労死ラインは、「死亡前の1ヶ月間の残業時間が100時間超」というものです。この根拠は、1ヶ月間に100時間を超える残業を行なうと、脳や心臓疾患を発症し死亡するリスクが高いと認められるためです。
2〜6ヶ月間の平均残業時間が月80時間超え
2つ目の過労死の基準は、「死亡前の2〜6ヶ月間の平均残業時間が月80時間超」というものです。こちらについても、死亡前の2〜6ヶ月間の平均残業時間が月80時間を超えていると、脳や心臓疾患を発症し死亡するリスクが高いという判断基準に基づいています。
過労死の基準に関する例
上記2つが厚生労働省の定める過労死の基準であり、どちらかに該当すれば基本的には過労死であると認定されます。
たとえば死亡日から1ヶ月前〜6ヶ月前の残業時間が下記の通りであるとします。
- 1ヶ月前:10時間
- 2ヶ月前:70時間
- 3ヶ月前:90時間
- 4ヶ月前:40時間
- 5ヶ月前:120時間
- 6ヶ月前:85時間
1ヶ月間の残業時間は10時間であるため、一見すると過労死であるとは考えられません。しかし2ヶ月前〜6ヶ月前の平均残業時間は月80時間を超えています。そのため、このケースは過労死であると判断されるのです。
残業が常態化している企業はもちろん、ある一定期間のみ忙しい業種でも過労死認定される可能性が高いと言えます。
36協定で定めている時間外労働の上限
厚生労働省が定義する過労死の基準とは別に、36協定では時間外労働の上限を設定しています。
36協定とは
36協定とは、法定労働時間を超えて労働者に時間外労働を行わせる場合に、労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者と締結する協定です。労働基準法第36条に基づいているため、36協定と呼ばれています。
36協定では、「時間外労働を行う業務の種類」や「1日、1か月、1年あたりの時間外労働の上限」などを決める必要があります。この協定を締結せずに従業員に残業を行わせると、労働基準法の違反に問われて、罰金刑や懲役刑を課されるおそれがあります。
なお36協定を従業員と締結した場合は、労働基準監督署長への届出も必要となるので忘れずに行いましょう。
36協定では時間外労働の上限を月45時間までとしている
「36協定さえ締結すれば、いくらでも従業員に残業させることができるのでは」と思う方もいるかもしれません。
しかし2018年6月の労働基準法改正により、36協定で定める時間外労働に罰則付きの上限が設定されました。具体的には、月45時間、年360時間が残業の上限となり、臨時的で特別な事情がなければ超えることはできません。
なお臨時的で特別な事情があるケースでも、先ほどご紹介した厚生労働省の基準(2〜6ヶ月平均80時間または1ヶ月で100時間)を超えることはできないとされています。またこのケースでは、月45時間を超えることができるのは年間6ヶ月までとなります。
参考:36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針 厚生労働省
過労死の基準:まとめ
従業員を雇用する際には、厚生労働省が設定している過労死の基準を超える時間外労働は絶対に行わせてはいけません。また、36協定で規定する「月45時間」という残業時間の上限も、法令遵守の観点から守る必要があります。
人手不足に悩む中小企業にとっては、厚生労働省や36協定の基準は少々厳しいと思えるかもしれません。しかし従業員の過労死を防止するためや、労働基準法の順守を徹底するためにも、しっかりと基準を守る必要があるでしょう。