少年鑑別所と少年院の違いについて
- 2021/6/7
- 法律Q&A
未成年の子供が犯罪を起こすと、少年鑑別所または少年院に送致される可能性があります。一見すると似ているものの、少年鑑別所と少年院は送致される目的や期間、過ごし方などが大きく異なります。
今回の記事では、そんな少年鑑別所と少年院の違いを解説します。
少年鑑別所とは
はじめに、少年鑑別所がどのような施設かを解説します。
少年鑑別所の目的
少年鑑別所とは、下記3つの業務を果たすことを目的に設立された法務省所管の施設です。
- 家庭裁判所の求めに応じて、鑑別対象者の鑑別を行う
- 少年の健全な育成のための支援を含む観護処遇を行う
- 地域社会における非行および犯罪の防止に関する援助を行う
つまり、犯罪を犯した少年について、「鑑別」と呼ばれる作業を行なったり、社会復帰するための支援や犯罪を行わないための援助を行うわけです。
「鑑別」とは
鑑別とは、「医学や心理学、教育学、社会学などの専門的知識や技術を駆使して、非行に走った少年の資質や非行の原因となった環境上の問題を明らかにし、資質や原因を改善するための指針を示すこと」です。簡単に言うと、問題を起こした原因を専門的な見地から分析し、二度と非行に走らないように対策を考えることです。
具体的には、担当する専門家による面接や行動観察、心理テストにより、鑑別が行われます。鑑別の結果は、後ほど説明する少年審判での判断材料や、少年院に入所した際の処置指針案の作成に活用されます。
少年鑑別所に送致されるタイミング・期間
少年が犯罪を犯してから少年鑑別所に送致までの流れは以下の通りです。
- 警察による逮捕
- 検察への送致
- 留置所での勾留
- 家庭裁判所による観護措置の決定
- 少年鑑別所への送致(観護送致)
つまり、家庭裁判所によって観護措置が必要と判断されたタイミングで、少年鑑別所への送致が行われるわけです。
少年鑑別所に滞在する期間は、一般的に4週間(1ヶ月)と言われています。ただし、死刑や懲役刑などに該当する事件の場合には、さらに期間が延長されるケースもあります。
少年鑑別所での生活
少年鑑別所は、あくまで原因究明や改善指針の決定を目的とした施設であり、少年の更生が目的ではありません。そのため、少年院と比べると比較的自由に生活できます。勉強や読書、運動の時間が設けられているため、窮屈な生活を強いられることはありません。
ただし約1ヶ月にわたって拘束されるため、場合によっては受験などに支障をきたす恐れがあります。不利益を被ると考えた方の中には、観護措置に対して異議申し立てを行い、少年鑑別所からの釈放を求めるケースもあります。
参考:少年鑑別所 法務省
少年院とは
次に、少年院がどのような施設かをご説明します。
少年院の目的
少年院とは、家庭裁判所から保護処分が下されて送致された少年に対して、健全な育成を図ることを目的に、矯正教育(更生)や社会復帰支援などの業務を行う法務省所管の施設です。
少年院では、入所してきた少年一人ひとりの特性や家庭裁判所・少年鑑別所からの情報や意見を参考にし、個人別の矯正教育計画を作成します。少年院での矯正教育は、この計画に基づいて行われます。
「少年審判」とは
少年院には、少年審判によって「少年院送致」の判断が下された場合に入所します。
少年審判とは、犯罪を犯した少年について、犯罪内容や各少年の抱える問題性などを考慮した上で、どのような処置を行うかを決める手続きです。簡単に言うと、大人の犯罪者における裁判のようなものです。
少年裁判では、主に下記の処置が下されます。
- 不処分
- 保護観察
- 検察官送致
- 児童相談所送致
- 児童自立支援施設送致
- 少年院送致
ふたたび非行を犯すおそれが強く、社会内での更生が困難であると判断された場合に、少年院送致の決定が下されます。
少年院に送致されるタイミング・期間
少年院に送致されるのは、少年鑑別所への入所や少年審判など、あらゆる手続きを経た後のタイミングです。また、少年院に滞在する期間は平均1年間と、少年鑑別所と比べると非常に長いです。
少年院での生活
少年院は、再犯の恐れが強く社会復帰が難しい少年に対して、矯正を行うための施設です。そのため、比較的自由な少年鑑別所とは異なり、少年院での生活にはほとんど自由がありません。
外出や外泊が原則許可されないのはもちろん、厳しい生活指導により規律の遵守を強いられるため、人によっては息苦しい生活となるでしょう。
参考:少年院 法務省
少年鑑別所と少年院の違いについて:まとめ
少年鑑別所と少年院の違いをまとめると次のとおりです。
少年鑑別所 | 少年院 | |
目的 | 鑑別と指導方針の決定 | 矯正と社会復帰 |
送致のタイミング | 少年審判の前 | 少年審判の後 |
入所期間 | およそ4週間 | およそ1年 |
生活の自由度 | 高い | 低い |
上記の表から分かる通り、少年鑑別所と少年院にはあらゆる点に違いがあります。やや語弊はあるものの、特に環境や性格に問題がある少年や犯罪自体が重いケースを除けば、少年院への送致はないと言えるでしょう。