事業譲渡とは?メリットとデメリット・会社分割との違いを解説

事業譲渡とは?メリットとデメリット・会社分割との違いを解説

企業戦略のひとつに「事業譲渡」という手法があります。事業譲渡とは、会社の事業のうち、不要と考えられる部門を他企業に売却をすることで、企業の生き残りを図るものです。この記事では、事業譲渡には、どのようなメリットとデメリットがあるのかを探るとともに、類似の手法である「会社分割」との違いについても解説していきます。

事業譲渡とは

事業譲渡とは、会社の事業の一部、あるいはすべてを他社に譲渡する手法です。この場合の「事業」とは、事業目的を達成するための組織的財産を指しています。

具体的には、「有形の不動産」「債権・債務」「特許権などの無形財産」「業務のノウハウ」「取引先との関係」「人材」「ブランド」といったものを包括した財産です。

事業譲渡の手続きは、売手と買手双方の条件が一致すれば、基本合意契約と秘密保持契約を締結し、買手の買収監査を経て問題がなければ最終契約書を締結した後に、移転手続き及び対価の支払いを行います。対価は基本的に現金のみとなります。

ただし、買手にとっては、この後の手続きが非常に煩雑なために、多くの手間と時間を要することになります。引き継いだ資産の名義変更や移転登記を始め、従業員との雇用契約や取引先との再契約を行います。また許認可の再取得も必要です。さらに期間をまたがる売上債権や買掛債務の処理などを行うことになるため、処理が完了するまでに、6カ月から1年の期間を要します。

会社分割との違い

「事業譲渡」と類似した手法に「会社分割」があります。会社分割とは、会社を事業ごと分割して、資産と負債を包括的に承継させるものです。事業を承継する主体が既存の会社であれば「吸収分割」、新たに設立した会社であれば「新設分割」と呼ばれます。

会社分割はグループ企業内で再編することでメリットが生じることから、グループ企業内でよく用いられる手法です。

ここでは、事業譲渡と会社分割との違いについて解説をしていきます。

従業員

事業譲渡では、譲渡する事業資産は個別に承継するので、買手は、従業員の雇用契約を個別に行うことになります。

会社分割の場合は、分割する事業を包括的に承継するので個別の契約は不要です。ただし、買手は、労働組合と従業員への通知、労働組合や従業員との協議といった労働者保護手続きを行う必要があります。

債権者の事前承諾と保護

事業譲渡は、債権者から個別に事前承諾を得る必要があります。このため、債権者が多い企業では手続きの負担が大きくなります。ただし、個別に承諾を得ているために買手は債権者保護手続きを要しません。

会社分割は、事業資産を包括的に承継することから、債権者から個別に事前承諾を得ることは不要ですが、買手は債権者保護手続きを行う必要があります。

許認可の引き継ぎ

事業譲渡では、許認可が引き継がれないので買手は別途許認可を取得する必要があります。

会社分割の場合は、一部の例外を除き、原則、許認可が引き継がれるので、買手が改めて手続きを行う必要はありません。

簿外債務の引き継ぎ

帳簿にない隠れた債務である簿外債務は、事業譲渡では契約から除外することができるので、基本的に引き継ぐことはありません。

会社分割は包括承継となるため、簿外債務を含めた形で引き継ぐ可能性が高くなります。

登録免許税・不動産取得税

一般の取引や売買では、登記の際には登録免許税を納付します。また土地や建物の引き継ぎが伴う場合は不動産取得税を納付することになります。

事業譲渡の場合、一般の取引同様に登録免許税や不動産取得税が課税されることになります。

会社分割の場合は、一定の要件を満すことで、登録免許税や不動産取得税の軽減措置が受けられます。

消費税

事業譲渡は、個別資産を現金で売買するために、建物のなどの有形固定資産に消費税が課せられます。

会社分割では、組織内の再編行為と解されるために消費税は課せられません。

対価

事業譲渡の場合、対価は現金のみです。 会社分割においては、買手は自己の株式を対価として支払います。ただし、吸収分割の場合であれば、自己の株式以外で支払う方法も選択できます。

取引先への対応

事業譲渡の場合は、買手が取引先との再契約を行うことになります。 会社分割は包括承継なので、基本的に取引先との契約も引き継がれます。

競業避止義務

事業譲渡の場合、売手に競業避止義務が課されます。競業避止義務とは、譲渡した事業と同種の事業を一定期間営んではならないという取り決めです。

会社分割の場合、競業避止義務が適用されないため、売手が後に同種の事業を再開することが可能です。

事業譲渡で売手のメリット

事業譲渡で売手には、どのようなメリットがあるのかをみていきましょう。

法人格を継続できる

既存の事業をすべて売却して、法人格を継続したままで新しい事業を始めたい場合には、事業譲渡の手法が適しています。

また特定の事業だけを残して、他の事業を売却したい場合にも、同様に事業譲渡をすることで、従前の法人格のままで事業を継続することができます。

選択と集中ができる

不要と考える事業を売却することで、現金を得ることができるため、その資金を残した事業のために費やすことが可能になります。採算が見込める事業に資金を集中できるのは大きなメリットです。

後継者対策

後継者の目途が立たない場合、主要な事業を売却し、経営負担の少ない不動産管理などの事業のみを残すことで、最終的には引退後の資金を確保することができます。

事業譲渡における買手のメリット

次に、事業譲渡で買手には、どのようなメリットがあるのかをみていきましょう。

事業が選択できる

事業譲渡では、買手は取得したい事業を選択することができます。契約時に何を選択するかを選別して、会社に必要な資産だけを承継します。

これによって、事業譲渡の段階では予見できなかった、簿外債務や偶発債務の承継を回避することが可能になります。

節税効果

譲受する資産の中には純資産の他に「のれん」が含まれているのが一般的です。のれんとは、販売のノウハウや、ブランド力、立地条件といった目に見えない資産価値のことです。

事業譲渡において、この「のれん」が発生した場合、適正な金額であれば税務上償却が認められるため、節税効果が得られます。

事業譲渡における売手のデメリット

それでは反対に、事業譲渡で売手には、どのようなデメリットがあるのかをみていきましょう。

競合避止義務がある

売手は、同一の区域内ばかりか隣接する市町村においても、事業譲渡した事業を20年間行うことを禁止されています。このため、譲渡する事業は、明白に将来行う可能性が無いものを選別する必要があります。

事業譲渡における買手のデメリット

事業譲渡において売手には、どのようなデメリットがあるのかをみていきましょう。

手続きが煩雑

引き継いだ資産の名義変更や移転登記を始め、従業員との雇用契約や取引先との再契約も必要になります。また許認可についても再取得をすることになるのに加え、期間をまたがる売上債権や買掛債務の処理などを行うことになります。

資金が必要

事業譲渡の対価は現金に限られていることから、買手は資金調達をする必要があります。資金は買収資金だけでなく、その先の運用資金も必要です。また純資産に加えて、独自のノウハウやブランド力を考慮した「のれん」代を加えることになります。さらには消費税にも配慮が必要になります。こうした資金の算定や調達に大きな課題があります。

事業譲渡とは:まとめ

事業分割は、会社の組織をスリムにしたい場合や心機一転を図りたい場合に適した手法です。売手にとっては、「のれん」代を含めた現金が入ってくるために、新たな事業に資金をつぎ込むことが可能になります。

一方買手にとっては、手続きが完了するまでに時間を要するというデメリットがありますが、予見できなかった簿外債務を回避できるメリットがあります。取得しようとする事業が、将来の成長が見込めるものであれば、低リスクで取得できる事業譲渡は、買手の会社にとっても有効な手法だといえます。

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