リーガルテック界隈で話題の電子契約、メリットとデメリット
- 2020/4/1
- 法令コラム
法律に関する業務をITにより効率化する「リーガルテック」は、働き方改革の影響もあり大きな注目を集めています。そんなリーガルテックの界隈で近年大きな話題となっているのが電子契約です。
電子契約とは、インターネット上で契約を締結する行為です。今回の記事では、電子契約のメリットとデメリットを分かりやすく解説します。
電子契約のメリット
書面による通常の契約と比較した場合、電子契約には下記5つのメリットがあります。
契約に要するコストの削減
電子契約ではインターネット上で契約を締結するため、インク代や契約書の郵送料などの事務経費をカットできます。また、契約金額に応じて課税される印紙税も電子契約の場合は課税されずに済みます。
一つ一つの契約で削減できるコストは小さいものの、すべての契約を電子契約にできれば、かなり大きなコスト削減となります。
効率的な業務の実現
紙面による契約の場合、契約書の印刷や捺印、郵送、郵送が正確に行われたかの確認など、あらゆる手続きが必要となります。
一方で電子契約にすれば、こうした手続きがほぼ不要となるため、契約に要する手間や時間を大幅に削減できます。削減できた時間や手間を本業に費やせば、より利益を増やせる可能性もあります。
セキュリティの強化
契約を紙の書面で結んだ場合、保存方法次第では改ざんのリスクや盗まれるリスクがあります。
一方で電子契約であれば、誰が何をしたかを確認する「電子署名」といつ何をしたかを証明する「タイムスタンプ」という仕組みにより、仮に改ざんされてもその旨を証明できます。そのため、契約の不正利用を防ぐことができます。
また、万全なセキュリティ対策を施したインターネット上に契約を保存するので、盗難のリスクも大幅に抑えることが可能です。
契約書の保管スペースを省ける
電子契約では契約書を作成せず、インターネット上で契約内容を保管します。そのため、誌面で作成した契約書を保管するスペースを、利益につながる目的で活用することが可能です。
契約内容の把握や管理が楽になる
紙面の契約書の場合、過去の契約内容を確認するためには、わざわざ保管場所に出向き、一つ一つのファイルから目的の契約書を探さなくてはいけません。
一方で電子契約の場合は、契約先や日付などの項目ごとに契約書を検索できるため、契約内容を把握するのが非常に楽になります。
電子契約のデメリット
メリットばかりだと思われがちな電子契約ですが、いくつか注意すべきデメリットも存在します。この章では、電子契約で注意すべき5つのデメリットをご紹介します。
電子契約が認められないケースもある
最大のデメリットは、電子契約が認められていないケースもある点です。たとえば建物の賃貸借契約や投資信託契約については、書面での契約締結が法律上義務付けられています。 こうした契約内容の場合、そもそも電子契約が認められていないため注意が必要です。
契約に手間がかかる場合がある
電子契約を行う場合、基本的には「認定事業者」または「電子契約サービス会社」のいずれかが提供するサービスを利用します。認定事業者のサービスを利用する場合、押印の代わりに「電子証明書」と呼ばれるものを取得しなくてはいけません。
この電子証明書の取得には、認証局への問い合せや必要事項の記入などの面倒な手続きが必要です。電子契約の手間を削減したいならば、電子契約サービス会社を利用するのがベストです。
契約先に説明する必要がある
契約は相手方があってのものなので、電子契約を行う旨について契約先から同意を得る必要があります。そのため、電子契約に移行する際には契約先に対してその旨を説明する必要があります。
心理的に抵抗を持つ社内の関係者を説得しなくてはいけない
電子契約を行う当事者が経営者などでない限り、契約先に加えて経営者や上司なども説得する必要があります。
こちら側はメリットがあると思って電子契約を提案しても、経営者や上司は「めんどくさい」とか「インターネット上の契約は信頼できない」などの理由で断ってくる可能性もあります。
断られないためには、得られるメリットや安全である点などを、丁寧かつ慎重に説明する必要があります。本来は手間や労力を削減する目的にも関わらず、上司や経営者の説得にかえって手間が生じる可能性がある点は大きなデメリットと言えます。
電子帳簿保存法に基づく管理が必要
電子契約に際しては、「電子帳簿保存法」に基づいて契約データを保存・管理する必要があります。
具体的には、保存場所や保存期間、真実性要件(データが本物であると証明するための条件)、検索機能などに関して、詳細に条件が定められています。
こうした詳細な条件をすべて把握した上で保管しないと、仮に税務調査のときに問題となる恐れがあるため注意しましょう。
参考:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律 e-Gov
電子契約のメリットとデメリット:まとめ
リーガルテック界隈で注目の電子契約は、契約手続きの手間やコストを削減できる点で企業にとって大きなメリットがあります。
しかし一方で、法律に基づいた保管や導入時に関係者を説得する必要が出てくる可能性があり、デメリットも存在します。 長所も短所もある契約方法なので、実際の導入にあたっては慎重に検討することがおすすめです。