ジャパンベストレスキューシステム不適切な売上計上問題に関する第三者委員会報告書の概要

ジャパンベストレスキューシステムの不適切な売上計上問題

今回の記事では、ジャパンベストレスキューシステムの不適切な売上計上問題を事例に、第三者委員会の活動内容をわかりやすく解説します。

問題の背景

本件は、ジャパンベストレスキューシステムの連結子会社であるバイノスにて、不適切な売上計上が見つかった問題です。

なお本件では3回にわたって第三者委員会が設置されました。本件では、なぜ複数回も第三者委員会が開催されたのでしょうか?今回の記事では、第1回と第2回の調査で生じた不備や、3回目の第三者委員会の調査で判明した事実について解説します。

本件における第三者委員会の役割と委員選定のポイント

本件の第三者委員会の役割と委員選定

本件において第三者委員会は、「バイノスの不適切な売上計上の事実確認」や「バイノスの不適切な売上計上におけるa氏の関与の有無」、「a氏個人による出資や有志の資金が同社から不適正に流出されたものかどうか」などを調査する役割を担いました。

なお本件第三者委員会は、ジャパンベストレスキューシステムと利害関係を有しない下記委員で構成されました。

  • 委員長:嶋守 基 (弁護士 弁護士法人大江橋法律事務所)
  • 委員:倉持 大(弁護士 弁護士法人大江橋法律事務所)
  • 委員:泉 範行 (公認会計士 泉会計事務所)

第三者委員会の活動スケジュール

本件問題の発覚から第三者委員会の調査に至るまでは、果たしてどのような経緯を辿ったのでしょうか?

すべての発端となったのは、同社の会計監査人である監査法人が、ジャパンベストレスキューシステムの連結子会社バイノスの売上計上が不適切である可能性があると懸念したことです。

この懸念を受けて同社は、2014年5月2日に売上計上の問題に関して事実確認を行うために、第三者委員会(第1回)を設置しました。同年6月2日に第1回の調査報告書が提出されたものの、調査方法に不足があるとのことで、同社は同年6月14日に再度第三者委員会(第2回)を設置しました。

2回目の第三者委員会は、同社の代表取締役兼バイノスの取締役であるa氏をはじめとした重役が本件問題に関与しているかどうかを調査しました。その結果、a氏をはじめとした重役は不適切な売上計上を認識していたとは認められないとの結論が出ました。

普通ならこれにて一件落着となるところですが、ジャパンベストレスキューシステムの元役職員が行なった内部告発により事態は急変しました。この告発文書には、a氏自身が不適切な売上計上を指示していたことなどが書かれていました。

事態を深刻に受け止めた同社は、2014年10月29日に3度目の第三者委員会を設置し、不適切な売上計上に対してa氏が関与しているかどうかをあらためて調査しました。3回目の調査はおよそ半月に渡り、同年11月11日に最終報告書が提出されました。

以上の経緯をまとめると、下記のようになります。

  • 2014年5月2日 売上計上問題の事実確認を目的に、第三者委員会(第1回)が設立される
  • 2014年6月2日 第1回の調査報告書が提出される
  • 2014年6月14日 a氏の関与の有無を調査するために、第三者委員会(第2回)が設立される
  • 2014年7月25日 第2回の調査報告書が提出される
  • 2014年10月29日 内部告発を受けて、第三者委員会(第3回)が設立される
  • 2014年11月11日 第3回の調査報告書が提出される

本件の調査のポイント

本件調査のポイントは、不適切な売上計上問題の事実確認のみならず、a氏の関与やa氏の出資の適正さの調査も行われた点です。

1回目と2回目の第三者委員会は、売上計上に不適切な面があったかどうかを確認する目的で行われました。そして内部告発を受けて行われた3回目の第三者委員会では、a氏の関与に重点を置いた調査が行われました。3回目の第三者委員会では、約半月という限られた時間の中で、関係者からのヒアリングを中心に問題の核心に迫る第三者委員会の努力が伺えます。

第三者委員会によって何がわかったのか

第三者委員会の調査により判明した事項

本件第三者委員会の調査では、不適切な売上計上が行われた事実に加えて、主に2つの事実が判明しました。

まず1つ目は、バイノスの不適切な売上計上に対するa氏の関与の有無です。告発文書ではa氏自身が不正会計を指示していたと記載されていたものの、第三者委員会による告発者へのヒアリングの結果、a氏と不適切な会計を認識していたバイノス取締役のe氏が頻繁に連絡を取り合ってたことを理由に、a氏が直接指示していただろうと、告発者が推測したに過ぎないことが判明しました。また電子メールや関係者からのヒアリングでは、a氏が不正会計の事実を認識していたとは考えにくいという結論に至っています。

2つ目は、a氏個人による出資や遊興費等の資金がジャパンベストレスキューシステムの資金から流出したものかどうかです。ヒアリングやa氏個人の預金通帳コピーなどの調査の結果、a氏個人が出資した資金が同社グループ内から不正に支出されたものとは認定できないという結論に至りました。

第三者委員会の調査とその影響で生じた費用

売上不正問題の発覚により、ジャパンベストレスキューシステムは大きな損失を被りました。まず不正会計が発覚した第19期の決算にて、同社は特別調査費用として約3,287万円の特別損失を計上しています。特別調査費用の内容は明らかになっていませんが、時期的に見て第三者委員会の調査に要した費用であると考えられます。

また本件の影響は、社会的信用力の低下として株価にも表れています。第1回の第三者委員会を設立した当日(2014年5月2日)の終値は387円でしたが、5日後の5月7日には307円まで下落しました。現在はアベノミクスなどの影響により株価は回復しているものの、少なくとも一定期間は本件問題の影響により株価が低下していました。

本件問題のように、会計問題などの不祥事は業績と株式の双方に多大な影響を与えます。

格付けの評価

実は本件問題では、3回にわたる第三者委員会による調査の後に、その報告書の内容が異なる可能性が指摘されました。それを受けて同社は内部調査委員会を設置して再度調査を行い、第三者委員会による調査報告書の一部に誤りがあることを指摘しました。とくに第三者委員会の調査報告書では不適切な売上計上への関与が否定されていたバイノス取締役B氏の関与を認めた点は、当時大きな話題となりました。

第三者委員会報告書格付け委員会は、その内部調査委員会が提出した報告書について調査スコープの正当性などの観点からA(良い)〜F(悪い)までの5段階により格付けを実施しました。今回は9名の委員が格付けを行いましたが、B評価が5名、C評価が4名と格付け委員会の中で評価がはっきり分かれる結果となりました。

不適切な売上計上に対するB氏の関与を認めた点については高く評価された一方で、もっとも利害関係者が関心を持っていたa氏の関与の有無が調査範囲から外れていた点はマイナス評価となりました。

第三者委員会の調査内容よりもより公平な事実認定を行なった点は良かったものの、もっとも重要なa氏について触れられなかった点のマイナスが大きかったのだと考えられます。

根本的な原因

第三者委員会の調査報告書によると、不適切な売上計上が生じた根本的な原因は「不完全な内部監査システム」と「役職員の法令遵守意識の欠如」に集約されます。

第三者委員会の調査報告書でも述べられているように、子会社の管理体制の見直しやコンプライアンス意識の徹底、内部監査室の拡充などが原因の除去には欠かせないと考えられます。

不適切な売上計上問題に関する第三者委員会報告書:まとめ

本件は短時間に第三者委員会が3回も設立されるという、数ある不祥事の中でも稀なケースです。

とくに今回のケースでは、告発者の憶測により第三者委員会の調査が振り回されたり、後々調査内容に間違いが見つかり内部調査を行うなど、思わぬトラブルが多発しました。

第三者委員会には、外部からの思わぬトラブルにも対処しつつ、何度も調査することのないように慎重かつ正確な調査が求められると言えるでしょう。

参考文献

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