オンライン診療はコロナを救うのか?

オンライン診療

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、医療機関は騒然とした中での診療を余儀なくされています。一方で患者側の方も、感染への懸念から、病院や診療所での診察を躊躇う人が少なからずいます。そんな中で注目されているのが、オンライン診療です。新しい診療スタイルであるオンライン診療が、新型コロナウイルスが蔓延する状況下で、どのような役割を果たすことになるのかを探っていきましょう。

オンライン診療は新型コロナとどのように関わるのか

診療は本来、医師法20条によって、「医師自らが診察しないで治療をしたり、処方せんを交付したりすること」が禁じられています。

しかし、インターネット環境の充実と医師の働き方の見直しにより、2018年4月からオンライン診療が「診察」という扱いになり、保険診療適用されることになりました。

ただし、運用当初は様々な制約があり、一度も直接医師による診断を受けていない患者については、オンライン診療は不可とされていました。この制約を緩和するきっかけとなったのが新型コロナウイルス感染症の拡大です。

新型コロナウイルスへの対応

新型コロナウイルス感染症の拡大により、各地で緊急事態宣言が出され、かつてのように自由気ままに外出ができるような状況ではなくなりました。そのため、「医療機関で受診したくても外出が許される雰囲気ではない」、あるいは「コロナウイルスに感染するのが怖い」といった、通院をためらう患者の急速な増加を招くことになりました。

このような事態に鑑み、厚労省では、令和2年4月10日付けで、「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取り扱いについて」という事務連絡を発出しました。

ここで示された特例により、従来不可とされていた初診のオンライン診療が可能となったのです。

ただし、新型コロナウイルスへの感染を疑う患者の治療、軽度の発熱、上気道症状、腹痛、頭痛等で、解熱剤等の薬を処方希望する患者の診療は、適切な検査や治療ができないことや重症度の判断ができないという理由から、オンライン診療を受けることはできません。

オンライン診療の流れ

オンライン診療は次のような流れで受診します。

  1. 診療内容の確認……受診しようと考えている医療機関のホームページを確認します
  2. 事前の予約……医療機関によって予約方法は異なるため、各医療機関のホームページか電話で予約方法を確認します。この際、併せて支払方法についても確認します
  3. 診療……医療機関側からオンラインで接続され、診療が開始します。まず、本人であることを確認するために、求められた個人情報を伝えます。その後、症状等を説明します
  4. 診療後……医療機関に来訪して受診するよう推奨された場合は、必ず医療機関に直接かかるようにします
  5. 薬の処方……薬が処方されます。薬の配送を希望する場合は、薬を出してもらう最寄りの薬局を医療機関に伝えたうえで、診察後、薬局に連絡します。オンラインによる服薬指導を受けた後、薬が配送されます

初診の患者もオンライン診療が認められるようになりましたが、厚労省の調べによると、2121年3月時点で対応可能な医療機関は、全体の15%にとどまっています。そのため、実際に対応可能な医療機関を検索することは、やや困難な状況です。

新型コロナウイルス感染拡大に伴う特例でオンライン診療はどう変わるのか

厚労省は、オンライン診療の規制を緩和しましたが、令和2年5月1日付「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取り扱いに関するQ&Aについて」によって、取り扱いをより明確化しました。

この「特例Q&A」から、オンライン診療がどのような取り扱いになっているのかを紐解いていきましょう。

初診でオンライン診療が可能に

診療の求めを受けた医療機関は、オンライン診療による診断が可能であると判断した範囲で、初診から電話やオンラインによる診療を受けることが可能になりました。

つまり、初診でもオンライン診療は可能になったものの、診察が行える病状は限定的であることを意味しています。

オンライン診療で患者の基礎疾患の情報が把握できなかった場合、処方日数は7日間が上限となります。また、麻薬及び向精神薬に加え、特に安全管理が必要な医薬品の処方をすることはできません。

処方日数が7日を上限とされているのは、オンライン診療では診断に必要な情報が十分に得られないことが予想されるためです。処方医による一定の診察頻度を確保して患者の観察を十分に行った後に再び処方されることになります。

麻薬及び向精神薬については、患者のなりすましや虚偽の申告による濫用・転売の防止が困難であることから、処方の対象から除外されています。

初診でオンライン診療を行うための留意点

医師は、初診からオンライン診療を行うために、以下に掲げる要領を順守して進めなければなりません。

  • オンライン診療を行うことが適していない症状や疾病等、発生が予測されるリスクや急病急変時の対応方針を患者に十分に説明したうえで、その説明内容を診療録に記載する
  • 対面による診療が必要と判断される場合、オンライン診療を実施した医療機関において速やかに対面による診療に移行する。あるいは、承諾を得た他の医療機関に速やかに紹介する
  • 患者のなりすまし防止や虚偽申告による処方を防止するために、患者の被保険者証により本人確認と受給資格を確認する。ただし、双方の本人確認が必要とされているため、医師についても顔写真付きの身分証明書によって、医師の資格を有していることを証明することが求められます

オンライン診療を行った場合でも、重篤化のおそれがある場合は、正確な診療を実施するために、従来の対面による診療を促す流れになります。また、患者のなりすましを防止することは、オンライン診療の特性上、避けることのできない大きな課題です。

参照:新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いに関するQ&A

オンライン診療はコロナを救うのか?:まとめ

新型コロナウイルスへの感染の可能性が高い患者は、オンラインによる視診や問診では、重症度の評価が困難ですから、対面による診療が絶対条件となります。

ただし、新型コロナウイルスへの感染者との濃厚接触が疑われる人や疑似症を有し新型コロナウイルスへの感染を懸念している人については、オンラインによる診療は有効です。そのうえで、必要に応じて対面による診療を受けることになります。

新型コロナウイルスが蔓延する状況下において、オンライン診療の意義が発揮できるのは、むしろ重症化のおそれが少ない病状における診療です。新型コロナウイルス感染症患者との動線が交錯することのない自宅で診療を受けられるというのは、感染リスクを回避するうえで大きな効果があります。

ただ一方で、オンライン診療後に、対面による診療を勧められることが少なくないため、「結局、健康相談と大差がない」と揶揄する意見があるのも事実です。

しかし、日常をサポートしてくれる家族や介護職員の付き添いのもとで診療を受けることで、医師のアドバイスを有効かつ正確に生かすことが可能になります。こうした周囲の人々のサポートを前提としたオンライン診療のノウハウが浸透すれば、医師の負担軽減や医療の効率化にもつながります。

オンライン診療は、新型コロナ感染症が蔓延する状況下における新たな診療体制の構築に寄与する診療スタイルなのです。

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