リソー教育の不適切な会計処理問題における第三者委員会報告書の概要
- 2019/11/13
- 第三者委員会
この記事では、リソー教育の不適切な会計処理問題を事例に使って、第三者委員会の調査方法や調査スケジュールをご説明します。
問題の背景
本件は、株式会社リソー教育および連結子会社にて、売上の過大計上などの不適切な会計処理が行われた問題です。
本件における第三者委員会の役割と委員選定のポイント
本件の第三者委員会の役割と委員選定
本件において第三者委員会は、本件問題の事実関係や発生原因の分析、再発防止策の提言などの役割を担って調査を行いました。 なお本件第三者委員会は、下記4名の委員によって構成されました。
- 委員長:高野 利雄(弁護士 元名古屋高等検察庁検事長)
- 委員:神垣 清水(弁護士 前公正取引委員会委員)
- 委員:佐々木 善三(弁護士 前京都地方検察庁検事正)
- 委員:南 成人(公認会計士 仰星監査法人)
第三者委員会の活動スケジュール
では次に、本件問題の発覚から第三者委員会の調査に至るまでの経緯を確認してみましょう。
本件の発端は、2013年11月下旬にリソー教育が証券取引等監視委員会から任意調査を受けたことに始まります。この調査によって、リソー教育および同社の連結子会社である名門会において、不適切な会計処理が行われた疑いが発生しました。
事件の重大性を認識した同社は、2013年12月16日に第三者委員会を設置し、本件問題の調査をはじめました。調査は約2ヶ月弱にもおよび、2014年2月10日に最終報告書が提出されました。 本件の経緯をまとめると、以下のようになります。
- 2013年11月下旬 任意調査により不適切な会計処理の疑いが発生
- 2013年12月16日 第三者委員会が設置される
- 2014年2月10日 最終報告書が提出される
本件の調査のポイント
本件調査のポイントは、リソー教育と名門会のみならず、他の連結子会社についても調査が進められた点です。 同社および連結子会社について、関係者へのヒアリングや会計帳簿の調査、電子メールの調査などを徹底的に行うことで、調査の網羅性を高める狙いがあったと考えられます。
第三者委員会によって何がわかったのか
第三者委員会の調査により判明した事項
第三者委員会の調査により、同社および連結子会社で行われた不正会計の具体的な内容と、不適正に計上された売り上げ金額が判明しました。
本来リソー教育では、授業のみ実施や未消化コマ数が多数残った場合に、その分を期末の売り上げから戻す処理を行うため、売上高が減少します。しかし同社では売り上げの減少を防ぐために、実際にはなかった当日欠席やご祝儀があったように見せかけることで、売上高を不当に増やしました。
また他にも、契約が成立していないにも関わらず契約書を勝手に作成して売り上げを計上したり、次月分の売上高を不当に前倒しして計上するなどの行為が行われていたとのことです。
第三者委員会による調査の結果、2014年2月期第2四半期までの累計で、同社および連結子会社で合計約83億円もの売上高が過剰に計上されたことが判明しています。
第三者委員会の調査とその影響で生じた費用
約83億円もの売上高が不正に計上されたことは、投資家を裏切る深刻な問題行為であったと言えます。
深刻な問題行為であったために、同社の業績および株価に大きな悪影響を及ぼしました。同社は2014年2月期の決算にて、本件問題の調査や監査、課徴金の支払いで生じた費用の見積額として、およそ6億6,497万円を特別損失として計上しました。
次に株価への影響ですが、第三者委員会の最終報告書が提出される直前(2014年2月7日)の終値は551円でした。ところが最終報告書が提出され事態が公になった同年2月10日には、終値が451円まで下落しました。その後も株価は下落し、200円台前半まで下落した時もありました。現在では以前の水準まで回復したものの、同社が信頼を回復するまでには長い時間を要したと言えるでしょう。
格付けの評価
本件第三者委員会の調査報告書は、調査の網羅性や独立性、深度などの観点から格付け評価が行われました。本件では9名の委員がA(良い)〜F(悪い)までの5段階で格付け評価を実施しましたが、C評価4名、D評価3名、F評価2名と全体的に低い評価結果となりました。
低評価の原因について第三者委員会は「事実調査よりも法的責任の追及を重視した点」や「内部統制やガバナンスに関する調査が不十分である点」などを挙げています。
一方で、「客観的な数値データなどを用いて、本件問題の具体的な内容や影響を述べている点」や「調査範囲が網羅的であり、十分な調査期間を設けている点」などについては、高評価をつけた委員もいました。
客観的なデータを用いた点など高評価に値する部分はあるものの、内部統制にまで踏み込んだ調査が行われなかった点が低評価につながったと考えられます。
根本的な原因
第三者委員会による調査の結果、本件の根本的原因は「厳しい売り上げノルマと成果主義」であることが判明しました。
関係者へのヒアリングによると、同社では売り上げ目標の達成が社員にとって最重要の課題となっていました。目標を達成できたかどうかによって、短時間で給与の額や階級が変わることが常態化していたために、不正をしてでも目標を達成しようとする社員が出てきたわけです。
リソー教育の不適切な会計処理問題における第三者委員会報告書の概要まとめ
本件では、過剰な成果主義が原因で売り上げの不正計上が発生しました。そうした不正が二度と起きないようにするには、内部統制や経営管理などの根本的な部分が改革する必要があります。
こうした問題を調査する第三者委員会には、会社の根幹をなす部分にメスを入れて、確実に効果の出る再発防止策を提言することが求められているのです。
参考文献
- 第三者委員会報告書格付け委員会 第2回格付け結果を公表しました
http://www.rating-tpcr.net/result/#02 - 第三者委員会の調査報告書受領に関するお知らせ
https://www.riso-kyoikugroup.com/ir/pdf/2014/20140210.pdf - 平成26年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
https://www.riso-kyoikugroup.com/ir/pdf/2014/revision/h26_result.pdf - (株)リソー教育 –Yahoo!ファイナンス
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/detail/?code=4714.T