三菱自動車工業株式会社の燃費不正問題における第三者委員会報告書の概要

三菱自動車工業株式会社の燃費不正問題における第三者委員会報告書の概要

コンプライアンス上の問題発生時に、問題明確化や再発防止をアピールするため、「第三者委員会」を設置することがあります。今回は、第三者委員会における、三菱自動車工業株式会社の「燃費不正問題に関する調査(2016年8月1日)」について紹介します。

三菱自動車工業株式会社の燃費不正問題に関する第三者委員会

コンプライアンス上の問題発生時に、身内で調査するだけでは真の原因究明とならないことが多いです。対外的に自社の都合の良い報告となったり、当事者や関係者の隠ぺいによって、体裁だけの報告となりがちです。

そこで、第三者委員会を設置し、客観的で真摯な調査と報告をするケースがあります。結果的に、ステークスホルダーや社会に理解されやすくなったり、再発防止につながりやすくなります。では、今回紹介する三菱自動車工業株式会社の燃費不正問題とは、どのような内容だったのでしょうか?

燃費不正問題とは

2016年4月20日に謝罪会見が行われた三菱自動車工業株式会社の燃費不正問題は、記憶に新しい人も多いでしょう。燃料を計測時に、意図的に誤った「シーダイナモの抵抗値」を利用して、偽った燃料性能を公表していたのです。

三菱自動車工業株式会社が販売している車にとどまらず、受注製造車種にも改ざんがあり、大きな問題となりました。

本件における第三者委員会の役割と委員選定のポイント

第三者委員会は、原則3名以上の有識者で構成し、一般的には法律に詳しい弁護士や、会計に詳しい会計士が入ることが多いです。

今回の第三者委員会では、弁護士3名(うち1名は前東京高等検察庁検事長経験者)、元トヨタ自動車株式会社理事の4名で構成されています。

いずれも、三菱自動車工業株式会社との間で、業務上の契約関係や利害関係を持ったことはない方々です。 また、調査補助を目的として、西村あさひ法律事務所所属の弁護士も、事務局として任命しています。

本件の調査のポイント

三菱自動車工業株式会社は、1991年以降、ほとんどの車種で、違法なデータ測定(試験データを机上で計算)をしていました。つまり、25年以上ほぼ全ての車種で違法なデータ測定をしていたことになります。これらのことが発覚したのは、生産依頼元の日産からの調査依頼でした。

第三者委員会によって分かったこととは?

今回発覚したことは、2013年6月以降に販売している「eKワゴン」「eKスペース」や、日産向けに供給している「デイズ」「デイズルークス」の4車種において、燃料試験データの不正をしていたということです。

国土交通省に型式指定審査申請時に、燃費をよりよく見せるために不正操作が行われていました。国内法規で定められた方法とは異なり、三菱自動車工業株式会社独自の方法で行っていたのです。

根本的な原因

第三者委員会による、本件の報告書では、以下を根本原因として挙げています。

  • 真のコンプライアンスの欠如
  • 品質問題に対する意識の低さ
  • 風通しの悪い企業風土
  • 誰も責任を取らないセクショナリズムの壁
  • 舵取りの悪さ
  • 企業規模を超えた車種拡大

1つの原因というだけでなく、これらの事情が相まみえ、今回の問題へと発展したのです。

調査費やその影響の費用

日本弁護士連合会のガイドラインによると、第三者委員会の調査費は、時間制を原則としています。ただし、調査費用だけでなく、株価下落や売上定価など、間接的な影響も考えられます。

本件に関して、三菱自動車工業株式会社のニュースリリース(2016年度決算)では、燃費不正問題影響で1,985億円の赤字(上期)となったと発表しています。

格付けの評価

第三者委員会は、調査報告書自体に格付けが行われ、最高格付けのA~Fまでが明示されます。格付けの意義としては、調査や報告書の社会的信用向上のためだとされています。本件の格付けは、B評価が5名、C評価が1名でした。

まとめ

三菱自動車工業株式会社の燃費不正問題は、生産依頼元の日産からの調査依頼で発覚し、大きな問題となりました。客観性が担保されている第三者委員会設置によって調査が行われ、三菱自動車工業株式会社の体質を踏まえた原因が公表されています。

第三者委員会の報告自体にも格付けが行われるほど厳正ですので、これによって、再発防止や企業体質改善のアピールとなるでしょう。

関連記事

ページ上部へ戻る