共和コーポレーションの架空循環取引に関する第三者委員会報告書の概要
- 2021/9/6
- 第三者委員会
今回の記事では、株式会社共和コーポレーションにおいて、架空循環取引が見つかった問題を事例に、第三者委員会の活動や調査結果をお伝えします。
問題の背景
本件は、アミューズメント事業を運営する共和コーポレーションにおいて、架空の循環取引が見つかった問題です。
具体的には、同社とアミューズメント機器の販売先であるA社、機器の仕入れ先であるB社の間で循環取引が見つかりました。
本件における第三者委員会の役割と委員選定のポイント
本件の第三者委員会の役割と委員選定
本件を調査した第三者委員会は、調査において主に下記3つの役割を担いました。
- A社、共和および B 社間の架空循環取引に関する事実確認
- 本件が生じた原因の分析
- 再発防止策の提言
なお本件の第三者委員会は、下記2名の弁護士と1名の公認会計士で構成されました。
- 委員長:高橋 聖明(弁護士 高橋法律事務所)
- 委員 :田下 佳代(弁護士 田下佳代法律事務所)
- 委員 :弓場 法(公認会計士 弓場公認会計士事務所)
第三者委員会の活動スケジュール
次に、本件の問題となった発端から、第三者委員会によって調査報告書が提出されるに至るまでの経緯を確認してみましょう。
問題の発端となったのは2019年12月2日に、取引先であるA社より事業を停止する旨の連絡が届いたことに起因します。その後A社は同月16日に破産手続きの決定を受けました。これにより共和コーポレーションは、A社に対する約1億4,500万円の売掛金(中古ゲーム機販売にかかる売掛 金は約 142 百万円)が回収不能となる可能性が生じました。
そこで同社は、2日より債権回収のために調査を行っていましたが、ここで思わぬ事実が発覚しました。なんと、A社との取引が現物の取引が伴っていない架空取引である可能性があったのです。
事態を重くみた同社は、2019年12月26日に第三者委員会を設置し、本格的な調査を行いました。調査はおよそ3ヶ月弱にわたって行われ、2020年3月13日に第三者委員会により調査結果をまとめた調査報告書が提出されました。 問題の発覚から調査報告書の提出までのスケジュールをまとめると下記の通りです。
- 2019年12月2日 A社より事業を停止する旨の連絡が届く
- 2019年12月16日 A社が破産手続きの決定を受ける
- 2019年12月26日 第三者委員会が設置され調査が開始される
- 2020年3月13日 第三者委員会により調査報告書が提出される
本件の調査のポイント
共和コーポレーションの本件問題を調査するにあたって、第三者委員会は下記の調査を行いました。
- 仕訳データや商品の販売データなどの調査
- 同社およびA社・B社役職員に対するインタビュー
- 電子ファイルの調査
- アンケートの実施
- 類似取引の調査
仕訳データや電子ファイルなどの客観的なデータを調査しつつ、アンケートやインタビューにより生の声を聞くことで、より精密かつ多角的な視点から事実究明を行えたことが見て取れます。
第三者委員会によって何がわかったのか
第三者委員会の調査により判明した事項
第三者委員会の調査の結果、共和がB社から仕入れてA社に販売していた商品の大半が、A社か らB社に販売されていた上に、過去に商品を保管していた事実もなかったことが発覚しました。つまり本件は、架空の循環取引であったわけです。本件について、共和の役職員が認識していた事実はないとのことです。
調査では、架空循環取引以外にも、2つの問題が発覚しました。1つめは、共和東京支社のa氏が自ら設立に関与した会社を取引に介在させて利益を得る「競業取引」を行っていたことです。2つめは、a氏がB社に仕入れ価額を多く支払うことで、B社に資金をプールさせていた問題です。プールしていた金額はおよそ3,243万円にものぼるとのことです。
第三者委員会の調査によって生じた費用・影響
共和コーポレーションは、第三者委員会の調査によって生じた費用については明らかとしていません。ただし、本来は売り上げとして計上すべきでない項目を架空循環取引により計上していたことから、過去の財務諸表を修正する結果となりました。5年度分の財務諸表を修正した結果、売上高はおよそ172万円、売上原価は162万円変わることとなりました。
なお株価に関しては、第三者委員会の設置が公表されたタイミングや、調査報告書が公表されたタイミングで特に下落は見られませんでした。おそらく、マスコミ等に大きく報道されなかったことが、株価の大幅な下落を免れた要因として考えられます。
根本的な原因
第三者委員会の調査報告書では、本件の根本的な原因は下記の4つに集約できます。
- 「自社の仕入先や販売先を明かさない」という商取引上のルールがあったこと
- 業界環境を分析することで架空循環取引の可能性を疑う姿勢が共和に無かったこと
- 納品時に立ち会うなどのリスク管理が行われていなかったこと
- 与信管理の不足
- 在庫管理の不備
まとめると、商取引のルールや業界特有の状況から架空取引が生じやすいにも関わらず、与信管理やリスク管理などが徹底されていなかったことから生じた問題であると言える。つまり、協和コーポレーション側のコンプライアンス意識や内部統制機能が不足していたわけだ。
共和コーポレーションの架空循環取引:まとめ
本件は、架空の取引と循環取引が組み合わさった問題でした。役職員に関与していた事実こそないものの、不適切な取引を行っていたことには変わりありません。こうした不正な取引を調査する第三者委員会は、問題が生じた原因を究明し、どうすれば再び問題が起きないかを慎重に考える必要があるのです。
参考文献
・第三者委員会の調査書受領と業績に与える影響、再発防止策等について 株式会社共和コーポレーション
・(株)共和コーポレーション yahoo!ファイナンス