アルファクス・フード・システムの不適切な会計処理に関する第三者委員会報告書の概要

アルファクス・フード・システム

この記事では、株式会社アルファクス・フード・システムの不適切な会計処理問題を事例に用いて、第三者委員会の活動内容や本件問題の概要をお伝えします。

問題の背景

本件は、飲食店の経営管理システムを提供する株式会社アルファクス・フード・システムにおいて生じた不適切な会計処理問題です。

具体的には、ボイラー設備を蓄熱式電気ボイラー設備に入れ替えることでエネルギーコストを削減するサービスを提供する新規事業の取引において、売上計上時期の適切性に問題が見つかりました。

本件における第三者委員会の役割と委員選定のポイント

本件の第三者委員会の役割と委員選定

本件の第三者委員会は、調査にあたって下記4つの役割を担いました。

  • 本件の会計処理に関する事実関係の調査
  • 本件の会計処理に類似する問題の有無の調査
  • 本件問題が財務諸表に与える影響額の確定
  • 原因究明と再発防止策の提言

なお本件では、アルファクス社との利害関係を有しない2名の公認会計士と、同社の独立社外監査役の3名により構成される特別調査委員会が調査を行いました。メンバーの独立性が高いことから、この記事では「第三者委員会」として説明を進めます。

  • 委員長:奥津 泰彦(公認会計士 奥津泰彦公認会計士事務所)
  • 委員 :塩野 治夫(公認会計士 塩野治夫公認会計士事務所)
  • 委員 :後藤 登(弁護士 当社独立社外監査役)

第三者委員会の活動スケジュール

次に、本件問題の発端から、第三者委員会の調査報告書が提出されるまでの経緯を見てみましょう。

本件問題の発端は2020年1月14日に、ボイラー関連取引に関する売上計上時期の適切性に関して、外部からの指摘を受けたことにさかのぼります。そこで同社は、事実経緯の確認を目的に専門家を交えた社内調査を実施しました。その結果、ボイラー関連取引に関する2018年9月期の売上高の計上時期の適切性に疑念が生じました。

よりくわしく正確に調査する必要性を認識した同社は、2020年2月7にちに特別調査委員会(第三者委員会)を設置しました。調査はおよそ1ヶ月にわたり行われ、同年3月16日付で調査の結果をまとめた調査報告書が提出されるに至りました。問題の発端から調査報告書が提出されるまでのスケジュールをまとめると下記になります。

  • 2020年1月14日 売り上げ計上時期の適切性に関して外部から指摘を受ける
  • 2020年2月7日 特別調査委員会(第三者委員会)が設立される
  • 2020年3月16日 第三者委員会により調査報告書が提出される

本件の調査のポイント

アルファクス社の調査におけるポイントは、公認会計士を中心として専門的な調査が行われた点です。

本件のような売り上げ計上に関する適切性を評価するには、高度な会計知識が必要となります。そこで第三者委員会では、公認会計士を中心として会計書類の調査やパソコン内のデータ調査、役職員に対するアンケート調査等を実施しました。 専門家が中心となって調査を実施したことで、正確な調査を実施できたと考えられます。

第三者委員会によって何がわかったのか

第三者委員会の調査により判明した事項

第三者委員会が調査を行った結果、売り上げ計上の時期に加えて、複数の会計処理に問題が見つかりました。

そもそも同社は、本件のボイラー工事に関して工事の遅延に対して指示を行うなど、継続的に取引に関与していました。本件の場合は会計処理のルール上、工事が完了した時点で売り上げを計上する必要がありました。しかし同社は、工事が終了していないにも関わらず、導入時のコンサルティング部分を切り離して売り上げを計上していました。第三者委員会は本件の会計処理は適切ではないと認定し、入金済みの75,000千円の売り上げを取り消し、同額を前受金として計上することが適切であるとしています。

売り上げ計上の問題以外にも、「賞与引当金の計上不足」や「販売手数料の未計上」など、数多くの修正事項が見つかったことも指摘されています。

第三者委員会の調査によって生じた費用・影響

同社は第三者委員会の調査によって生じた費用は公表していません。ですが、調査により不適切な会計処理が複数発覚したことで、過年度の財務諸表の修正を行うこととなりました。また事態を重く受け止めた代表取締役の田村氏が、経営陣としての責任をとるために、役員月額報酬の50%を4ヶ月分減額するなど、影響は大きいものとなっています。

また、会計不正による信用力の低下が株価に表れていることも特筆すべき点です。本件の調査報告書が提出・公表された2020年3月16日の終値は445円でしたが、翌日には394円まで下落しました。コロナウイルスによる影響もあるため一概には言えませんが、ある程度は影響していると考えられるでしょう。

根本的な原因

第三者委員会の調査報告書をまとめると、本件の根本的な原因は下記の4つに集約できます。

  • 経営陣が会計処理の重要性を軽視していた
  • 内部監査やガバナンスの機能不全
  • 規定やルール整備の不備
  • 情報伝達や情報共有の不足

総じて、経営陣が会計処理を正確に行うことを軽視していたことにより、会計業務に関するガバナンスや情報伝達に不備や不足が生じたと言えるでしょう。

アルファクス・フード・システムの第三者委員会報告書の概要:まとめ

本件の問題は、経営陣を中心として会計処理に対する認識が甘かったために生じました。たとえ恣意的に実施したものでなくても、不適切な会計処理は株主などの利害関係者に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

調査を行う第三者委員会には、こうした甘い認識を正しつつ、効果的な再発防止策を経営陣に提言することが求められるわけです。

参考資料

特別調査委員会の調査報告書の受領及び調査結果等に関するお知らせ 株式会社アルファクス・フード・システム
特別調査委員会の設置及び2020年9月期第1四半期決算発表の延期に関するお知らせ 株式会社アルファクス・フード・システム
IR情報 株式会社アルファクス・フード・システム
(株)アルファクス・フード・システム yahoo!ファイナンス

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