「ステルスマーケティング」の法的規制とは
- 2022/9/28
- 法令コラム
「ステルスマーケティング」をご存知でしょうか。
省略して「ステマ」とも呼ばれています。「ステマ」の方が聞いたことがあるかもしれませんね。
昨今、芸能人やインフルエンサー、You Tuber等がこの「ステマ」を行って炎上する騒ぎになったり、ニュースになったりしています。
今回は、この「ステマ」について解説していきます。
ステルスマーケティングとは
ステルスマーケティングとは、第三者としての立場を利用して、特定の企業や商品について、宣伝と気づかれないように商品を宣伝したり、商品に対する口コミなどを行う行為のことをいいます。
企業からのあっせん・依頼があって宣伝しているのにもかかわらず、あたかも自分が本当にその商品を使っているかのようにSNSで発信したり、そのような効果がないにもかかわらず「とても効果がある」等の口コミをしたりすることがこれにあたります。
ペニーオークション詐欺事件や、食べログやらせ事件が有名ですね。ペニーオークション詐欺事件では、オークション運営者等が逮捕され、複数の芸能人によるペニーオークションのステマが行われていたことが公になり、大変な問題となりました。
景表法上の問題点
なぜ、この「ステマ」が問題となるのでしょうか。「ステマ」は、企業からの依頼があって行われていることを隠して宣伝行為を行うという点で消費者を騙しているという側面がありますから、芸能人や有名人が「ステマ」を行うとネット炎上して消費者から非難されるということになるでしょう。
では、「ステマ」は違法な行為なのでしょうか。イギリスやアメリカでは、消費者保護の観点から違法とされていますが、日本では「ステマ」についての法整備はまだ整ってはいません。
しかしながら、不当景品類及び不当表示防止法、いわゆる景品表示法によって消費者に害があるような広告等の発信は禁じられているため、違法と判断される場合もあるといえるでしょう。
景品表示法では、「優良誤認表示」と「有利誤認表示」の2点を禁止しています。ここで、少し「優良誤認表示」と「有利誤認表示」について説明します。
優良誤認を簡単に言うと『実態が伴っていないにも関わらず「これは質のいい商品だ」と消費者に思わせること』です。例えば、実際にはブランドではない肉を「国産有名ブランド牛の肉」と表示することや、中古自動車の走行距離を実際に走行した距離よりも、少ない走行距離で表示すること、実際にはそこまで明るくないにもかかわらず、「白熱電球〇〇ワット相当」の明るさであるかのように表示すること等です。
一方、有利誤認を簡単に言うと『実際にはそうでないにも関わらず「これはお得な商品だ」と消費者に思わせること』です。例えば、携帯電話の料金比較で自社に不利となる他社の割引サービスを除外して「自社が最も安い」かのように表示することや、商品の内容量について、実際には、他社と変わらない内容量しかないにもかかわらず、あたかも「他社商品の2倍の内容量」であるかのように表示すること、「競合店の平均価格から値引きする」と表示しながら、その平均価格を実際よりも高く設定し、そこから値引きしていた場合や、常にキャンペーンをしているのに、「今だけ」30%オフなどといって期間限定でお得なようにみせる事等です。
景品表示法違反がある場合は、公正取引委員会、消費者庁、都道府県知事から調査が入ります。
さらに、措置命令が出ることもあり(景品表示法第7条1項)、場合によっては、課徴金の納付まで義務づけられます(景品表示法第8条1項)。また、措置命令に違反すると2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます。
企業が広報活動の際に気をつけること
企業が、商品やサービスの宣伝のために、芸能人やインフルエンサーに実際に商品を使ってもらう等の行為を行うこと自体は違法ではありませんが、その際には、宣伝・PRであることをきちんと明記するべきです。また、ステルスマーケティングにあたる行為類型を普段から会社内で周知することや、相談しやすい関係を作ることなど、問題を把握しやすい状況を作ることも重要であると思われます。
まとめ
SNSが普及している現代においては、企業本体側からの宣伝よりも、インフルエンサーやYou Tuberなどからの口コミや宣伝・PRの方が、影響力があるといっても過言ではありません。
そのため、企業側も安易に個人に対して商品やサービスの宣伝活動を依頼する場面も多くなるとも考えられます。
しかし、これだけステルスマーケティング手法が横行している世の中においては、消費者もステマを見抜く厳しい目を持っています。ステマをしていることが公になれば、その商品のみならず、企業、その業界全体への信頼が失われ、取返しのつかない損害が生じるおそれもあります。そのため、企業側も安易なステルスマーケティングを依頼せず、適切な宣伝活動を行うべきでしょう。