裁判で嘘をついたらどうなるのか?

裁判で嘘をついたらどうなる

証人として裁判に呼ばれた場合、身内や親しい人を庇うために嘘をつきたくなる場合もあるでしょう。しかし、証人が裁判で嘘をつくと、偽証罪に問われる可能性があるため注意が必要です。

今回の記事では、偽証罪の定義や罰則の内容、成立要件、その他重要なポイントをわかりやすく解説します。

裁判で嘘をつくと「偽証罪」が適用される可能性がある

証人として呼ばれた裁判で嘘をつくと、偽証罪が適用される可能性があります。

偽証罪とは

刑法169条に規定された偽証罪とは、「法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたとき」に成立する犯罪です。

「法律により宣誓した証人」とは

刑事訴訟法154条では、「証人には、この法律に特別の定のある場合を除いて、宣誓をさせなければならない。」と記載されています。

証人とは、事実を証明する人 を指します。また宣誓とは、多くの人の前で自分の誠意を示すための誓いの言葉を述べることを意味します。 刑事訴訟規則118条には、「宣誓は宣誓書によって行われる必要があること」および「宣誓書には、良心に従って、真実を述べ何事も隠さないことを誓う旨を記載しなくてはならない」 と定められています。

つまり法律により宣誓した証人とは、「嘘をつかず、真実を述べることを誓った証人」のことです。

「虚偽の陳述」とは

虚偽の陳述とは、文字通り嘘を言うことを意味します。ただし、何を嘘であるとするかについては、明確な定義がありません。ただし通説や判例では、自らの記憶と異なる証言を行うことが虚偽の陳述とされています。

つまり偽証罪に問われないためには、自らの記憶をありのまま伝える必要があるのです。

偽証罪の罰則はどのくらいか

刑法や刑事訴訟法などの条文を読み解くと、偽証罪が成立する主な要件は下記の2つにまとめることができます。

証人が自身の記憶に反することを陳述する

前述した通り、「虚偽の陳述」を「法律により宣誓した証人」が行った場合に偽証罪は成立します。つまり宣誓した上で、かつ自らの記憶とは異なることを陳述した場合に、偽証罪に問われるのです。

言い換えると、勘違いによって本当の事実とは異なる証言を行った場合、虚偽の陳述に該当しないため、偽証罪は成立しません。偽証罪に問われたくないならば、本当の事実を推測して語るのではなく、間違っていても良いので自らの記憶をもとに証言しましょう。

宣誓の趣旨を理解できる証人である

刑事訴訟法155条には、「宣誓の趣旨を理解できない者に対しては、宣誓をさせないで、これを尋問しなければならない」と記載されています。つまり、大前提として宣誓がどのようなものであるかを理解できない方は、偽証罪の成立要件を満たさないと言えるのです。

偽証罪における重要な論点

最後に、偽証罪に関する重要な論点を3つお伝えします。

刑事裁判のみならず、民事裁判でも偽証罪が成立する

偽証罪の罰則自体は刑法に規定されていますが、偽証罪は刑事裁判だけでなく、民事裁判でも成立します。言い換えると、民事裁判の証人が虚偽の陳述を行い、それが発覚した場合には偽証罪に問われる可能性があるのです。

裁判の当事者には偽証罪が適用されない

偽証罪は、あくまで裁判の証人に適用される罰則です。したがって裁判の当事者となる被告人や原告には、偽証罪が適用されることはありません。

ただし民事裁判の当事者に関しては、民事訴訟法209条1項の定めにより、10万円以下の過料が科される可能性があります。

正当な理由なく、宣誓や証言を拒否することはできない

裁判で証人となる場合、正当な理由がないにもかかわらず、宣誓や証言を拒否することはできません。拒否した場合、宣誓証言拒否罪が適用され、その場で10万円以下の過料が科される可能性があります(刑事訴訟法160条)。

刑事訴訟法

ただし、正当な理由がある場合には宣誓や証言を拒否する権利が認められています。刑事訴訟法146条、147条、149条では、以下の項目を正当な理由として認めています。

  • 証言によって、自らが刑事訴追を受けたり、有罪判決を受ける可能性がある
  • 証言によって、証人自らの配偶者や一定範囲内の血族・姻族、後見人とする者などが刑事訴追を受けたり、有罪判決を受ける可能性がある
  • 医師や弁護士、弁理士などの職業についている者、またはついていた者が、業務上知った事実で他人の秘密に関するものを証言してしまう

裁判で嘘をついたらどうなるのか?:まとめ

当事者を庇うためなどの理由で虚偽の証言を故意に行うと、偽証罪が成立し、重い罰則を受ける可能性があります。罰則を避けるためには、自らの記憶に基づいて嘘のない証言を行うことが大切です。

また、ご自身やその親族の利益を守るために、宣誓や証言を拒否できる条件を事前に知っておくことも重要となります。

※参考文献
刑法 e-Gov
刑事訴訟法 e-Gov
民事訴訟法 e-Gov
刑事訴訟規則

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