『競争の番人』で注目された公正取引委員会とは?独占禁止法とはどんな法律?

2022年7月から放送されていた月9テレビドラマ『競争の番人』は、公正取引委員会の審査官が主人公です。そもそも公正取引委員会とはどのようなものか、名前は聞いたことがあってもどのような仕事をしているかについては知らない方が少なくないのではないでしょうか。

そこで、公正取引委員会とは何か、その役割や公正取引委員会を知る上で欠かせない独占禁止法について解説します。

公正取引委員会とは?

公正取引委員会は、内閣総理大臣の所轄に属し、独占禁止法の目的を達成することを任務とする国の行政機関です。自由な経済活動が公正に行われるように企業の違反行為に目を光らせ、消費者の利益を守ります。

独占禁止法27条
1項 内閣府設置法(平成11年法律第89号)第49条第3項の規定に基づいて、第1条の目的を達成することを任務とする公正取引委員会を置く。
2項 公正取引委員会は、内閣総理大臣の所轄に属する。
独占禁止法27条の2
公正取引委員会は、前条第一項の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどる。
1号 私的独占の規制に関すること。
2号 不当な取引制限の規制に関すること。
3号 不公正な取引方法の規制に関すること。
4号 独占的状態に係る規制に関すること。
5号 所掌事務に係る国際協力に関すること。
6号 前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき、公正取引委員会に属させられた事務

公正取引委員会は独占禁止法に違反する行為を取り締まる機関です。そのため、その役割を詳しく知るには独占禁止法について理解する必要があります。

独占禁止法とは?

独占禁止法は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」の略称で、独禁法とも呼ばれます。独占禁止法の目的は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることです。

多くの売り手と買い手が自由に商品を売り買いする市場において、売り手同士が価格や品質など様々な側面で競争することにより、商品の低価格化・サービスの充実・機能の改良などが行われ、消費者は様々な商品の中から欲しい商品を自由に選択することができます。

競争が妨げられると、売り手は技術開発やコストダウンを怠るようになり、消費者はどの商品も同じような低い品質・高い価格でしか買えなくなってしまいます。これは買い手にとって不利益ですが売り手にとっては利益となるため、競争をなくしたり避けたりしようとする売り手が出てきてしまいます。

このように競争をなくしてしまうような行為を禁止し競争を保護すべく、独占禁止法は主に5つの違反行為を規定しています。

私的独占(3条前段)

低価格販売や排他的取引などが私的独占に当たります。実質的な競争制限が認められる必要があり、他の違反行為に比べて認定されにくいといえます。

不当な取引制限(3条後段)

不当な取引制限に当たる行為の典型例がカルテルです。

カルテルの詳しい解説についてはこちらの記事を参照してください。
https://legalsearch.jp/portal/column/cartels-trusts-concerns/

また、入札において事前に受注調整などをする談合も不当な取引制限の典型といえます。

談合の詳しい解説についてはこちらの記事を参照してください。
https://legalsearch.jp/portal/column/why-collusion-is-not-good/

不公正な取引方法

優越的地位の濫用や取引拒絶、抱き合わせ販売などが不公正な取引方法の類型です。

優越的地位の濫用の詳しい解説についてはこちらの記事を参照してください。
https://legalsearch.jp/portal/column/abuse-of-a-superior-bargaining-position/

事業者団体の競争制限行為

事業者団体とは、~工業会や~連盟のような、事業者により構成される団体をいい、独占禁止法2条2項で定義が規定されています。

事業者団体の構成員に不公正な取引方法などの独占禁止法に違反する行為をさせることを禁止しています。

企業結合規制

企業同士が結びつくことにより市場における競争を制限するような行為を規制します。

例えばトラストは企業結合規制により禁止されています。

トラスト反トラスト法についてはこちらの記事を参照してください。
https://legalsearch.jp/portal/column/antitrust-law/

公正取引委員会の活動

公正取引委員会は、違反行為を迅速に取り締り、厳正な措置を採っています。独占禁止法に違反する疑いがある企業を調査した上で、違反のあった企業に対してはその行為をやめるように命令をし、また違反行為によって得た不当な利益を国庫に納めるように命令します。

調査のきっかけ(端緒)

職権探知といわれる公正取引委員会の調査や、一般人からの報告、また違反行為の当事者自らの申出、中小企業庁からの請求などにより、事件の審査が開始されます。

行政調査

事件の審査開始後、問題となっている企業の事務所などに向かい立入検査を行い、違反した証拠となる帳簿、取引記録など関係資料を調べます。

必要に応じて関係者を呼んで事情聴取などを行い、違反行為に関する事実を解明します。

なお、刑事告発に相当すると判断された事件の調査を行う場合、裁判官が発する許可状により犯則調査という強制調査をすることができます。

意見聴取手続

調査の結果、排除措置命令や課徴金納付命令を行う場合には、企業から意見を聴く意見聴取手続を必ず行います。

意見聴取手続では、対象となる企業に対して処分内容の説明をした上で、企業は意見の陳述や証拠の提出、質問をします。

排除措置命令・課徴金納付命令

意見聴取手続の後、公正取引委員会は、違反行為をした企業に対して排除措置命令や課徴金納付命令を行います。

排除措置命令とは、速やかに違反行為をやめ、市場における競争を回復させるのに必要な措置を命じるというものです。命令の内容には、当該行為の差止め、事業の一部の譲渡、契約条項の削除、事業者団体の解散、同様の違反行為の将来における反復の禁止などがあります。

課徴金納付命令とは、課徴金の国庫に納めるように命じるというものです。違反行為を事前に抑止し、また違反行為によって不当に得た利益を吐き出させ、やり得(=制裁を受けても違反行為による利益の方が大きい状態)を防止するという効果を持ちます。

公正取引委員会の発表によると、令和元年9月30日時点で1事件の最高額は約398億円、1社に対する最高額は約131億円となっています。

組織としての公正取引委員会

公正取引委員会は、行政委員会と呼ばれる合議体の機関で、委員長と委員4名によって構成されています。その下に事件の調査や監視などを行う事務総局があり、事務総局は官房・経済取引局・取引部・審査局・犯則審査部・地方事務所・支所により構成されています。

公正取引委員会は、他から指揮監督を受けることなく独立して職務を行うことに特色があります。

公正取引委員会ホームページ「公正取引委員会の組織図」から引用
https://www.jftc.go.jp/soshiki/profile/annai/index.html

下請法との関係は?

公正取引委員会は独占禁止法の補完法である下請法の運用も行っています。下請法とは、下請代金支払遅延等防止法の略称で、親事業者による下請事業者に対する優越的地位の濫用行為を取り締まるために制定された法律です。

まとめ

・公正取引委員会は、独占禁止法に違反する行為を取り締まる国の行政機関です。

・独占禁止法とは、公正・自由な競争を保護し、市場の競争力をゆがめるような行為を禁止する法律です。

・独占禁止法に違反した者に対しては排除措置命令や課徴金納付命令を行いますが、それには行政調査や意見聴取手続などの手続を経る必要があります。

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