DFFT(自由で信頼あるデータ流通)とは何か

DFFTとは

「DFFT(自由で信頼あるデータ流通)の推進」は、岸田首相が掲げる重要な政策のひとつです。新たに発足した内閣では、デジタル担当相が、DFFTを担当することを表明しています。今、注目を浴びるDFFTとは何か。そして私達の生活にどのような影響を及ぼすのか探っていましょう。

DFFTとは

DFFTとは、Data Free Flow with Trust(自由で信頼あるデータ流通)のことをいいます。

2019年1月23日に開催されたダボス会議で、安倍晋三首相は「成長のエンジンはもはやガソリンではなくデジタルデータで回っている」としたうえで、「私たちがつくり上げるべき体制は、DFFTのためのものだ」と訴えました。

さらに同年6月29日のG20大阪サミット首脳宣言においても、「データや情報等の越境流通は、生産性の向上やイノベーションの増大をもたらす一方で、プライバシー、データ保護、知的財産権及びセキュリティに関する課題を有している。これらの課題に対処することにより、データの自由な流通を促進し、消費者及びビジネスの信頼を強化することが可能になる。DFFTはデジタル経済を活かすものである」と意思表明がなされました。

これを契機として、DFFTを含むデータ流通や電子取引に関する国際ルール作りを進めていく「大阪トラック」がスタートしたのです。

デジタルデータは、痕跡もなく改ざんやねつ造が可能なため、プライバシー、データ保護、知的財産権及びセキュリティに関する課題への対処ができなければ、大きなリスクを抱えることになります。

近い将来、私達の住む世界は、いかに正確な情報を入手できるかが使命とされる社会となることが予測されることから、まさにDFFTの飛躍的推進が待望されているのです。

DFFTの目指すもの

それではDFFTの目指すべきものとは何でしょうか。

現在収集可能なデータの量は、ビッグデータを処理する技術の向上により、膨大なものになっています。このため、国内のデータに留まらず、世界的なデータ流通が避けられない情勢となっています。

しかし一方で、国境を越えたデータ流通は、けっして自由に行われているわけではないという現実があります。データ・ガバナンスに関する各国の法制度の違いや制度の曖昧さが存在しているからです。

デジタル時代の競争力の源泉であり、「21世紀の石油」と呼ばれているデータは、特定の国が抱え込むのではなく、プライバシーやセキュリティ・知的財産などのデータの安全性を確保しながら、原則として国内外において自由に流通することが重要視されています。

このため日本は、 DFFTのコンセプトに基づく「国際データ流通網」を広げていくことを目的として、WTO(世界貿易機関)を介して、より多くの国との間で、デジタル貿易ルールの形成をしようとしているのです。

具体的には、次の項目の実現を目標としています。

  • 情報越境移転
  • データ国内保存要求の禁止
  • ソース・コード/アルゴリズムの移転・開示要求の禁止
  • 個人情報保護/消費者保護
  • ICT製品の暗号開示要求の禁止

それぞれの項目ごとに、DFFTの推進を図るうえで。どのような意義があるのか解説していきましょう。

情報越境移転

事業実施のために行われる情報の電子的手段による国境を越える移転を原則として許可することとします。

これにより、電子商取引事業を展開するための大前提としての基盤である国境を越える情報の移転を不当に阻害するような規制の導入を抑制する効果があります。また事業者は国境を越えて顧客の関心やニーズに応じた事業を展開することが容易になります。

データ国内保存要求の禁止

データは、20世紀における石油のような、21世紀における富の源泉であり、新たな「資源」と考えられるようになりました。

大量のデータを保有する国は「データ資源国」であり、データをめぐる各国のグローバルな争奪戦が繰り広げられるようになりました。

データの重要性が強く認識される中、いわゆる「囲い込み」に動く国も現れるようになりました。国家が自国内で行われる事業活動に関するデータを国内で保存することを要求したり、データを処理するサーバーを国内に設置することを求めたりする規制が行われるようになってきたのです。

このため、将来の国際ルールとすることを前提として、事業遂行の条件としての自国の領域におけるサーバーのコンピュータ関連設備設置の要求を原則として禁止することとしました。

これにより、多額の投資や拠点設置を伴わずに海外の消費者や企業と直接取引できるという電子商取引の利点を不当に阻害する規制の導入を抑制する効果が生じます。

ソース・コード/アルゴリズムの移転・開示要求の禁止

「ソース・コード」とは、コンピュータ・プログラムを作る際に、そのプログラムにどのような動作をさせたいかを記載した内容(テキストファイル)のことです。たとえば、ウェブサイト上で、表示商品の「購入」ボタンを押したら、商品がショッピングカートに加えられるなどの処理がこれに当たります。

「アルゴリズム」とは、コンピュータに行わせる手順・計算方法のことです。たとえば、検索エンジンで、キーワードを入力したときに、どのようなページを上位に表示させるかの優先順位付けがこれに該当します。

これらは、企業にとっては重要な企業秘密かつ財産であり、これらの開示を強制されないことは、企業が国境を越えて電子商取引を行ううえで大きな安心材料となります。

個人情報保護/消費者保護

「個人情報保護」「消費者保護」とは、個人情報保護のための法的枠組みの採用・維持や、オンライン上の消費者保護のための制度の制定・維持のことです。

国際的に一定の保護基準を設けることで、個人が安心してグローバルなデジタル経済に参加できるようになります。

ICT製品の暗号開示要求の禁止

「ICT製品の暗号」とは、PCやネットワーク・ルーターなどのICT製品のデータなどの暗号化を意味します。これらの開示を禁止することで、ICT製品に含まれる企業秘密やICT製品を介した通信の保護が危険にさらされるリスクを抑制することができます。

WTO での議論の現状

WTO164加盟国のうち、現在86の有志国が参加し、DFFTに関してどのように共通の国際ルールを築くべきか、活発に議論が行われています。

交渉の場では「自由」と「安心と安全」のどちらを優先するかで原則的立場の対立があります。また、どこまで民間ビジネスに規制をかけるべきかについても、各国ごとにアプローチの違いがあります。

日本は、オーストラリアとシンガポールとともに電子商取引に関する有志国交渉の共同議長として、この複雑な交渉を牽引している立場にありますが、2020年12月に、交渉の土台となる「統合交渉テキスト」が作成されたのは大きな成果のひとつだといっていいでしょう。

日本としては、今後2021年12月に予定されている第12回閣僚会議(MC12)に向けて、電子商取引に関するルール作りの作業を加速していきたいと考えています。

参考:WTOでの新しいルール作り/外務省

DFFT(自由で信頼あるデータ流通)とは何か:まとめ

DFFTは、国際ルールの構築こそが大きなカギとなります。このため日本としては、次のような具体的な目標を掲げて。他国の理解を得ようとしています。

  • 情報越境移転
  • データ国内保存要求の禁止
  • ソース・コード/アルゴリズムの移転・開示要求の禁止
  • 個人情報保護/消費者保護
  • ICT製品の暗号開示要求の禁止

現在、世界中に膨大なデータが存在しており、世界中でデータ流通が行われています。一方で、国境を越えたデータ流通は、けっして自由に行われているわけではありません。

世界では。データを国内で保存することを要求したり、データを処理するサーバーを国内に設置することを求めたりする国も存在しています。

このため、自国の領域におけるサーバーのコンピュータ関連設備設置の要求を原則として禁止するなどの国際ルールの構築が非常に重要なのです。

2021年12月に予定されている第12回閣僚会議(MC12)において、DFFTに関するルール作りの大きな進捗が期待されています。

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