契約とは?契約の流れや契約の元となる民法についても解説!
- 2020/6/22
- 法令コラム
普段私たち消費者は、物を売買する際や貸し借りする際、何気なく契約を結んでいます。そんな身近な契約ですが、根本的にどういったものか知っていない方が大半だと思います。
そこで今回の記事から計5回にわたって、契約の基礎知識を網羅的に解説します。1回目となるこの記事では、契約の意味や契約の元となる民法、契約の流れについてご説明します。
契約とは
契約とは、当事者同士の意思表示が合致することで成立する法律行為です。簡単にいうと、お互いが合意することで、片方または双方が権利や義務を負うことを意味します。
単なる約束事と契約の違いは、法的拘束力の有無です。契約では権利や義務に法的拘束力が発生するため、約束が守られなかった場合には強制的に権利や義務を履行してもらうことが可能です。たとえば商品の売買契約を締結した場合、代金の支払いが行われない際には、差し押さえなどの手段で強制的に代金を回収できます。
つまり契約は、双方が確実に約束事を遵守する上で不可欠な法律行為なのです。
契約自由の原則
契約において非常に重要なのが、「契約自由の原則」です。契約自由の原則とは、「誰とでも内容に関係なく自由に契約を締結できる」という民法で明文化された規定です。
契約自由の原則は、具体的に次の4つに大別されます。まず1つ目は「締結の自由」です。これは、契約を締結することもしないことも自由であるとする原則です。2つ目は「相手方選択の自由」です。こちらは、誰を相手に契約しても自由という原則です。3つ目は「内容決定の自由」です。こちらは、契約内容を当事者間で自由に決定できるとするものです。そして4つ目は、「方式の自由」です。こちらは、契約は特定の方式を必要としないことを定めた原則です。
特筆すべきは4つ目の原則です。契約ではかならず契約書を締結するものと思われがちですが、方式に制限はないため、基本的に契約は口頭でも成立することになっています。ただし一部の契約(農地の賃貸借など)では、書面の作成が義務付けられています。
また、口頭で成立するといっても、実際には契約がある旨を証明するのは困難です。そのため、余計なトラブルを避ける上でも、契約書を作成しておくのが無難です。
契約の元となる民法の概要
「契約」という法律行為は、民法の規定に基づいています。民法とは、私人間の規範(ルール)について定めた法律です。民法の内容は、大きく下記5つのジャンルに分けることができます。
- 総則(意思能力や代理などに関する規定)
- 物権(所有権や占有権などに関する規定)
- 債権(契約や不法行為などに関する規定)
- 親族(親子や婚姻などに関する規定)
- 続(相続分や相続人などに関する規定)
「総則」、「物権」、「債権」の3つは財産法、残りの2つは「家族法」とも呼ばれます。見てわかる通り、契約に関しては「債権」の項目に含まれます。
契約の流れ
契約が成立してから効力を実際に主張できるまでには、一定のプロセスがあります。この章では、契約成立から効力を主張するに至るまでの流れを順番に説明します。
Step1:当事者同士による意思表示の合致で契約が成立
民法の第522条では、「当事者同士による意思表示の合致」により契約が成立すると規定しています。具体的には、申込み(契約内容を示した上で、その締結を申し入れる意思表示)と承諾(契約内容に合意する意思表示)があった時点で契約締結となります。
たとえば売り手が「商品を販売し、その対価として現金を支払う」という売買契約を買い手に示した場合、買い手がその内容を承諾した時点で契約が成立します。実務的には、意思表示が合致した旨を証明するために、契約書を締結します。
Step2:契約の有効要件を満たすことで契約の効力が発生
あまり知られていませんが、実は当事者同士で契約が成立しても、それだけでは効力は発生しません。契約が法的な効力を持つには、下記にあげる契約の有効要件を満たす必要があります。
- 契約内容が実現可能であり、かつ確定している
- 契約内容が適法である
- 契約内容が公序良俗に反しない
- 契約当事者が権利能力や意思能力、行為能力を備えている
- 意思表示が意思の不存在(勘違いや虚偽表示など)により行われたものでない
- 意思表示が詐欺や脅迫によって行われたものでない
たとえば、脅迫により無理やり契約させられた場合、その契約は法的効力を持ちません。また4つ目の条件により、赤ちゃんなど正常な判断能力(意思能力)を持たない人が契約を行った場合には、その契約は無効となります。また、未成年者など単独で法律行為を行えない(行為能力を持たない)人が契約した場合は、後から契約を取り消すことで、効力が無効となります。
Step3:代理人による契約の場合は「効果帰属要件」を満たす必要がある
本人に代わって代理人が契約する場合には、上記の要件に加えて「効果帰属要件」を満たさなければ契約の効力は生じません。具体的には、民法99条の規定に基づいて下記の要件を満たす必要があります。
- 契約者本人が代理人に契約を締結をする権限を与えている
- 本人のために契約する旨を買主に伝える
Step4:条件や期限を満たす場合のみ契約の効力を主張可能
ここまでの流れをクリアすれば、当事者間で成立した契約は効力を持つようになります。しかし、契約に条件や期限が設定されている場合は、その条件や期限を満たす場合でなければ、契約の効力を主張できません。
たとえば「2ヶ月後以降に商品の対価を支払う」という契約を締結している場合、「2ヶ月後」という期限が設定されています。そのため、期限が到来するまでは対価を受け取る権利を主張できません。
契約とは:まとめ
なんとなく締結する契約にも、実は様々なルールがあることが理解していただけたでしょうか?今回お伝えした契約の基本を知っておけば、契約により思わぬ不利益を被るリスクを軽減できるようになります。
次回の記事では、契約の種類についてくわしく解説します。こちらもぜひ参考にしていただければと思います。