法務部なら知っておきたい「損害賠償」入門 (2020年4月1日民法改正対応)

法務部なら知っておきたい「損害賠償」入門

損害賠償とは

法務部で業務をしていると、「損害賠償」という言葉を頻繁に見たり聞いたりすることになるかと思います。実際に、契約において損害賠償についての定めは重要になることが多いです。

しかしこの損害賠償、「意外と何だかわかっていない」なんてことありませんか。「今までの契約書で賠償になったことなんてなかったし…」「契約書の文面は民法とほとんど同じだし…」なんて考えて結んだ契約書に思わぬリスクが隠れているかもしれません。

このリスクを少しでも減らすには、「損害賠償」とは何かを知るのが一番の近道です。まず、民法が規定する代表的な損害賠償の定めを確認していきましょう。

損害賠償には契約書に基づくものと、契約書に基づかないものがあります。

契約内容の違反によるもの(契約書に基づく賠償)

民法に規定された一般的な賠償のうち、契約に基づくものです。これは債務不履行といわれ、民法415条1項などを根拠としています。契約違反、すなわち契約書に記載のある債務の不履行をした場合に契約相手から賠償してもらうための決まりになります。

企業における契約書は、そのほとんどがこの債務不履行制度を基礎として作成されていますので、契約書を法的観点から検討するにあたってはこの制度を理解しておくことが重要になります。

不法行為によるもの(契約に基づかない賠償)

民法に規定された一般的な賠償のうち、契約に基づかないものです。賠償の根拠は民法709条などです。交通事故やSNSでの誹謗中傷などがあった場合に、契約書を交わしていない相手から賠償をしてもらうための決まりになります。

当然ですが事前に相手と取り決めをしておくことはできないので、法務はこれらの事件・事故が発生した場合、具体的な事情に応じてその場で対応することになります。

以下では、債務不履行に基づく損害賠償のうち、特に混乱しがちな「損害」の概念について説明をします。

『損害』ってなんだ?

損害は様々な観点から分類される

損害賠償のもととなる契約の種類が多様である以上、ひとくちに契約違反の「損害」といってもその範囲は漠然としてしまいます。そこで、民法は「損害」を一定の角度から分類しています。以下ではそのうち代表的なものを挙げます。

通常損害

民法416条1項が定める「通常生ずべき損害」のことをいいます。これは契約が履行されなかった場合、通常起こると考えられる損害のことです。例えば、納入された商品が不良品であった場合、買主はこれを修理したり、別の商品を買って対応しなければなりませんから、その費用が通常損害に当たります。

特別損害

民法416条2項に定める「特別な事情によって生じた損害」のことをいいます。契約を履行しなかった場合に、通常起こるとまでは言えない損害がこれに当たります。これも文字通りです。例えば材料を納期までに納入できず、工場が製品を製造できなかったために取引先に契約を打ち切られた場合の工場の損害などは特別損害といえるでしょう。

特別損害は、「風が吹けば桶屋が儲かる」といった具合に、債務不履行を被った人の事情でその範囲がいくらでも拡大してしまうおそれがあります。したがって、民法416条2項は特別損害の範囲を「当事者がその事情を予見すべきであったとき」に限定しています。

逸失利益

契約違反や不法行為がなければ得られていた利益のことを言います。例えば商品の絵画に傷がつき、それを買うはずだった絵画の仲介業者が絵を顧客に転売できなくなった場合の転売利益などを指すといわれています。

「逸失利益」という言葉自体は民法には出てきませんが、慣行上損害賠償の範囲に含められており、契約書でも用いられることがあります。

直接損害と間接損害とは?

「直接損害」や「間接損害」といった言葉を聞いたことがありますか。これらは一見すると債務不履行の損害の種類のようですが、実はこれに類する言葉は民法には書いていません(民法で「直接」「間接」という単語を検索してみてください。意外と少ないことがわかります。)。

また、逸失利益と異なり、概念自体も専門家の中で統一的に理解されているわけではありません。通常損害、特別損害と比べてイメージがしやすい言葉ですが、人によってイメージする範囲が異なることもあり得ます。

契約書を書くには

以上の理解はあくまで法律の解釈にとどまります。これを実際に契約書に起こすにはどうすればいいでしょうか。

法律に沿った文言を選ぶ

契約書は法律上の効力をもつ文書です。あいまいな文言で契約をし、後日相手方が突飛なことを言ってきたとしても「この契約書なら確かに言えなくもないかなぁ…」と理解されてしまったら、こちらは法律上の義務を負うことになりかねません。

それを防ぐためには法律上定義のはっきりした用語を使い、予想外の解釈をされないようにすることが必要です。法律上の用語は裁判や学説によって議論の蓄積があるため、これを調査し把握しておけばある程度のリスクを防ぐことができるようになります。また、契約書の条文で用語の定義を定めておくことも解釈の齟齬が生じないようにするテクニックといえます。

法律や解説書をしっかり読む

そして、こう言っては身も蓋もありませんが、何より法律を理解しそれを適切に運用する力を個人で身に着けるのが一番です。

契約書の作成や解釈に必要そうな法律や判例を検索して、それに関連する解説書をしっかり読む。そして、先人の残した契約書などを足掛かりにして契約書に起こす。これを繰り返せば、先人たちの知恵を活かした契約書を作ることができるようになるでしょう。

法令や判例の検索システムを使う

では、どうやって法律や解説書を調べればいいか。皆さんが真っ先に考え付くのはインターネット検索ではないでしょうか。法務業務においても、検索エンジンでほしい情報を調べる、なんて方も多いかと思います。

しかし、web検索で見つかる情報は玉石混交です。どこで調べたのか不思議に思うほど不正確な情報が載っているもの、書いた当時は正確で質が良くても法律の改正を経てそのまま使うことはできなくなっているもの…こういった情報が多数検索結果に並んでいる景色は誰もが見たことがあるものであり、そして誰もが見たくないものでしょう。

そこで、専用の法律検索システムをはじめとする法律系のサービスを導入することが考えられます。今では、月額制の法令判例検索サービスや専門書購読のサブスクリプションなど、法務業務をサポートするサービスが多数リリースされています。安いものだと月額1万円ほどで導入できますから、これを機に一度調べてみるのはいかがでしょうか。

法務部なら知っておきたい「損害賠償」入門:まとめ

損害賠償のことについて少しわかっていただけましたか。債務不履行に基づく損害賠償については、積極損害、消極損害、因果関係、帰責事由などなどここでは触れきれないようなたくさんの論点があります。

しかし、これについて解説した書物や示唆を与えてくれる裁判例などが世の中にはたくさんあります。本稿を足掛かりに皆さんがより法律を知って生活に活かしてくだされば幸いです。

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