カンダホールディングスの不適切な立替金精算に関する第三者委員会報告書の概要
- 2021/8/30
- 第三者委員会
この記事では、カンダホールディングス株式会社の不適切な立替金精算問題を事例に用いて、第三者委員会(特別調査委員会)の活動内容やスケジュールをお伝えします。
問題の背景
本件は、物流業を営むカンダホールディングス株式会社において、不適切な立替金精算が見つかった問題です。具体的には、同社の前専務取締役が、代表を務める子会社2社において、事実とは異なる領収書を使って立替金の精算を行っていたことが問題となりました。
本件における第三者委員会の役割と委員選定のポイント
本件の第三者委員会の役割と委員選定
本件を調査した第三者委員会は、主に下記3つの役割を担いました。
- 本件に関する事実関係の調査
- 本件に類似する問題の有無の調査
- 再発防止策の提言
なお本件を調査した第三者委員会は、4名の社外役員と1名の同社と利害関係を持たない弁護士で構成されました。なお実際には「特別調査委員会」という名目で調査されましたが、独立性の高いメンバーが在籍していることから、今回の記事では「第三者委員会」という名称を用いています。
- 委員長:太子堂 厚子(弁護士 当社独立社外監査役)
- 委員:加藤 俊彦(当社独立社外取締役)
- 委員:中田 信哉(当社独立社外取締役)
- 委員:真下 芳隆(当社独立社外監査役)
- 委員:矢田 悠(弁護士 ひふみ総合法律事務所)
第三者委員会の活動スケジュール
次に、本件が明らかとなった発端から、調査が完了して報告書が公表されるに至るまでの経緯を見てみましょう。
事の発端となったのは、同社で行われた監査役会の監査でした。この監査の過程で、同社の前専務取締役兼子会社の代表取締役が、不適切な立替金の生産により、接待交際費の不正受給を行っている可能性が浮上しました。
そこで同社は、2020年1月16日以降、外部の専門家である弁護士と公認会計士と協力しながら、関係資料の精査を行いました。その結果、不適切な立替金生産が行われた可能性が高いことが判明したため、その旨が同年1月23日に取締役会にて報告されました。
事態を重く見た同社は、翌24日に取締役会にて特別調査委員会(第三者委員会)の設置を決定し、さらに詳しい調査を実施しました。調査はおよそ半月にわたって行われ、2020年2月13日にy踏査報告書が公表されました。 問題の発端から調査報告書が提出されるまでのスケジュールをまとめると下記になります。
- 2020年1月16日 外部の専門家である弁護士と公認会計士と協力して、本件の調査を始める
- 2020年1月23日 不適切な立替金精算が行われている可能性が高いことが取締役会に報告される
- 2020年1月24日 取締役会により特別調査委員会(第三者委員会)の設置が決定
- 2020年2月13日 調査報告書が公表される
本件の調査のポイント
本件の調査で特筆すべき点は、調査対象期間を5年9ヶ月と長く設定したことです。第三者委員会は、2015年3月期から2020年3月期第3四半期までの期間について、領収証や経費にかかる会計データの確認・精査や関係者へのインタビュー、PCやスマートフォンなどの電子データ調査を行いました。
あらゆる調査方法で長い期間を対象に調査したことで、問題の詳しい詳細を分析できたと考えられます。
第三者委員会によって何がわかったのか
第三者委員会の調査により判明した事項
第三者委員会の調査の結果、不適切な立替金精算が疑われる領収書が複数発見されました。接待交際費の実態を表す資料が前専務取締役から何も提出されていないことや、接待交際を行ったとする人物の供述に信憑性がないことなどが、不適切な立替金精算を示す強い証拠となったとのことです。
第三者委員会の調査報告書によると、今回の不適切な立替金精算が疑われる金額は、合計で3,260万円に上るとのことです。
第三者委員会の調査によって生じた費用・影響
同社は第三者委員会の調査結果を踏まえ、3,260万円の全額を不適切な立替金精算が行われた接待交際費であると認定しました。ただし金額が軽微であることから、過年度決算の修正等は行わないとのことです。なお同社は、第三者委員会の調査によって生じた費用は明らかにしていません。
ちなみに株価を見てみると、調査報告書が公表された2020年2月13日の終値が887円でしたが、数日後の2月18日には866円まで下落しています。コロナウイルスの影響もあるため一概には言えませんが、不適切な立替金精算問題は社会的な信用の低下も招いたと考えられます。
根本的な原因
調査を行った第三者委員会は、本件の再発防止策について下記を挙げています。
- 人事の固定化を防ぐ方策を導入する
- 経費精算に関するルールを再整備する
- 当社経理部門・内部監査部門等がより一層関与する
- ルール・態勢の周知および不正に関する社内への啓発の強化
- 内部通報制度の活性化
以上より、本件の根本的な原因は「経費の精算や不正に関する意識の薄さ」と「不正を防止・監視する制度が、人事や内部監査の観点から不足していたこと」の2点と言えます。
カンダホールディングスの不適切な立替金精算:まとめ
本件の問題は、本来守るべき会計上のルールを無視し、不正に経費を受給したものでした。こうした問題は、会社に影響を与えるだけでなく、株主などの外部の利害関係者にも悪影響を及ぼす可能性があります。
会計不正を調査する第三者委員会は、問題が生じた背景までしっかり調査し、二度と同じことが起きないように再発防止策を提言する必要があるのです。
参考文献
・不適切な疑いのある立替金精算にかかる調査の結果等に関するお知らせ カンダホールディングス株式会社
・カンダホールディングス(株) yahoo!ファイナンス