【いまさら聞けない】コンプライアンスとは?

日ごろニュースでも話題となる「コンプライアンス」、一般的には「法令遵守」と訳されますが、コンプライアンスの意味には、法令を守ること以外にも社会的規範やモラル、ルールなどを守ることも含まれることをご存じでしょうか。

今回は、このコンプライアンスについて正しく理解していきましょう。

コンプライアンスが重要とされてきた背景

企業が社会活動を行うにあたって法令を遵守することはいわば当然であり、かつて「コンプライアンス」は現在ほどの重要性を持つ言葉ではありませんでした。コンプライアンスの定義や意義が「法令遵守」を超えて広がり、重要性が増してきたきっかけとしては、以下のような背景が挙げられます。

まず、1980年代に日本政府が3公社の撤廃をはじめとする規制撤廃をして民間企業の参入と競争の促進を行ってきました。

これにより、企業は自由な競争のもとに営利活動を行える範囲が広がりました。しかし、当然企業の行為には責任が伴います。

企業の活動の範囲が広がるに従い、自らの活動によって問われる責任が広範かつ多様になったのです。これに伴い、2000年に入って政府は行政改革大綱で「企業の自己責任体制」を打ち出しました。

その後も、グローバル化・インターネットの普及が進むにつれて、会社の事業の関係者が世界中に存在するようになっているため、コンプライアンス違反が企業はじめ関係者に与える悪影響が大きなものになってきています。

このように、会社の法的責任・倫理的社会的責任がさらに増大したため、コンプライアンスが以前にも増して注目されるようになってきたのです。

コンプライアンス違反の類型

次に、代表的なコンプライアンス違反を紹介します。

不正経理

架空請求や業務上横領、粉飾決算等は、企業のみならず、取引先等の利害関係者にも被害を及ぼします。悪影響が広範・甚大になりやすく最終的に経営破綻になるケースも珍しくありません。

労務問題

長時間の時間外労働による労働基準法違反、過労死問題、ハラスメント(パワハラ・セクハラなど)、非正規社員に対する差別的な取扱いや不合理な待遇差別等の労務問題等です。特に、時間外労働の上限規制、非正規雇用労働者に対する不合理な待遇差の禁止などは、「働き方改革関連法」で厳しい規制が定められています。

しかし、法令上の規制ではなくとも、時代や価値観の変化によって新たに生じるハラスメントも多く、セクハラやパワハラ、マタニティハラスメント(マタハラ)、SOGIハラスメント(性的指向や性的自認に対するハラスメント)などにも注意が必要です。

情報漏えい

発売前の新製品の情報や顧客情報、企業秘密の製造方法など、社内の重要な情報が紛失・漏えいすることや、インサイダー取引等は、企業の社会的信用の低下のみならず、企業の存続が危ぶまれる事態まで引き起こす危険があるなど自社に大きな不利益をもたらします。細心の注意を払ってセキュリティー対策をするべきでしょう。

また、取引先や顧客の名前や住所、メールアドレスなどの個人情報を紛失・漏えいさせてしまうと、多数の消費者に不利益を与える危険性があります。個人情報の取扱いについては、個人情報保護法に事業者が守るべきルールが定められていますので、法律にのっとり適切に取り扱うための体制を整備する必要があります。個人情報保護法は、改正が多いため法改正を随時確認することも重要です。

法令違反

コンプライアンスの基本が「法令遵守」である以上、個々の法令違反には当然気を付ける必要があります。企業において法令遵守が問題になることが多い法令は以下のようなものがあります。

著作権法、消費者契約法、独占禁止法、景品表示法、会社法、労働基準法、労働契約法、不正競争防止法、個人情報保護法、製造物責任法などです。

法令違反は、最初は小さいものであっても、違反を繰り返したり組織ぐるみで違反を行っていくうちに罪の意識が薄れて次第に取返しのつかない大きなものになっていく場合が多いので、常に注意する必要があります。

企業のコンプライアンスの場面で法務に何ができるか

コンプライアンスは法令遵守を基本とするため法務担当には、企業内のコンプライアンスの担い手としての中心的な役割が期待されます。

企業としてコンプライアンスのリスクを減らしていくためには、まず、法務がコンプライアンスについて正しい知識を身に着け、従業員全体の意識を高めるために発信・啓発などの活動をしていくことが重要です。企業が構築するコンプライアンスの体制は、コンプライアンスの内容が時代とともに変わるのに伴って変化していくべきものであり、絶えず改善・進化していくことが期待されています。法務担当は、コンプライアンス体制のアップデートに向けて、コンプライアンスに関連する法改正などの情報を随時確認していくとともに、日頃から業務においてコンプライアンス違反が生じないようリスクを適切に管理することなどが求められます。

コンプライアンスに関連する企業の内部規程の制定・運用も、法務担当が担うことが期待されます。併せて、ハラスメント相談や内部通報のための窓口の設置・運用を行うこともあります。

更に、コンプライアンスの重要性を社内に周知する活動として、社内規則やマニュアルを作成することや、研修や勉強会の実施等も大切です。

コンプライアンスと一言で言っても、そこには様々な意味が含まれること、企業としてコンプライアンス違反がない体制をしっかりと整えなければならないことが理解できたでしょうか。

ただ法令を守れば良いというわけではなく、企業の現在やこれからの在り方のためにコンプライアンスはとても重要なものになってきているのです。

関連記事

ページ上部へ戻る