たばこの値上げと税率の関係

たばこは、過去に何度も値上げが繰り返され、現在では、ワンコイン(500円)で購入できない銘柄も登場しています。直近でも、2020年10月1日に、たばこ税増税に伴う値上げが実施されたところです。この記事では、たばこの価格の変遷を明らかにするとともに、値上げと税率との関係について解説します。

たばこの値段はどう変わったのか

たばこの値段が、過去どのように推移したのかを追っていきましょう。

たばこの現在の価格は・・・

現在、たばこの主要銘柄の価格は、次のようになっています。

  • ナチュラル アメリカン スピリット……570 円
  • セブンスター……560 円
  • メビウス、ピアニッシモ……540 円
  • ウィンストン……500 円
  • キャメル……450 円

既に、多くの銘柄がワンコイン(500円)では購入できない価格設定になっています。

たばこの価格の変遷

過去を振り返ると、たばこの価格は次のように変遷しています。

年代ピース〈10本入〉ゴールデンバットハイライトセブンスター情勢
195050円30円   
195240円30円   
195445円30円   
195640円30円   
196140円30円70円  
196950円40円80円100円たばこ税増税
197475円40円120円150円 
198090円50円150円180円たばこ税増税
1982100円70円170円200円 
1983120円90円200円220円たばこ税増税
1994120円90円220円220円 
1997130円110円250円250円たばこ税増税
2002140円130円270円280円たばこ税増税
2006145円135円280円300円たばこ税増税
2010220円200円410円440円たばこ税増税
2013230円210円420円460円 
2015260円260円420円460円 
2017260円290円450円500円 
2018260円330円450円510円たばこ税増税
2020280円     ——–490円560円 

昭和25年に発売された、ピース (10本入) の箱は、「オリーブの葉をくわえた鳩」が印象的なデザインです。昭和27年から使用されており、アメリカの工業デザイナーのレイモンド・ローウィがデサインしました。

このピースは、発売当初50円で、一時期40円になったこともあります。それが現在では、6倍近い280円で販売されています。なお、この価格は10本入りのものなので、実質的には、20本入りのセブンスターと同額です。

約50年前の1969年の価格を比較してみると、ピース50円、ゴールデンバット40円、ハイライト80円、セブンスター100円でした。それが現在では、ピース280円、ハイライト490円、セブンスター560円と大幅に価格が上昇しています。

高騰が著しいのが、ゴールデンバットです。これには、たばこ税法の改正が大きく影響をしています。わかば、エコー、しんせい、ゴールデンバット、ウルマ、バイオレットの6つの銘柄は、かつては旧三級と呼ばれ、他のたばこよりも低い税率が適用されていました。このため、安い価格で市場に出回っていたのです。

しかし、1,000本あたりの都道府県たばこ税の税額が、平成28年3月31日までは411円だった旧三級品のたばこは、平成28年4月1日からは481円、平成29年4月1日からは551円、平成30年4月1日からは656円と段階的に引き上げられました。このような経緯から、廉価だったゴールデンバットが大幅に値上がりしたのです。

この旧三級品に係る特例税率は、令和元年9月31日をもって廃止となり、その翌日から一般の紙巻たばこと同じ930円になりました。またゴールデンバットは、同年に、わかば、エコーと共に生産中止となりました。

たばこの価格と税率の関係

たばこの価格の変遷からも分かるように、価格が上昇には、たばこ税の増税が大きく関わってきます。実際にどれだけの税金が課せられているのか紹介していきましょう。

たとえば、510円のたばこの税の内訳は、次のような構成になっています。

  • 国たばこ税……120.87円(23.7%)
  • たばこ特別税……16.83円(3.3%)
  • 都道府県たばこ税……19.38円(3.8%)
  • 市区町村たばこ税……118.32円(23.2%)
  • 消費税……46.41円(9.1%)

税総額 328.81円(63.1%)

たばこには約63%の税金が課せられています。つまり1箱20本のたばこで考えると、このうち13本が税金に相当することになります。

この税の内訳のうち、たばこ特別税は国の収入になります。したがって、国への税金は、国たばこ税+たばこ特別税の137.7円です。一方、地方への税金は、都道府県たばこ税+市区町村たばこ税の137.7円です。つまり、国と地方の税収が、まったく同額であり、地方自治体、とりわけ市区町村の貴重な収入源になっていることが分かります。

たばこの価格を諸外国と比較すると

はたして日本のたばこの価格は高いのか、諸外国と比較してみましょう。各国の価格の上位は、次のとおりです。

順位国名1箱(10本)の価格税率
1ノルウェー1,200円78.1%
2イギリス1,110円75.5%
3アイルランド1,000円76.4%
4カナダ840円69.3%
5アイスランド840円――――――
6オーストラリア810円62.1%
7シンガポール790円73.8%
8ニュージーランド760円69.1%
9フランス760円80.4%
10スウェーデン700円72.3%
40日本260円60.0%

たばこの価格を海外と比べてみると、日本の価格はけっして高い方ではないことが分かります。

最も高いノルウェーは、1箱(10本)が1,200円ですから、日本の4倍以上にもなります。2位のイギリスも1,110円、9位のフランスが760円と並ぶ中、日本は40位に位置しています。

たばこ税を比較してみても、欧州諸国の70%~80%と比較すると、日本の60%は、低い部類になります。

たばこの未来像とは

税金が高い割合を占めるたばこですが、この先、たばこの価格と税金がどのように推移していくことが予測されているか考えていきましょう。

諸外国のタバコ施策

厚生労働省は、諸外国のたばこに関する施策を次のようにまとめています。

国 名内    容
欧州連合(EU)たばこ製品の課税に関する3つのEU指令採択(1992年10月)これら指令により課税の最低規準は紙巻きたばこの最終小売価格の70%。
フランス紙巻きたばこの価格を57%(31.35%)引上げ(1987年から1993年の間)(括弧内数字は同時期のインフレの影響を考慮した数字)
英 国若年層に対してたばこ税がたばこ消費削減の手段として位置付け紙巻きたばこの価格を57%(9.66%)引上げ(1978年以来)(括弧内数字は同時期のインフレの影響を考慮した数字)英国大蔵大臣、毎年最低3%たばこ税の引上げ、言明(1993年11月)
イタリアたばこ価格を37.5%(5%)引上げ(1987年から1991年)(括弧内数字は同時期のインフレの影響を考慮した数字)
ドイツ紙巻きたばこ価格を16.8%(4.09%)引上げ、(1987年から1993年の間)(括弧内数字は同時期のインフレの影響を考慮した数字)
オーストラリアたばこ価格は、特に若者の購買意欲、喫煙行為に対して強力な決定因子との認識紙巻きたばこ価格を23%引上げ(1993年以降)
カナダ1991年に増税したが、たばこの非合法な輸入問題のため、1994年に税率は引き下げられた小売価格は1カートン平均約48カナダドルから23カナダドルへ
タイ稼働能力の低い若者に喫煙習慣を付けさせないという観点から課税大蔵省は、毎年インフレ率に比例して消費税額を増加

参照:厚生労働省の最新タバコ情報

たばこの価格と税は将来どうなる

諸外国のたばこに関する施策からも分かるように、たばこ税は国を維持していくうえで、なくてはならない財源となっています。このため、将来的にはさらなる増税へ進むのが世界的な潮流です。それはわが国も例外ではありません。

しかし、だからといって、闇雲に増税をして、価格を大幅に引き上げてしまうと、大量のたばこ離れを招き、結果として減収してしまう事態になりかねません。事実、たばこの販売数量は、1996年の3,4836億本をピークに、現在では1,300億本まで減少しています。

このため、たばこ税の増税を繰り返しているにもかかわらず、この20年間だけでも、たばこ税の税収自体は、1998年が2.18兆円、2008年が2.12兆円、2018年が1.98兆円と、2兆円を挟んでほぼ横ばいで推移しています。

つまり、たばこ離れが顕著な今の時代にあっては、過剰な増税をすれば、急速なたばこ離れを誘発してしまい、結果的に2兆円の税収を維持できなくなるというジレンマを国は抱えているのです。こうした事態を回避し、安定的な税収を確保するために、将来的には、愛煙家を刺激するような大幅な増税は避けて、緩やかな増税を繰り返すのではないかと考えられます。1,000円超の銘柄が主流になる日が到来するのも、そう遠くないことかもしれません。

たばこの値上げと税率の関係:まとめ

たばこの価格を考えるうえで、税金と切り離して考えることはできません。近年のたばこの価格高騰は、専らたばこ税や消費税の増税に起因しています。年に2兆円もの税収があるたばこ税は、それだけ国にとって貴重な収入源なのです。

一方、健康問題や嫌煙家の増加といった、たばこ離れを促進する動きが世の中の彗星となっている今日、この先たばこの販売本数の低下は避けられない状況にあります。つまり、財源を維持するためには、将来にわたり段階的なたばこ税の増税は不可避なのです。

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