【完全版】法務部門が知るべき商号変更の際の契約書の手続きを一挙公開

法務部門が知るべき商号変更の際の契約書の手続き

商号変更とは、会社の正式名称である「商号」を変更する手続きを意味します。商号変更を行うと、契約書に書かれた商号と、実際の商号にちがいが出てしまいます。

商号にちがいが生じるため、契約書は失効するのでしょうか?また、商号変更を行なうと、契約の再締結などの手続きは必要なのでしょうか?

この記事では、商号変更時の契約書に関する手続きを徹底的にお伝えします。

商号変更をした場合、再度契約書を結ぶ必要はあるのか?

結論から言うと、商号変更した場合に再度契約書を締結する必要はありません。つまり商号変更後も、旧社名で結んだ契約書の効力が継続することになります。

なお継続的な取引においては、最初に基本契約書を締結し、各案件に関しては個別の契約書を締結するというケースもあります。
このケースでは、商号変更後は新社名で個別契約を締結するため、基本契約書と個別の契約で社名にちがいが生じてしまいます。 ですがこの場合も、法律上は契約書を再締結する必要はありません。

商号変更しても契約書を締結し直す必要がない法的根拠

前述した通り、商号変更した場合でも、新しい社名で再度取引先と契約書を締結する必要はありません。「契約書に書かれた社名と実際の社名が異なるのに、なぜ契約書をふたたび締結する必要がないのか?」と疑問に思われるかと思います。

そこでこの章では、商号変更しても契約書を締結する必要がない法的根拠をわかりやすくお伝えします。

契約書の効力は「法人格」に帰属する

法律では、権利義務や契約は商号ではなく「法人格(会社の持つ人格)」に帰属する仕組みとなっています。取引先との契約書も「契約」に含まれるため、企業の法人格に帰属します。

商号変更しても法人格の同一性は保たれる

商号変更しても、企業における法人格の同一性は保たれます。つまり、会社名は変わっても、法人格には何の変更も生じないのです。

法人格は変わらないため、商号変更しても契約書の効力は失われない

以上の理由より、商号変更しても旧社名で結んだ契約書の効力は失われません。契約書が引き続き有効なので、わざわざ新社名で契約書を再締結する必要はないのです。

ただし強制ではないものの、取引先や自社の考え方次第で自由に契約書を再締結できます。「契約書と実際の社名にちがいが出ることは避けたい」などの考えがあれば、契約書をふたたび締結し直しても良いでしょう。

商号変更時における契約書について注意すべきポイント

法律上は商号変更しても、新しい社名で再度契約書を結び直す必要はありません。ですが商号変更に際しては、いくつか契約書の取り扱いに関していくつか注意すべきポイントがあります。
具体的には、商号変更では下記3つのポイントに注意しましょう。

法的な義務がなくても取引先に商号変更した旨は伝えるのがマナー

法律上は、商号変更しても契約書に関して特段手続きを行う必要はありません。とはいえ実務的には、法的な義務がなくても、取引先に商号変更を行った旨を伝えるのがマナーです。

商号変更のことを伝えないと、取引先は契約書に書かれた商号と実際の商号が違うことに戸惑ってしまいます。最悪の場合、伝えなかったことを不誠実だと思われて、契約を打ち切られるリスクもあるので注意しましょう。

契約書の中身次第では再契約の手続きが必要

商号変更の際に契約書に関する手続きが不要と言うのは、あくまで原則にすぎません。
契約書の中に、「商号変更時には再契約が必要」と記載されている場合は、その契約の中身に従って新商号で再契約しなくてはいけません。再締結の手続きを怠ると、契約違反となってしまいます。

よって商号変更する際には、契約書の中に再契約などの規定がないかあらかじめ確認しておく必要があります。

混乱を避けるために「覚書」を作るケースもある

実務の現場では、商号変更した際に取引先から「覚書」を作って欲しいと依頼されるケースもあります。

覚書とは、過去に結んだ契約書に関して、後から追加で定めた事項を補足するための文書を意味します。商号変更に関して覚書を作ることで、契約書内の商号と実際の商号が違うことで生じる混乱を回避できます。

ただし商号変更により覚書を締結すると、契約書の中身が複数となってしまい、管理が難しくなります。管理の複雑さにあらかじめ対処した上で、覚書を締結することが重要です。

法務部門が知るべき商号変更の際の契約書の手続きのまとめ

商号を変更しても、法律的には契約書を新社名で締結し直す必要はありません。ただし実務の場面では、覚書の作成や取引先への通知が必要となるケースが大半です。
商号変更の際には、法的な視点のみならず実務的な視点も持つことが重要といえます。 また契約書の中身次第では、契約の再締結が義務となる恐れもあります。後々のトラブルを避けるためにも、商号変更を行うときは必ず契約書の記載事項を確認しましょう。

関連記事

ページ上部へ戻る