日経平均株価3万円台へ。その背景は?

日経平均株価3万円台へ

2021年2月15日、およそ30年ぶりに日経平均株価の終値が3万円台を記録しました。コロナ禍で実体経済が悪化している中で、なぜ日経平均株価は歴史的な上昇を見せているのでしょうか?

この記事では、日経平均が3万円を超えた背景にある理由や、3万円を超えたことで生じた消費への影響をご紹介します。

株価が急騰した背景には大規模な「財政出動」と「金融緩和」がある

日経平均株価が3万円台を記録した背景には、世界中で行われた大規模な財政出動と金融緩和があります。

新型コロナウイルスの流行で自粛やロックダウンが加速したことにより、2020年の2〜4月頃は世界的に景気が悪化しました。そこで各国は、コロナ禍による景気悪化を食い止める目的で、GDP(国内総生産)のおよそ5%におよぶ歴史的な財政出動を実施しました。この財政出動で世界中に現金が供給されたことで、主要国における中央銀行の総資産は2020年の間に1.4倍も増加したと言われています。

簡単に言うと、「コロナ禍で旅行やレジャーに行けないにもかかわらず、市場のお金は溢れかえった」わけです。そこで多くの人が使い道がない株式への投資を進めた結果、日経平均が3万円を超えるほどに株価が急騰したわけです。

2021年も引き続き世界的な株価の上昇は続くと予想されており、「日本株は投資家の買いが入りやすく、日経平均は3万4,000円にまで上昇する」という推計も出されています。

給付金などの家計に向けた景気刺激策も日経平均を底上げした

給付金をはじめとした家計に対する景気刺激策が世界中で実施されたことも、日経平均株価が3万円台に到達した背景にあります。

スイス最大の銀行「UBS」が実施した調査によると、2020年に世界33カ国が行った景気刺激策はGDP比で4.8%であり、2009年の金融危機(1.6%)を大きく上回るとのことです。また、国際通貨基金が実施した調査では、日本が行った給付金や金融支援などのコロナ対策が、自国のGDP比で40%にのぼる大規模なものであったことも明らかとなっています。

つまり、給付金などの金融支援が大規模に行われたことで、一部の投資家や経営者だけでなく、一般の消費者にも広くお金が行き渡ったわけです。行き渡ったお金が株式投資に向かったことで、日経平均の底上げにつながったと言えるでしょう。

なお、大規模な金融緩和や景気刺激策は、株式市場以外にも大きな影響を与えました。具体的には、仮想通貨(ビットコインなど)や社債などの資産価値を押し上げる効果が見られています。

株高によって富裕層の消費意欲が高まっている

日経平均株価が3万円を超える急騰を見せたことで、富裕層の消費意欲が大きく上昇しています。

コロナウイルスが大流行したことで、日本全体での消費は大きく冷え込んでいます。特に飲食や旅行など一部の業界では、外出の自粛が叫ばれている影響で深刻な業績悪化に見舞われています。

一方で富裕層の消費意欲は、コロナ禍の前後で大きく減退していないと言われています。JAIA(日本自動車輸入協会)の統計データによると、2020年における高級車(1,000万円超)の販売台数は前年比で0.5%増加したとのことです。また百貨店では、全体の売上高が減少する一方で、富裕層向けの外商事業に関しては好調であると言われています。

他にも、マリンレジャーや高級レストランなど、富裕層をターゲットとしたビジネスは軒並み活況を呈しています。

富裕層の消費意欲が高まっている理由は、歴史的な株価の上昇により、富裕層が持つ資産の価値が底上げされたことです。また、コロナ禍で海外などに行けなくなったことも、国内での消費を喚起す一因と言われています。

株価の急騰によりインフレが懸念されている

日経平均株価が3万円を超えたことで、富裕層や外国投資家などを中心に大きな恩恵を受けています。

しかし一方で、金融緩和によって市場にお金が増えている影響で、近い将来の急激なインフレが危惧されています。農産物や鋼材など、一部の物品についてはすでに価格が上昇し始めているというデータがあります。コロナの流行が落ち着いて一般消費者の需要が回復すれば、よりいっそう物価が上昇しやすくなると考えられます。

日経平均株価3万円台へ。その背景は?:まとめ

新型コロナウイルスに伴う金融緩和や景気刺激策により、世界中で記録的な株価の上昇が見られました。特に日経平均株価は、バブル時期に匹敵するほどの上昇を見せています。この影響により、富裕層の消費意欲は大幅に高まっています。

しかし、株価の急騰により急速なインフレが危惧されています。インフレにより生活品の値段が上がると、一般庶民の生活はかえって苦しくなるでしょう。また、株価の下落(バブル崩壊)も危惧されており、先行きは不透明です。

日経平均株価が3万円台になったことを楽観視せず、慎重に将来を見据えて投資やビジネスを進めるべきでしょう。

参考URL
3万円回復 課題なお 日経平均30年半ぶり大台 個人への恩恵薄く 日本経済新聞
富裕層は揺るがない コロナ禍でも消費意欲旺盛 日本経済新聞

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