M&Aと会社法における組織再編の規制について解説

M&Aを行う場合、金融商品取引法や独占禁止法、会社法など、様々な法律に注意する必要があります。

今回は、M&Aに関係する会社法の組織再編についての規定を解説します。

M&Aとは?

M&A(Mergers and Acquisitions)とは、会社の合併や買収を意味し、その例として株式交換や吸収合併、新設分割などが挙げられます。

近年M&Aの件数は増加しており、2021年は4280件(前年比14.7%増)と過去最多になりました。

M&Aにおいて重要なデューデリジェンスについてはこちらの記事を参照してください。
参考:『知財デューデリジェンスとは?』

会社法とはどんな法律?

会社法は2006年に施行され、会社の設立や運営、清算などのルールや手続について規定しています。

具体的には、会社の設立に必要な定款の記載事項や、株式を発行する際の手続、会社の機関構成、株主総会の招集方法、役員の報酬などについて定めています。

さらに詳細な細則については、会社法施行規則によって取り決められています。

会社法の組織再編行為に関する規定

会社法は、合併や株式交換などの組織再編行為について、その手続や無効の訴えなどを規定しています。以下は、吸収合併における存続会社(買収する側)を例に、会社法の規制をみていきます。

<合併契約の締結>

会社法748条
会社は、他の会社と合併をすることができる。この場合においては、合併をする会社は、合併契約を締結しなければならない。

<事前の開示>

合併契約に関する書面などを備え置き、株主や会社債権者が閲覧できるようにすることで、株式買取請求や会社債権者異議手続の判断材料とさせます。

会社法794条1項
次の各号に掲げる株式会社(以下この目において「消滅株式会社等」という。)は、吸収合併契約等備置開始日から吸収合併、吸収分割又は株式交換(以下この節において「吸収合併等」という。)がその効力を生ずる日(以下この節において「効力発生日」という。)後六箇月を経過する日(吸収合併消滅株式会社にあっては、効力発生日)までの間、当該各号に定めるもの(以下この節において「吸収合併契約等」という。)の内容その他法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。

<株主総会の承認>

合併は会社に大きな影響を与える重大なものであるため、特別決議(議決権を行使できる株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権の三分の二以上が賛成しなければならない)による承認が必要です。

会社法795条1項
存続株式会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない。

<株式買取請求権>

合併に反対する株主が公正な価格で株式を売却できる機会を確保し、合併により不利益が生じることを防止します。

会社法797条1項
吸収合併等をする場合には、反対株主は、存続株式会社等に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。(後略)

<種類株主等の保護>

会社法322条1項
種類株式発行会社が次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該行為は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。

七 合併

<会社債権者異議手続>

会社債権者が異議を述べる機会を保障することで、合併により会社債権者が不利益を受けることを防止します。

会社法799条1項
次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める債権者は、存続株式会社等に対し、吸収合併等について異議を述べることができる。
一 吸収合併をする場合 吸収合併存続株式会社の債権者

<登記>

会社法921条
会社が吸収合併をしたときは、その効力が生じた日から二週間以内に、その本店の所在地において、吸収合併により消滅する会社については解散の登記をし、吸収合併後存続する会社については変更の登記をしなければならない。

<事後の開示>

会社法801条1項
吸収合併存続株式会社は、効力発生日後遅滞なく、吸収合併により吸収合併存続株式会社が承継した吸収合併消滅会社の権利義務その他の吸収合併に関する事項として法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録を作成しなければならない。

会社法に違反する場合

効力発生前は株主総会決議取消しの訴えを、効力発生後は無効の訴えを提起されるおそれがあります。また、株主が不利益を受けるおそれがある場合は、株主が事前の差止請求をすることができます。

会社法796条の2
 次に掲げる場合において、存続株式会社等の株主が不利益を受けるおそれがあるときは、存続株式会社等の株主は、存続株式会社等に対し、吸収合併等をやめることを請求することができる。ただし、前条第二項本文に規定する場合(第七百九十五条第二項各号に掲げる場合及び前条第一項ただし書又は第三項に規定する場合を除く。)は、この限りでない。
一 当該吸収合併等が法令又は定款に違反する場合
二 前条第一項本文に規定する場合において、第七百四十九条第一項第二号若しくは第三号、第七百五十八条第四号又は第七百六十八条第一項第二号若しくは第三号に掲げる事項が存続株式会社等又は消滅会社等の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当であるとき。
会社法828条1項
次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。
七 会社の吸収合併 吸収合併の効力が生じた日から六箇月以内

合併が無効になると、それに掛かった多額の費用や時間が無駄になってしまいます。そのため、無効事由は重大な瑕疵に限定されると解されています。

まとめ

・M&Aは、会社法の定めるルールや手続に従って進めなければなりません。

・会社法は、M&Aにより株主や会社債権者が不利益を受けることを防止するために、株式買取請求や会社債権者異議手続などの機会を保障しています。

・M&Aが会社法に違反して行われた場合、無効の訴えを提起され、合併が無効となってしまうおそれがあります。

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