LLCとは?日本の合同会社とは何がちがう?日米LLCの違い

LLCとは? 日本の合同会社とは何がちがう? 日米LLCの違い

会社法人の中でも、最近人気を集めつつある合同会社。「LLC」とか「日本版LLC」と表現されることもありますが、いったいこれはどういう意味なのでしょうか?今回は「LLC」という言葉(制度)について解説します。

LLCと合同会社

LLCというのは英語の「Limited Liability Company」の頭文字を取ったもので、アメリカで設立される会社形態のひとつです。Limitedは日本語で「有限」、Liabilityは「責任」、Companyは「会社」ですから、直訳すると「有限責任会社」となります。LLCは日本の株式会社などと同じく、出資者の責任を出資額の範囲に限定しているのが特徴です。しかし「所有と経営が分離」されている株式会社とは違い、出資者と社員が同一という特徴があります。

このLLCに近い会社制度が日本にもあります。それが合同会社です。LLCと合同会社が似ているのは偶然ではありません。合同会社は、実はアメリカのLLC(以下、米LCC)をモデルに作られた制度なのです。このため合同会社は「日本版LLC」とか、単に「LLC」と呼ばれることもあります(合同会社が社名を英語表記する場合、名前の最後に「LLC」を付けても良いことになっています)。

しかし、米LLCと日本の合同会社は「似て異なる」制度です。よく似た部分もある一方で、米LLCの持つ大きな特徴が合同会社にはありません。その点について、次の項目で見てみましょう。

米LLCの特徴

まず米LLCのおおまかな特徴について箇条書きで説明します。

  • (A)出資者は自分が出資した範囲のみで責任を負う(有限責任)
  • (B)株式の発行はできず、メンバーが直接出資する(持分会社)
  • (C)メンバー自ら経営に参加するか、外部のマネージャーを任命して経営を任せることができる
  • (D)金銭・動産・不動産のほか役務(サービス)による出資も可能
  • (E)法人課税かメンバー個人の所得への課税(パススルー課税)を選べる

まずAについては、日本の株式会社や合同会社と同じです。あらかじめ責任の範囲がはっきりしているため、メンバーが安心して会社に参加できるのがメリットと言えます。

Bは合同会社と同じです。ちなみに米LLCでは出資者のことを「メンバー(Member)」と呼びます。

Cは、どちらかというと株式会社に近いでしょう。株式会社は制度上「所有と経営が分離」していますが、中小企業や零細企業などでは発起人(出資者)が取締役として経営を行なうケースが大半です。もちろん出資者(株主)以外の経営者を任命することもできます。

Dは株式会社とも合同会社とも違う部分です。株式会社は原則として金銭出資(条件を満たせば動産・不動産などの現物出資も可能)で、合同会社では金銭出資と現物出資が認められていますが、いずれの場合も「役務」の出資は認められていません。ちなみに日本の会社形態のひとつ、合名会社では役務による出資が可能です。

Eも株式会社や合同会社と違う点です。日本の会社法人(株式会社・合同会社・合名会社・合資会社)はいずれも「法人の利益」に対して課税されます。ところが米LLCでは法人課税か、利益分配を受けた個人への課税を選ぶことができます。ある意味、これが米LLCの最大の特徴と言えるでしょう。

パススルー課税のメリット

パススルー課税には「出資者へのリターンが大きい」というメリットがあります。

たとえば日本の会社の場合、まず法人としての利益に「法人税」がかかります。そして残った利益が個人に分配されると、その個人には「所得税」が発生します。つまり会社の利益が二段階にわたって課税されるというわけです。しかしパススルー課税では法人を「スルー」して、個人のみに課税します。二重に課税されない分(法人税がかかる場合と比べて)個人へのリターンが大きくなるという仕組みです。

ちなみに日本にもパススルー課税を採用している制度があります。それがLLP(有限責任事業組合)です。LLPは2名以上で設立できる「組合」で、主に産学連携をはじめ、ベンチャーと大企業、あるいは中小企業同士が連携して事業を行なうケースなどで利用されています。ただし米LLCや合同会社と違って「法人ではない」ため、法人格を必要とするようなビジネスには利用できません。また合同会社のように「株式会社に移行」することもできません。

事業目的に合った組織作りをしよう

今回は「LLC」をキーワードに、米LLCと合同会社の違い、特にパススルー課税について説明しました。残念ながら日本では米LLCを作れませんが、日本にも株式会社や合同会社、合名会社、LLPなど、それぞれに米LLCと似たような仕組みを持つ制度が用意されています。これからビジネスを始めようとする方は、ぜひ自分の事業目的に合った組織を選ぶようにしましょう。

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