無資格の偽物弁護士に注意!SUITSの主人公は実在するのか?

弁護士になるには司法試験に合格して資格を取る必要がありますが、資格がない者が弁護士の業務を行った場合はどうなるのでしょうか。ドラマのSUITSの主人公のように、弁護士資格を持たずに弁護士として働くことは法律に違反するのかなどを解説していきます。

関係する法律は?

無資格弁護士に関連する法律は以下の3つがあります。

弁護士法72条違反

第七十二条「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」

弁護士法72条は、弁護士でない者が弁護士の業務を行う行為、つまり非弁行為を禁止しています。そのため、SUITSの主人公は非弁行為を行っていることになります。

弁護士法72条に違反した場合には2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処されることになります(弁護士法77条3号)。

文書偽造罪

次に、弁護士でない者が弁護士として文書に署名をした場合には有印私文書偽造罪(刑法159条)が成立することがあります。具体的には、弁護士しか書くことができない書類などに「弁護士田中太郎」と署名する行為にこの罪が成立します。また、実在する弁護士の名前を勝手に使う行為にもこの罪が成立します。

SUITSの主人公も弁護士として訴状などを作成していると考えられますので、この罪で罰されることになります。また、日本版のSuitsでは実在する弁護士になりすまして署名等をしているため、同じくこの罪で罰されます。

刑罰は3か月以上5年以下の懲役ですので、弁護士法違反よりも重い刑罰が科される可能性があります。

詐欺罪

さらに、弁護士だと偽って報酬などを支払わせた場合には、虚偽の事実により財物を交付させたとして詐欺罪(刑法246条)が成立することがあります。SUITSの主人公はその業務の対価として報酬を受け取っているため、詐欺罪が成立するでしょう。

刑罰は10年以下の懲役刑ですので、先ほどの二つの罪よりも重い刑罰が科される可能性があります。

偽弁護士の確認

SUITSの主人公のように頭がキレて優秀ならまだしも、資格も知識もない人に弁護士の仕事を頼むことはかなり不安が残ります。そのため、もしも自分が依頼する弁護士が偽物の弁護士かもしれないと思った場合に、本当に資格を有するかどうか確認する方法をご紹介します。

日本弁護士連合会(日弁連)が登録されている弁護士をすべて管理しており、弁護士情報を検索するサイトを提供しています。ここで検索をして実在するかどうかを確かめるとよいでしょう。

(参考:https://www.nichibenren.jp/member_general/lawyer/lawyerSearchResultsList/

実際にあった事案

弁護士でないのに自分と同姓同名の弁護士を名乗った者が有印私文書偽造罪及び同行使罪で懲役刑に科されたことがあります(大阪地判平成3・11・7)。

司法試験に合格した事実も弁護士登録した事実もないのに、高校の先輩らに最高裁判所司法修習生と記載された名刺を渡し、司法試験に合格して司法修習生になったと嘘をついていました。そんな中、この人は自分と同年代で苗字が同じ弁護士を見つけました。そして、自分の名前を変更する手続きを裁判所でして、実在する弁護士と同姓同名になりました。

これを機に、実在する弁護士の事務所の住所などを用いて実際に弁護士の業務を始め、クライアントへの請求書等を弁護士として作成したところ、この書類作成の行為に有印私文書偽造罪の成立が認められました。

実在する弁護士と同姓同名に改名することは日本版Suitsの主人公と全く同じ状況なので、この判例をモデルにしたのかもしれません。

*司法修習…司法試験合格後に、1年間実務の研修を受けること。

まとめ

このように、弁護士と偽って業務をすると多くの罪に問われうることが分かりました。今回紹介したものは罰金や懲役など刑事責任ですが、これとは別に損害賠償などの民事責任にも問われる可能性が高いです。

ドラマはドラマの世界と割り切って、マネすることはやめたほうがよいでしょう。また、偽弁護士による詐欺などにも気を付けましょう。

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